中宮崇(サヨクウォッチャー)

 「so what?」

 1月3日に開かれたアメリカ経済学会において、ピケティの主張に対しマクロ経済学教科書の著者としても有名なハーバード大学教授のグレゴリー・マンキューが放った言葉である。

 「だからなに?」

 これこそ、最近我が国でピケティピケティとやかましいサヨクのおのぼりさんをあしらうための最も適切な一言であろう。

 実際、そうしたウザいサヨク連中に「ピケティの何が凄いのかね?」と聞いてみたところで、まともな答えなど何一つ返っては来ない。そればかりか、「ピケティはアベノミクスに反対しているところが凄いのだ!」などと、息を吐くように嘘をつくサヨク連中にふさわしいいつもの呆れたたわごとまで聞かされる始末である。

 本稿では、ピケティの一体何が凄いのか、ピケティを持ち上げ反日プロパガンダに悪用するサヨク連中の主張のどこが間違っているのかを見ていくことにしよう。

ろくに読んでいない


 先に結論を言ってしまえば、ピケティは何も凄くはないし、彼を持ち上げるサヨク連中の主張は全て間違っている。以上で終了、解散!

 こんな単純なことを言うために、5940円も支払い700ページ以上にも及ぶ重さ1キログラム、厚さ5センチもの鈍器を20時間かけて読み込まなければならなかった私の忍耐強さを、誰か褒めて欲しいものだ。いかなる知的努力とも無縁に日夜反日祭に勤しむサヨク連中を退治するには、それほどの労力を要求されるのである。

 ろくに中身も読んじゃいないサヨクどもがこんな本を礼賛する原因の一つは、敵を冷酷凶暴にぶち殺してきた彼らの伝統が、ゲバ棒の代わりとなる凶器としてこの本を使おうとしているに違いないとさえ思わされる。

 2013年8月にトマ・ピケティ「21世紀の資本」がフランスで出版された当初、その売れ行きは特筆に値するものではなかった。本書が世界的な話題になったのは、翌14年4月にアメリカで英訳が出版されてからであり、ハードな経済学書としては異例の50万部以上を売り上げている。もともと民主党と共和党の間で格差問題が政治的論争、いや闘争として恒常化しているアメリカにおいてこの本が売れたのにはワケがある。国民の支持を失い弱体化の著しいオバマ政権と民主党及びそれを支持するリベラル層が、「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」(日本語版帯より)という本書の主張を政治的に利用した結果なのだ。実際オバマ大統領は1月の一般教書演説において、ピケティの主張そのままに富裕層への課税を強化するとの発表を行っている。

 アメリカリベラル様の猿真似がお好きな我が国のサヨク連中が、そんなピケティを放っておくはずはない。1月発売の本誌3月号「メディア裏通信簿」が早々に指摘しているように、昨年12月に日本語訳が発売されてからというもの、サヨクメディアによるお祭り騒ぎは滑稽でさえある。

 そこでは、北朝鮮による拉致犯罪まで擁護してきた伝統を誇るサヨクメディアの勇、「週刊金曜日」の12月19日号特集記事「ピケティ現象を読み解く」について触れられているので引用してみよう。

 先生 ところが、対談の内容はピケティと直接関係ない話ばかり。「排外主義、ヘイト・スピーチの広がり、維新の党の台頭とそれらに共鳴する人びとが増えている背景には、親世代が享受できた生活を享受できないという若年層の不満があると思います。若年層においては貧困層が増加している」とか「なのに東京オリンピックで『夢よもう一度』ですからね」「だから安倍さんが支持されるのでしょう」「過去の亡霊に取り憑かれている人ですから」とか。左派が自分の意見を言っているだけ。

 女史 ピケティは、個人の資産の情報を透明化しろっていっているんだけど、それは日本の左翼が批判してきたことじゃない?

