何気に面白かった大塚家具の話。

 ただのお家騒動だし、所詮は一企業の内紛でしかないので、本来であれば「報道ステーション」や「ミヤネ屋」であそこまでの時間を割いて報じなければいけないニュースでもないのだろうが、当事者たちには申し訳ないが、確かに…このニュースはそこそこ面白かった。

 ほとんどの人が知ってるだろうが、見ていない人のために少々解説だけしておくと、日本を代表する家具メーカーである「大塚家具」の中でゴタゴタが起きているのだ。

 大塚家具はもともと、創業者であり天才的な経営者でもある会長の大塚勝久氏が作った日本最大の家具メーカーの一つだ。わずか一代でここまでの規模の企業に育て上げたのだから勝久氏の手腕はすごいとしか言いようがない。「会員制」という、当時はまだ誰も知らなかったような画期的な手法によって、

 「いい商品をまとめ買いしてもらう」

 という経営方針の下、丁寧で高品質の接客を中心に経営が進められていた。

 が、その経営に陰りが見え始める。

 日本は長く続くデフレの波にのまれた上、規制緩和によって海外のメーカーがどんどん参入してきたのだ。特にめざましいのが皆さんもよくご存じの「ニトリ」と「IKEA」だった。

 「安い商品を買いたいときにまとめ買いさせるのではなく個別売りで」

 「ニトリ」と「IKEA」の経営方針はまさに大塚家具の真逆だった。デフレ、不況。苦しむ日本経済はまさにこの両者の追い風となった。

 家具を買いたい人の数など、所詮はたかが知れている。大塚家具はこの両者をはじめとした「安い商品」を扱うメーカーに客をどんどん取られていった。

記者会見で中期経営計画を発表する大塚家具の大塚久美子社長=2月26日午後
 そこで2009年に天才創業者、勝久氏から娘の久美子氏に社長が変わったのだ。ここから大塚家具が大変な内紛状態になる。

 久美子氏の経営方針は「過去との決別」だった。

 もうそんな時代じゃあない。安い商品を扱っていかなければ。会員制ではなく、誰でも気軽には入れる店舗運営をしなければ。

 久美子社長の下、大塚家具はどんどん経常利益を上げ続ける。しかし、それは勝久氏が大切にしていた…いわば大塚家具のハートを失うことだった…。

…みたいな感じ。

で、現在、会長の勝久氏と娘の久美子社長が大ゲンカ中。

 大塚家具が真っ二つに割れて、「勝久氏の言うとおりだ!」「いや、久美子氏は間違いなく結果を出している!」とモメにモメて、よせばいいのに会見まで行うという、なかなかバイオレンスな展開が繰り広げられている。しかも、バカみたいに注目が集まったものだから会見の翌日、大塚家具の株はストップ高になるというオモシロ現象まで起きる始末だ。

 さて、この親子喧嘩、みんなが思わずニュースを見てしまうのは…このケンカ…実は

 ものすごくありふれた「みんながやってるケンカ」

 だからだ。そう。この平成27年、必ずみんな一度は経験しているケンカなのだ。少なくとも、社会人、このケンカをしていない人はほとんどいないのではないか?それくらい、みんなが理解でき、シンパシーを「どちらか」に感じるケンカなのである。ここで質問だ。皆さんは…

 どちらかにつかなければいけなかった場合、どちらに付く?

 この質問に対する答えは…恐らく、真っ二つのはずだ。だから面白い。

・勝久会長は天才的な運営手腕によって大塚家具をここまで大きくした実績がある。が、逆にここ最近は不振が取りざたされ、確かに勝久氏が社長に変わった途端に利益が下がったりしているのも事実だ。
・久美子氏は経営の実績は申し分ない。久美子氏が社長になった2009年以降、大塚家具は確実に利益を増やしている。まだ若いしこれからも十分期待できる新社長だ。しかし、彼女のとっている経営方針は…「大塚家具のハート」を否定するものだ。簡単に言えば、ヴィトンをイオンやイトーヨーカドーでセールで売る感じだと思ってほしい。このたとえを聞けば、勝久氏が反発したくなる気持ちも理解できるはずだ。
・「今の」時代に合っているのは久美子氏の方のはずだ。結果が証明している。
・が、勝久氏にも守りたいものがあるのだろう。
・勝久氏の経営では近年は結果が出ていない。これはもう答えは出ている。勝久氏の経営は大塚家具を向上させられない可能性が高い。そして繰り返すが、久美子氏の実績は本当に見事なものなのだ。

さぁ、皆さんはどちらにつく?

