[世界潮流を読む 岡崎研究所論評集]

岡崎研究所

 米ヴァンダービルト大学教授・同米日研究協力センター所長のジム・アワーが1月4日にReal Clear Worldのウェブサイトに掲載された論説で、日韓間の歴史問題について、韓国側がゴールを動かしていると批判する一方、戦後日本が民主主義、自由経済に貢献してきた実績を指摘し、ナショナリストとされる安倍総理の取り組みも実際は平和的なものである、と述べています。

 すなわち、今日では売春は不快なものとされているが、当時は合法で、多くの日本人女性、一部の朝鮮人女性が農村から売られてきた。日本は、政府がこれに関わっていたことを示す証拠はなく関与していたのは仲介業者だとしているが、韓国は、これに強く反対している。

 ただ、この問題は1945年以降の30年間、韓国でも日米でも重大な問題と捉えられたことはなかった。1944年に米軍が行った調査は、「これは売春婦に他ならない」と結論づけている。
2006
記者会見で歴史認識などについて説明する
安倍晋三官房長官=2006年
 日韓両政府は1965年に基本条約を締結し、この合意を「完全かつ最終的なもの」とした。日韓基本条約に対する韓国国内の不満が高まったのは1990年代初頭である。1992年には、朝日新聞が日本軍のために韓国人女性を拉致したとする証言録を掲載しはじめ、1993年には侵害行為への謝罪と、政府による何らかの強制があったことを示唆する河野談話が発表された。そして韓国側はこれを評価した。

 1998年、日韓首脳は日韓共同宣言に調印し、当時の小渕総理は「多大な損害と苦痛を与えたこと」に対し「痛切な反省と心からのお詫び」を述べ、金大中大統領はそれを真摯に受け止め、評価した。しかし、この後3人の韓国大統領は、共同宣言を支持しておらず、日本側も対日批判の原因を韓国の内政事情によるものだと見做すようになっている。

 安倍総理は、中韓と緊密な関係を築きたいと考えており、河野談話を継承する意向も示している。

 複数の謝罪で1世紀前の出来事が元に戻るわけではないが、日本が戦後69年間、民主主義、自由市場経済に果たしてきた目覚ましい実績は認められるべきものだ。冷戦期には、日米の対潜ネットワークは、100を超えるソ連艦隊の抑止に貢献したし、湾岸戦争時には130億ドルもの支援をした。

 安倍総理は、日本の軍事力を再強化するナショナリストとして非難されているが、彼が言っているのは日本経済を平和的に再建し、日米同盟に資するより有益なパートナーとなるようにするということである。そして、中国と北朝鮮以外のアジア諸国は、日本の取り組みが西太平洋の平和と安全を維持することに資すると信じているのである、と述べています。


* * *

 これは大変良い論説です。日本の事情にも詳しいアワー氏ならではのものであり、アワー氏の勇気に敬意を表するべきでしょう。論説の内容は、全て的を射ています。

 韓国側がゴールポストを動かしているということは、金大中時代の共同声明起案の経緯を知る人すべてがそう認識しているでしょう。したがって、この論説は、日本としてコメントすべきものというより、韓国当局者こそ熟読玩味して反省すべき性質のものです。

 慰安婦問題については、これは、当時は合法的であった売春婦の話です。売春婦は奴隷ではありません。事実を歪曲して、ことさらに刺激的な「性奴隷」という言葉を使い、女性の人権擁護者ぶる人がいますが、そういうことは、安っぽい正義漢気取り、人気取りの言動と言わざるを得ません。彼らは、慰安婦の大多数は日本人であったことを知ってこういうことを言っているのか疑問です。

 戦場における性の問題は、現在も続いている、人権上の重大な課題です。そして、人権への意識は、ますます高まっているというのが、大きな潮流と言ってよいでしょう。確かに、過去の不幸な経験は真剣に直視しなければなりません。しかし、上述の「性奴隷」のレッテルがよい例ですが、過去を直視するということは、正確な事実に基づかなければ、直視したことにはなりません。さらに、過去に対する直視は、過去の出来事を現在の基準で裁くことを意味しません。こうしたことを踏まえながら、現在の人権についての規範や意識に即して、戦場における性の問題を今後どう解決していくか、国際的に英知を結集して考えていく必要があります。

 なお、歴史問題、慰安婦問題で日本側が態度を変えないなら日韓首脳会談はしないと朴大統領は条件を付けているようですが、そういう条件を呑んでまで首脳会談をしてもらう必要は全くありません。現在の日本政府は、そのように対応しており、今後ともこの方針を貫いていかなければなりません。
関連記事
■ 日本がサンドバッグから脱するとき
■ 韓国の財閥3世に向けられる世間の冷たい視線
■ なぜ、台湾の若年層は韓国を嫌うのか~現地座談会から
■ 河野洋平は戦後最も日本を貶めた政治家である