 教授 国民総背番号制に似ていますね。

 女史 それなのに、そういうとこには触れないんだよね。


 ここで指摘されていることは、我が国におけるサヨクによるピケティ悪用の典型的症例と言える。ろくに中身など読んでいない反日過激派が、内容のつまみ食いどころかもともとピケティが言ってもいないことをでっち上げ、自らの歪んだたわごとを権威付けるために利用する。それ以上でもそれ以下でもない。

やはり「だから何?」だった


 ここで注意しておかねばならないことは、「21世紀の資本」はフランスの左翼人士ピケティが書いたものではあるが、いつまでたってもマルクスから逃れられない日本のサヨク的な本ではないという点である。マルクスの「資本論」とは決定的に異なる。本書は単純に、過去200年間のデータを分析した結果、資本主義はそのまま放置して置けば格差が広がっていくという構造的欠陥を持っているらしいよ! と言っているだけだ。社会民主主義的ではあるが、まあ、ごく健全な知性と良識を持っている市民であれば今更言われるまでもなくわかりきった当たり前のことが書いてあるに過ぎない。
モスクワのカール・マルクス像
 経済学的に見ても、その努力は認めるものの、それほど新しい知見や理論が導かれているわけでもない。方法論としては、エクセルにデータをぶち込んで分析するだけの大学院生の論文レベルのものでしかない。違いがあるとすれば、ろくに研究費さえ無い大学院生と違い、フランス社会党政権の中枢にまで食い込んだピケティは、数十人のスタッフを十数年にわたり利用できる潤沢な資金力に恵まれたという点だ。

 実際私は、「21世紀の資本」を読み終えた後、なんとも言えぬ徒労感に見舞われた。例えて言うなら、地動説が小学校でさえ教えられている現代において「ほら! 調べてみたらやっぱり地球は太陽の周りを回っていたよ!」という小学生の自由研究を700ページ読まされたようなものだ。相手が児童なら「それはよくやったね、凄いね」と褒めてあげるのが教育的配慮というものだが、大の大人がそんな本を自慢げに書き散らし読ませてきたら、「だからなに?」とあざ笑うしか無い。マンキューが「so what?」と言い放ったのも無理はない。

 特に我が国において勘違いされているようだが、「資本論」において資本主義の矛盾を分析しその崩壊と共産主義の必然的な到来を予想したマルクスと違い、ピケティは資本主義の擁護者である。それは、「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」という本書の結論に対する処方箋として、資本に対する累進課税を提案している点からも明らかである。マルクスは資本主義を維持するための処方箋など何も提示しようとはしなかった。

 しかし、息を吐くように嘘をつく我が国のサヨク連中にとってはそんなことはどうでも良いらしい。それは、日本語訳が出る前のサヨク論壇が、本書を「21世紀の資本“論”」と呼び、まるでマルクスの再来であるかのように崇め奉っていたことからも伺える。

 かつてマルクス経済学を学びたくて大学に入った池上彰なんぞは、近代経済学という学問から目をそらしたいのか「かつては、経済学といえばマルクス経済学でした」などと浮かれ騒ぐ始末だ。(週刊ダイヤモンド05年2月14日号「特集 決定版 そうだったのか!ピケティ」)

 経済学書として異例の、いや異様なベストセラーとなりながらも、日本とアメリカではその受容のされ方は全く異なる。冒頭で触れたように、アメリカにおいては経済学会から、マンキューのような「だからなんなの?」という有力な反論、と言うより冷笑が出ているのに対し、我が国においてはサヨク活動家やサヨクメディアからの反日プロパガンダ的礼賛ばかりが目に付き、まともな経済学者からの反論の声は目立たない。これは、我が国のマスメディアに登場するような、いわゆる「エコノミスト」なるオカルト占い師まがいのほとんどが、まともに経済学の大学院で論文の一つも書いたとは思えず、ひどい御仁になると経済学部さえ出ていないくせに「経済学者」ヅラして、無根拠なたわごとをほざいていられるという、異常な状況に原因を求めるべきであろう。我が国のマスゴミは、まともな経済学者の声を国民に正しく届けていないのだから、日本人を経済学的白痴状態に置き続けている元凶であるとさえ言える。

浜矩子を翻訳者が酷評


 「アベノミクスはアホノミクス」とたわごとをほざく、いわゆる「エコノミスト」の筆頭が、同志社大学教授の浜矩子である。反日マスゴミとして定評のあるTBS「サンデーモーニング」やテレビ朝日「報道ステーション」などにも出演する彼女の異常性は、著作のタイトルを並べただけで、小学生の目にも明らかである。

『2011年日本経済――ソブリン恐慌の年になる!』
『2012年資本主義経済大清算の年になる 』
『2013年世界経済総崩れの年になる!』
『2014年戦後最大級の経済危機がやって来る!』
『2015年日本経済 景気大失速の年になる!』

