深井俊之助(元帝国海軍少佐・「大和」副砲長)
聞き手:井上和彦(ジャーナリスト)

世界一の軍艦「大和」


井上 私は昭和38(1963)年生まれ、今50歳です。深井さんは大正3(1914)年、第一次世界大戦が勃発した年のお生まれで100歳。人生の大先輩として、この熾烈な大東亜戦争を戦い抜かれ、祖国のために生涯をかけられた深井俊之助元少佐から、お話をうかがっていきたいと思います。

 まず、深井さんが最後に乗艦された戦艦「大和」はひと言で言うとどんな船だったでしょうか。

第1回「大東亜戦争を語り継ぐ会」で講演する戦艦「大和」副砲長の深井俊之助さん(左)。右は司会の井上和彦氏=2014年7月27日、靖国神社遊就館(撮影・財満朝則)
深井 口下手でうまく説明できないんですけれども、なにしろ世界一いい船。これからもこんなものはできない、今までできた軍艦の中でこれよりいい船はできないと思います。私は今でも「大和」の写真を飾ってますが、とても懐かしい。非常に特徴的なのは、排水量7万3000トン、長さ265メートル――東京駅の新幹線のホームが260メートルぐらいです。私は東京駅を見ると、いつも「大和」を思い出すんです。両方の長く、低い所があって、中央部が少し高くなっていて――東京駅ぐらいの船だと思っていただければいいんです。

 速力は28ノット。私は副砲長ですから、配置についていたのが副砲射撃場という所で、だいたい水面から40メートルぐらいの高さにおりました。七階建てぐらいのビルになるんじゃないでしょうか。

 乗組員編制でいうと艦長、副長、砲術長、副砲長、高射長、航海長、通信長…とあるんですけれど、艦長が戦死されたら副長。副長が戦死されたら砲術長…という具合に指揮権が移り、私は上から五番目です。そういう立場で「大和」で戦争しました。

井上 余談ですけど、「大和」ではラムネは飲み放題で、アイスクリームが食べ放題だったということですが。

深井 普段はホテル並みの食事が出て、夕方はフルコースの洋食というのが普通でした。冷暖房があるしワンルームマンションのちょっと大きいぐらいの個室があって、“大和ホテル”とみんな言ってました。普段はそうでも、戦争中はそんなわけにはまいりません。食事は、握り飯を食べて戦争するんです。

井上 よその艦艇からも「大和」のアイスクリームを食べに来られたと。

深井 アイスクリームもコーヒーも、何でもありました。ホテルと同じようなものです。散髪屋も歯医者さんもあったんです。歯医者さんは下手だったですけどね。私なんか「大和」で治療してもらった歯が、最近抜けちゃって困ってるんですよ。

井上 「大和」への着任は、昭和19年3月でしたね。深井さんが指揮・管制されていた副砲は、三連装の15センチ砲でしたね。

深井 副砲は前と後ろと二つあったんです。建造当初は四つあったんですけれども。航空機の脅威が高まったことから、途中で呉に帰って、四つのうち二つ下ろして対空機銃に替えたんです。ですから、私がレイテ沖海戦に行った時には、前後の2基の合計6門しかなかったんです。

井上 ちなみに、この15センチ砲というのは、今、陸上自衛隊で155ミリ榴弾砲というのがありますが、それを三本並べて撃つのとおよそ同じくらいの威力があったことになりますが、さてその射程はどのぐらいだったんでしょうか。

深井 28キロから30キロは届いていたようですが、撃って、必ず当てられるのは1万メートル前後ですね。1万5000、6000、7000メートルといったら、必ず当てる自信がありました。

井上 「大和」が誇る世界最大の主砲46センチ砲はいかがでしたか。

深井 主砲の射程はだいたい42キロですから、東京から大船ぐらいでしょうか。30キロ前後の目標ならちょうどよい距離で、1万メートル以内の近い目標に対しては、これは大きすぎて使いにくい。主砲は三連装で、3本を一つのブロックにして、根元から全部動くんです。大砲の下には弾薬が――遊就館にありますけれども――こんな大きな弾がずーっと立てて並んでおった。その下の階には火薬庫があって、弾を飛ばす火薬を積んでいる所がある。そういう円錐形の砲塔がありまして、それが全部一緒に水圧で動く。

井上 主砲の射撃音はかなり大きかったと聞いてます。どんな感じだったんでしょうか。

深井 音も大きいけれども、爆風がすごかったですね。大砲を撃って弾が飛んでいく時に、爆風がバーッと出るんですが、主砲の砲口が見える所にいると、爆風で怪我をします。だから、兵隊さんには「大砲の砲口が見えたら逃げなさいよ」と注意をしておりました。艦の上で戦争をしてますと、「大和」のような大きな艦でもしぶきや波がかかって濡れるので、みんなレインコートを着ていました。ところがそのレインコートはファスナーでなくボタン留めなので、主砲をボーンと撃つと、レインコートのボタンが取れてパッと開く。それほど爆風はすこかったんです。

井上 対航空機用の高角砲や対空機銃はいかがでしたか。

深井 三つ並んでいるうちの小さいのは40ミリ機銃です。口径40ミリで三連装、これはシェルターの中に入っていて、爆弾が落ちて破片が飛んできても、操作する砲員が怪我しないようになっています。その上にあるのが高角砲で、仰角90度ぐらいまで撃てるんです。この高角砲は副砲に比べて、非常に速く動きますから、高速で飛ぶ敵機の動きに対応できます。そもそも副砲は、飛行機を撃つ大砲じゃありませんから、そんなに速く回りませんが、高角砲はどこへでも素早く狙いをつけられるようにできていた。だから、機銃が40ミリで、高角砲12・7センチ。それから副砲が15・5センチ。そんなところです。