 ここまで考えると、このニュースは本当に面白い。

 新聞などは久美子氏を「新しい時代の経営者」と解説する。そうは言われていないが、では逆説的には勝久氏はさしずめ、「古い時代の経営者」と言ったところか。

このニュースに対する僕の見解


 皆さんそれぞれの意見がおありだろうが、このニュースを見た僕の最初の感想をはっきり言う。

 久美子社長、古いよね。

 以上だ。はっきり言って申し訳ないが、久美子社長、一回り、遅れてると思う。あくまで僕の発想と価値観と思って聞いていただきたいのだが、久美子社長の経営方針は、

10年遅れてる。

 日本のデフレや少子化の大波は20年前から始まっている。それから10年ほどすれば、国民の経済状況(可処分所得)は厳しくなるのが当然だと判断できる。久美子氏がこの経営計画や発想を持ち出すのは本来、2000年初め頃であるべきだったろうと思う。今はすでに「ニトリ」や「IKEA」が結果を出し終わった後なのだ。

 久美子氏が新しい経営者?

 いや、逆だろ。すでにとっくの昔に10年は古い。結論を言うと、僕ならこのお家騒動にもし巻き込まれていた場合…

 迷わずに勝久氏に付く。

経営戦略についての記者会見に臨む大塚家具の大塚勝久会長(左から2番目)ら=2月25日午後(蔵賢斗撮影)
 勝久氏の経営方針は時代に流されない「信念」と「信条」がある。まず勝久氏の「想い」があって、その上で、時代が周囲にある感じだ。なので、時代によって、利益が出たりでなかったりする。が、僕は思う。

 結果的にはきっとそちらの方が強いはずだ。

 久美子氏は「他の結果」を見ているのだと思う。

・IKEA、強いな~じゃあ、真似しようか?
・グラフを見たら国民、みんな使えるお金が減ってるな~…じゃあ安売りしようか?

 「大塚家具のハート」の前に「利益」があり「国民」がいるように感じる。

 僕は「自分たちの信念」の前に「視聴率」や「事務所の意向」、「他局で視聴率の高い番組に出ているタレント」を重視して、その結果、大失敗しているテレビ局を知っている。そのテレビ局も、昔は信念をしっかりと持っている局だった。

・怒られてもいい。楽しませよう!
・視聴率が低くていい!自分たちが視聴者と一緒に笑える番組にしよう!
・他が使ってなくていい!俺たちの局で、番組で人気者を作り上げよう!

 そのテレビ局は「楽しくなければテレビじゃないだろ!」という信念を捨て、視聴者におもねる番組作りをするようになった。視聴者の顔色を伺うようになった。その結果、どうなったのかは、皆さんもご存じの通りだと思う。視聴率が3位になった時に「やっと底は見た!」と、聞くのも恥ずかしい言い訳ばかりの会議をしていたが、今年は第1週目からテレ東に負け、ついに視聴率5位になった局だ。

 僕の印象でしかないが、バブルのころまで、日本の企業は「自分たちの信念」が強くあったような気がする。しかし、バブル崩壊後、自分たちに自信を失っていった。利益が減っていった。その結果、信念を捨てて、利益、目先の金だけに執着するようになっていった。そして、企業のアイデンティティはどんどん失われていったように思う。

 話を今回の大塚家具の件に戻すと、勝久会長は現在、久美子氏を提訴までしているのだが…正直言ってこの訴えは退けられるのではないか、と感じている。所詮素人の僕の見解でしかないが、素人なりに少し調べたが、ちょっと無理があるように見えてしまう。

 そして、一点だけ、勝久氏に苦言を呈したいのだが、彼は会見で絶対に言ってはいけないことを口走っている。感情的になったのだろうとは思うが、同じ人の親として言う。

「悪い子を作ってしまった」

 これは絶対に言ってはいけない。親ならこの言葉は絶対に言ってはいけない。少なくともその子供を作ったのは自分だ。世間が「悪い子だ」と言ったとしても、親は子供を最後まで信じるべきだ。あの言葉だけは反省した方がいいと思う。

 が、基本的には、ピケティではないが、これからは格差がどんどん広がる社会になる。残酷なほどに。

 ここからは、むしろ顧客におもねる会社よりも、本物の「信念」を持っているメーカーの方が強いはずだ。これからは客層は2極化してくることは間違いない。上層部の人間相手に絞った方が買いに行く方も分かり易いと思う。

 久美子氏の方針が合うのは今後10年以内と見る。そして、信念を捨てた大塚家具には、その後何も残されない気がする。

 なので、もし僕がこのお家騒動に巻き込まれていた場合、迷わずに応援するのは勝久氏の方だ。皆さん、それぞれ、意見は違うだろうが、しかし、なかなか面白いニュースだと思った。
(長谷川豊公式ブログ『本気論 本音論』(http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/)より転載)