高橋洋一(元内閣参事官・嘉悦大教授)

 2014年の住民基本台帳に基づく人口移動報告で、東京圏への「転入超過」は19年連続となった。一極集中のメリットとデメリットを分析し、今後のあるべき姿を考えてみたい。

 まず現象面からみると、首都圏への人口集中を諸外国と比較した場合、日本のように首都圏の人口比率が高くかつ上昇を続けている国は、欧米先進国ではなく、アジア諸国を含めても韓国のほかにはみられない。人口面だけではなく、東京は政治、金融面などでも集中がみられる。こうした特徴は世界ではあまり例がない。

災害や格差などデメリットも


東京圏への「転入超過」は19年連続となったが…
 東京圏では、(1)1990年以前は所得格差との相関が高く(所得が高まると人口流入が増加)(2)90年代以降は有効求人倍率格差との相関が高い(有効求人倍率が相対的に高まると人口流入が増加する)。

 こうした現象について、経済学ではどのようにみているのだろうか。最適都市規模に関しては、「ヘンリー・ジョージ定理」が知られている。都市人口の増加が生産面における集積のメリットをもたらし、集積のデメリットは通勤距離の拡大によってもたらされると考える。集積のメリットとデメリットを人口増などの企業活動と地代から推計して、都市が過大かどうかを判定しようとするというものだ。

 その実証分析をみると、90年代の東京は「過大とはいえない」という分析が多かったが、2000年代では「断定できない」というものになっているようだ。

 この経済分析はざっくりいうと、人口増と地価上昇との相対的な関係がポイントで、人口増が地価上昇に比較して相対的に鈍れば、都市規模は過大という判定になる。最近のデータからみれば、東京圏もそろそろ飽和状態になりつつあるのだろうが、それでも、少しでもいい仕事を求める人々の選択の結果、東京圏への流入は止まっていない。いい仕事を得るためには、通勤時間が長くなっても我慢するというわけだ。

 一極集中のメリットは集積によってさまざまなケミストリー(化学反応)が生じる点だ。人口集積は人やモノの移動・輸送効率を高め、生産性向上につながる。

 一方、デメリットは通勤距離が長くなるほかにも、人口のみならず、政治や金融面でも東京一極集中であるため、自然災害時のリスクがある。民間の金融機関には、それに備えたバックアップ体制があるが、政府では危機対応時の分散発想は正直いってあまりない。

地方の経済力上げる政策を


 さらに、一極集中が地方との経済格差の原因にも結果にもなっている。そろそろ一極集中のデメリットが出始めていることを考えれば、地方の経済力を上げるのが、一極集中の是正だけではなくさまざまな観点からみても最適政策になる。

 そのためには、今の中央集権の下で、かつての「国土の均衡ある発展」のように無理矢理に地方分散投資を急ぐのではなく、ヒト・モノ・カネの地方分権をした方が効果的だ。

 安倍晋三政権の「地方創生」がその突破口になるべきであるが、どうも道州制のような長期ビジョンがなく、小粒感は否めない。