河合雅司・産経新聞論説委員

 日本の家族形態が、大きく変わり始めている。2010(平成22)年の国勢調査で、1人暮らし世帯(32・4%)が初めて夫婦と子供世帯(27・9%)を抜きトップとなったが、今後その流れが加速するというのだ。

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとにまとめる「日本の世帯数の将来推計」(2013年1月推計)によると、2035年の1人暮らし世帯は37・2%だ。反対に、夫婦と子供世帯は23・3%に減る。1980年は19・8%と42・1%だから、割合が反対になりつつある。

 1人暮らし世帯を2010年と2035年で比較すると、出生数減少の影響を受けて40代前半までの若い層はむしろ減る。増大するのは中高年である。65歳以上は、498万世帯から762万世帯へと1・5倍増だ。

 高齢男性の伸びも著しい。70~74歳は2010年は36万世帯だが59万世帯となる。75~79歳は28万世帯が43万世帯といった具合である。

未婚化と離婚増

 1人暮らしが増えるのは平均寿命が延びることもあるが、未婚化の影響が大きい。2030年の生涯未婚率は男性29・5%、女性22・6%と予測される。「家族」をつくらない人の増加である。たとえ結婚したとしても、長続きするとはかぎらない。

 もう一つの大きな理由は離婚が増えることである。厚生労働省の統計によれば、1988年には1・26だった離婚率(人口1千人あたりの離婚件数)は、2002年には2倍近い2・30となった。直近の2012年は多少下がったとはいえ、1・88と推計される。実数にして23万7千組だ。再婚する人もいるが、婚姻件数が66万9千組だから、単純計算すれば「3組に1組」が離婚しているようなものである。

 世帯数推計は2035年までしか計算されていないが、未婚や離婚に歯止めがかからなければ、やがて1人暮らしが日本の主流となるかもしれない。もし現実となれば、「家族」消滅の危機である。「家族が社会の基礎単位」という考え方も成り立たなくなり、社会への影響は計り知れない。

社会保障に打撃

 社会保障制度などは、1人暮らしの激増を前提としていない。例えば、医療や介護である。政府は地域ケアを充実させ、住み慣れた地域で最期まで暮らし続けられる社会づくりを目指しているが、「施設から在宅へ」という流れは、家族の支えがなければ機能しないのが現実だ。地域との交流が下手な男性の1人暮らしが増えるのだから、なおさらである。

 独居高齢者の増大に対しては、グループホームのような施設と自宅の中間的な受け皿を増やすことが急務だ。だが、長崎の火災で明らかになったように置かれた状況は極めて厳しい。

 受け皿不足にならないようにするために、いますべきは「防災」名目の公共事業予算の一部を回し、職員の待遇改善といった運営面を含めて対策を進めることだ。

 問題が簡単でないのは、1人暮らしの増大は日本の世帯モデルの二極分化も意味することだ。合計特殊出生率は1・3台の低水準が続く見通しだが、各世帯の子供数が1人になるわけでない。ますます「夫婦と子供世帯」に子供数が偏るということである。

1人暮らしとこうした世帯とでは、必要とする行政サービスが異なる。財源が限られる中、政府は世帯間の差を埋める作業にも追われることになる。