河合雅司・産経新聞論説委員

 野田第3次改造内閣の発足に伴い、またも少子化対策相が交代した。民主党政権となって10人目である。しかも、今度は金融担当相が兼務する。どう見ても畑違いであろう。

出生数最低

 昨年の年間出生数が105万806人で過去最低となったと、厚生労働省から発表されたばかりだ。野田佳彦首相は、どこまで深刻に受け止めているのだろうか。民主党は子育て支援を重要政策の一つに掲げるが、こんなに頻繁な交代では本気度が疑われる。
 出生数は急速に減りゆく。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2060(平成72)年の年間出生数は48万2千人、2110年には23万6千人にまで落ち込む。出産可能な年齢の女性が減少するからだ。

 子供が生まれなければ人口も減る。西暦3000年には日本人が消滅するとの予測まである。いわば、日本人は“絶滅危惧種”というわけだ。

 もちろん、民主党政権が何もしていないわけではない。社会保障と税の一体改革で、消費税増税分のうち7千億円を子育て支援策に振り向けた。さらに上積みも目指す。だが、いくら財源を確保しても、政治家が本腰を入れなければ成果は上がらない。少子化の危機が叫ばれながら、政府の対策はいつも後手に回ってきたのが現実だ。

対策二の足

 民主党政権にはもう一つ懸念がある。少子化対策そのものに否定的なことだ。2010年に閣議決定した「子ども・子育てビジョン」で、少子化対策から「子ども・子育て支援」へと政策転換を図った。背景には、「産めよ殖(ふ)やせよ」という戦前・戦中の人口増加策に対するアレルギーがあるようだ。政府が人口や家族政策に介入することへの抵抗感だ。

 確かに、子育て支援策と少子化対策は重なる部分が多いが、目的は大きく異なる。前者が生まれた子供をいかに大事に成長させていくかという政策なのに対し、後者は子供が生まれてこない現状をどうするかである。

 子育て支援策だけでは、少子化の大きな要因である結婚が抜け落ちる。一体改革でも、幼稚園と保育所を一体化した「認定こども園」の拡充や小規模保育などへの支援が柱で、未婚化・晩婚化への取り組みはできていない。

 50歳で一度も結婚したことのない人の割合である「生涯未婚率」は2030年に男性29・5%、女性22・6%に及ぶとされる。子育て支援が重要なことは言うまでもないが、今の日本が問われているのは、結婚したい、子供を持ちたいという希望をかなえられないでいる阻害要因の解消である。

収入の安定

 まずは若い世代が家庭を持てるよう収入を安定させることだ。雇用の創出や職業教育の拡充など、政府がやることはいくらでもある。出会いの場も、政府がもっと積極的に提供すべきである。例えば、成人を対象にしたボランティア制度を創設すれば、男女が自然に出会う場ともなろう。

 もちろん、結婚や出産は個人の問題であり、政府に強要されることなどありえない。だが、いまさら戦時中のような人口増強政策を復活させようという政府関係者もいないだろう。

 政府のトップが明確な方針と覚悟を示さない限り、少子化の流れを変えようという機運は盛り上がらない。まずは首相が21世紀版「産めよ殖やせよ」政策の推進を宣言することである。