 こうも毎年、オオカミ少年のごとく危機の到来を喚き立て、予想、いや妄想を外し続ける御仁を反日メディアが使い続ける理由はただ一つ、「アホノミクス」などというアホ丸出しのキャッチコピーをでっち上げて政権批判をし続けてくれるからなのであろう。安倍政権批判、反日発言さえしていれば無知蒙昧無能凶暴でもメディアが使い続けてくれる我が国の状況は、経済学界も例外ではない。

 こんな程度の御仁がメディアで「エコノミスト」と称して経済学でもなんでもない誹謗中傷を垂れ流しても許されるのだから、経済学的には地方国立大の経済学大学院除籍という経歴しかない私が物を言うことも、世間は許してくださるに違いない。

 浜のたわごとは、大学院生レベルどころか、学部生レベルの基礎知識さえあれば間違いや嘘を指摘できる程度のものばかりのようだ。何しろ、他の共著として便乗出版された「現代思想2015年1月臨時増刊号@ピケティ『21世紀の資本』」については、「21世紀の資本」翻訳者の山形浩生をして「紫ばあさんがなんか書いているということで、それだけでこれがとうていまともなもんじゃないな、と思うのは人情でしょう」「紫ばあさんの駄文と竹信なんとかのどうでもいい文」などとブログで言わしめるほどある。

 ちなみに山形はブログで「さて、ピケティを盲信して格差、格差、この世の終わりだ資本主義の宿痾だ革命だマルクス様の復活だついでにアベノミクス許さんとさわぐのはたいへん愚かで恥ずかしいことなので、やめていただきたいところ。金持ち儲かるんだろ、知ってたぜ、常識だフン、どうせオレたち貧乏人はいくら頑張ってもダメなのよ、ついでにアベノミクス許さん、とかいった間抜けな発言は、ツイッターくらいにとどめておいてほしい」とお冠である。

 浜はツイッターにとどまらず、現代思想2015年1月臨時増刊号においても「安倍政権が掲げる『アベノミクス』なるものは、むしろ、資本がもっともっと野生化し、もっともっと伸び伸びとワイルドに暴れ回ることに加勢することに情熱を傾けている。そうとしかみえない」などと意味不明な発言を繰り返している。果ては「野生返り化し、凶暴化する資本。その奔放過ぎる動きがもたらす不平等の深化と人間疎外。そのような力学から国民を守れてこそ、国家なるものに存在価値がある」などという奔放なサヨク的空想を披露した。サヨクが常日頃支那や南北朝鮮による軍事的政治的侵略・テロ行為に加担する姿そのままに、それに抵抗する日本なんぞ存在価値無しであるという驚くべき含意が、私には見える。しかも浜先生、厚顔無恥にもこんな文で反日ポエムの最後を締めくくる。

「取り戻したがり病」に犯された政治家たちには、ピケティ先生の巨大本が効果てきめんの解毒剤となるはずだ。だが、彼らにとっては、苦さもまたてきめんな良薬だ。飲む勇気がないかもしれないが。


 反日の病に冒された凶暴な野生の「エコノミスト」にこそ、効果てきめんな解毒薬は、この世に存在しない。

オオカミが来たぞー


 サヨク政治屋たちや反日マスゴミの虚言癖や厚顔無恥さは更に酷いものになる。

 1月23日付の週刊朝日は、白を黒と言いくるめるゲッペルス的プロパガンダとして特に傑作だ。まず「民主党きっての政策通で、菅直人内閣の官房長官を務めた仙谷由人氏(68)がいま、知人に熱心に薦める本がある。フランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』だ」などと、尖閣諸島中国漁船衝突事件において支那政府による侵略に加担・隠蔽したも同然の男への追従から始まる。《アベノミクスにあてはめると、どうなるのかというピケティが日本経済に言及した機会は少ないが、インフレ誘導を目的とした日銀の異次元金融緩和には、すでに警鐘を鳴らしている。「不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではない」》

 ピケティがアベノミクスに触れていないのを認めながら、その発言を反安倍のために曲解し悪用することに余念がないのだ。

《朝日新聞元経済部長の小此木潔・上智大学教授は言う。「アベノミクスには『r』をさらに大きくする発想が根本にある。株価上昇に重点を置き、非正規雇用を増やすとの懸念がある派遣法改正など、労働市場の規制緩和に積極的。大企業や資産家優先で、不平等を深刻化させてしまう設計思想なのです」》《ピケティは今月29日に来日し、講演やシンポジウムに参加する予定だ。アベノミクスの現状をどう見ているのか。その発言が注目されている》と締めくくり、「ピケティ様が悪の安倍を退治してくださるのじゃ!」とでも言いたげだ。

