葛城奈海(キャスター・女優)

 昨年のウクライナ問題や、日本人にもにわかに脅威として浮上してきたテロ集団「イスラム国」の台頭は、「国境線は変わる」という現実をまざまざと見せつけてくれている。それでも、いまだ多くの日本人には「自国の国境線が変わる」ことには現実感がないのが実情ではないか。

 しかし、現実をよく見てほしい。国境線は事実、変わってきたのだ。戦争を経ずしても。

 日本国憲法公布の6年後(1952年)、韓国は李承晩(イ・スンマン)ラインを一方的に宣言し、島根県・竹島を奪った。日韓漁業協議会によれば、以後65年の日韓基本条約締結までに、韓国軍はライン越境を理由に日本漁船328隻を拿捕(だほ)し、日本人44人を死傷させ、3929人を抑留している。

 日本政府は「不法占拠だ」と声明は出しているが、具体的対抗策を取ってこなかった。結果、今や竹島には、韓国の武装警察官ばかりか民間人も常駐し、あまつさえ大統領まで訪れた。残念ながら、客観的にこれを見れば、日本領だと言い張る方が無茶な話である。

 現状を放置すれば、「第二の竹島」となってしまう島がある。沖縄県・尖閣諸島だ。

 2010年9月の中国漁船衝突事件で、民主党政権の対応に腸が煮えくりかえる思いをした私は「政府がそんな弱腰なら、国民が日本の尊厳を守るしかない」と決意した。志を同じくする草莽(=民間)の募金で購入された漁船に乗り、これまで15回にわたって尖閣海域を訪れてきた。

沖縄県・尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島
 当初は、美しい尖閣の島々に肉薄し、漁を行うことができた。だが、12年9月の国有化以降、「1カイリ(=1852メートル)制限」なるものが出され、島の1カイリ以内に入ろうとすると、海上保安庁によって阻止されるようになった。

 自民党政権に代わって少しはマシになるかと思いきや、なんと今度は、沖縄県・石垣島からの出港さえ認めないという。事なかれ主義に拍車がかかってしまった。

 われわれ日本の漁船を締め出しておきながら、中国公船は大きな顔で尖閣周辺を航行しているのだから、完全に倒錯している。14年の領海侵犯は実に32日間。こんな体たらくでは、東京都・小笠原諸島沖への200隻を超える赤サンゴ密漁船団も「自ら招き入れたようなものだ」といわれても仕方ないだろう。

 中国が13年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定して以来、NHKや共同通信の取材ヘリも飛ばなくなっていると聞く。よって、現在、われわれがニュースなどで目にしているのは、基本的に「資料映像」だ。

 日本人は尖閣への上陸はおろか、漁師が1カイリ以内で漁をすることも、メディアが上空を飛ぶこともできない。これで日本領といえるのか。日本政府自身が、着々と「尖閣の竹島化」に手を貸しているのではないか。黙って見過ごしていいのか。

 尖閣の未来は、今を生きる私たちの手にかかっている。



 かつらぎ・なみ 1970年、東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、女優としてテレビドラマやラジオ、CMなどで活躍。ライフワークとして自然環境問題に取り組む。武道と農業を通じて国の守りに目覚め、予備自衛官となる。日本文化チャンネル桜『防人の道』レギュラー出演。共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)など。

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