再生可能エネルギー先進国のドイツで、風力や太陽光で発電した電気を高値で買い取る優遇制度が曲がり角を迎えている。昨年、国の電力に占める再生エネの電源構成比が最大となった一方で、電気料金の高止まりなどのひずみも生じている。政府は電気を入札して買い取る制度改革に乗り出し、自然電源の後押しを続ける構えだが、改革には環境保護派からも反発が出る皮肉な状況になっている。

高騰する電気料金


 ドイツは2000年、再生エネの「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入。これが奏功し、再生エネの発電比率は、昨年ついに、これまで最大だった褐炭(かったん)火力を追い抜いた。

取材に応じるドイツの経済エネルギー省のバーケ事務次官=10日
 「再生エネによる発電比率は26%に達した。いまや最大の電力供給源だ」

 経済エネルギー省のライナー・バーケ事務次官は今月上旬、フジサンケイビジネスアイなど日本記者クラブ取材団と会見し、こう述べた。ただ、「技術開発のための助成は終わった」とも話し、「これからは競争原理に基づく助成になる」として、政府が昨年夏に決めた優遇策の改革に意気込みを示した。

 昨夏の制度改革では、再生エネ事業者を入札で決める仕組みを採り入れた。FITは高値で電気を買い取る費用を、電気料金に上乗せして徴収する。入札制はできるだけ買い取り額を抑える狙いがある。

 改革の背景にあるのは、再生エネの急拡大が、電気代の一段の値上がりを招く恐れがあるためだ。ドイツの電気料金は「フランスの倍」(産業界関係者)。買い取り価格は20年保証されるため、導入量が年々増えれば、それだけ電気代への上乗せ分が増えていく。

入札制に中小反発


 改革には中小事業者から不満が漏れる。環境保護団体グリーンピース系で再生エネ供給を手がける「グリーンピース・エナジー」の広報担当者は、入札は「体力がある大企業が有利だ。中小事業者は生き残れなくなる」と危惧(きぐ)する。

 25年までに45%の再生エネ比率の目標を掲げる政府は、電力需給の「南北問題」にも直面している。

ドイツ西部ノイラートにある風力発電所と石炭火力発電所=2014年2月(共同)
 海に近い北部は風力の開発が進み、豊富な再生エネ電力を抱える。一方、産業が集積する南部は、原子力発電が主要電源となってきた。22年までに全原発を停止する「脱原発」を掲げる政府としては、北部の電気を南部に送って使いたいが、南北を結ぶ高圧送電線の貧弱さがネックになっている。そのため、送電網整備は「(脱原発と再生エネ拡大の)エネルギー大転換の鍵」(バーケ氏)だ。
 ところが、送電網整備ははかどっておらず、16年までの整備計画は4割しか完了しないとの予測もある。高圧線鉄塔の敷地探しが進まないのが大きな要因だ。候補地の住民は「自分の庭先はごめんだ」という反発が強く、地元の環境保護派が同調するケースも多い。

 FITは再生エネを一気に普及させるには適しているが、“副作用”への対応も課題とされる。ドイツの改革の行方は、FIT導入国の日本の専門家にも注目されている。(塩原永久)