 ところが実際1月にピケティが来日するや、サヨク連中の浅ましい神頼みは見事に裏切られる。

 来日したピケティは日経ビジネスのインタビューに「こんな時にはいかなる増税もすべきではないでしょう。消費増税は経済成長を妨げますから。昨年の日本もそうだったのではないですか? ところが、日本では誰と話しても、野党ですら消費増税に賛成しています。これには驚きました」(2月6日付)と答え、安倍政権の消費税増税見合わせへの批判を全否定した。

 そもそもピケティは、来日前から「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」(14年12月22日・日経新聞)と発言するなど、アベノミクス批判どころか民主党などの消費税増税・デフレ礼賛などに反対していたのだ。しかし、ピケティと面会した民主党の細野豪志はツイッターで「金融緩和(アベノミクス)は、株や不動産の価格の上昇を通じて資産家には恩恵を及ぼすが、政府が助けたい人には恩恵をもたらさないので格差を拡大するとズバリ指摘」。浅ましさと誤りを反省するどころか、より一層のオオカミ少年ぶりだった。

ノスタルジーになぜ細野が…


 反日サヨクメディアとして定評のあるサイト「リテラ」に野尻民夫なる正体不明の人物が書いた記事、いや反日ポエムはもっと凄い。何しろ題名からして「世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス”をケチョンケチョンに!」(2月4日)である。ピケティ来日が本当にそのように見えたなら、病的なサヨクとしかいいようがない。お大事に。

 野尻もポエムで「アベノミクスは富裕層・大企業への税を軽減する一方で、その穴を大衆課税である消費税増税で埋めようとしている。これは、ピケティ氏が主張する累進課税強化と真っ向対立している」などと妄想を開示しているが、言うまでもなく、消費税増税を決定したのはかつての民主党政権であり、その増税の決定を覆すために解散総選挙を行った安倍政権に反対してきたのも民主党やその支持勢力のサヨク連中なのだから、厚顔無恥にも程がある。

日大全共闘のデモ=昭和43年6月12日
 実際のところ、ピケティは民主党やサヨク勢力の唱えるような反成長・消費税増税・デフレ礼賛・財政緊縮などのオカルト経済政策には断固として反対していると言うべきだが、サヨク連中は「金融緩和(アベノミクス)」などというようにピケティの金融緩和一般論に関する発言を勝手にアベノミクスに対する発言であるかのように捏造したり、ピケティに「消費税増税こそがアベノミクス」などと間違った質問をして都合の良い回答を引き出そうとしたりしているのだ。

 2月6日付の「現代ビジネス」の記事「『講座:ビジネスに役立つ世界経済』【第76回】 日本でピケティブームが起きている理由を考える」において、安達誠司はこう嘆く。

 日本でここまでピケティがブームを巻き起こした理由は、60~70歳代の学生運動を経験した世代の若かりし頃のノスタルジーを喚起させたためではないかと推測する。つまり、ソ連崩壊後、急速に勢いを失った左翼的なイデオロギーに依拠した経済学が復活するという期待があったのではなかろうか。

 その意味では、日本におけるピケティブームは、仕事が一段落した引退世代が高級フォークギターを購入してフォークソングを歌う行動と似たようなものだろう。


 ことがサヨク「引退世代」の道楽で済めばまだ良いが、細野豪志のような現役世代サヨクまでが音痴なフォークソングを歌っているのだから救いがない。

 フランス社会党支持者のピケティは「私は、日本のことを勉強しに来たのであって、日本人に説教を垂れにきたのではない」と発言し日本を去った。サヨク連中の無知や不誠実さによほどうんざりしたのであろう。ピケティのようなまともな左翼人士がろくに存在しない点こそ、我が国の21世紀における大きな悲劇と言うべきだ。(敬称、呼称略)

 なかみや・たかし 昭和45(1970)年、北海道釧路市生まれ。豊橋技術科学大学卒業、名古屋大学大学院経済学研究科除籍。学生時代から反朝日新聞、反サヨクを主張。著書に『天晴れ! 筑紫哲也news23』 (文春新書)がある。