河合雅司(産経新聞論説委員)

 4人に1人が無収入-。厚生労働省が今月まとめた国民年金加入者の所得実態調査の結果だ。平成21年の平均年収は159万円。年収100万円以下が54・7%を占めた。 

平均年収は79万円


 「自営業者中心の年金」との印象が強かった国民年金だが、今回の調査ではパートやフリーターといった非正規雇用も23・4%で、その平均年収は79万円だった。一方、老齢年金受給者1人当たりの平均年収は189万円だ。年収1千万円を超す人も0・8%いた。勤労世代が引退世代を支える年金制度の根幹が崩れているのだ。

 勤労世代に余裕がなくなっている。昨年度の国民年金保険料の納付率は58・6%で過去最低。不安定な雇用を余儀なくされている若者が増大し、保険料を払いきれない例が目立ってきたのである。少子化で勤労世代が減っていくのに、若年層の足腰が弱っているのでは、とても社会を支えられない。

 それは、将来の懸念にもつながる。「正社員として就職し結婚、子供ができて、マイホームを取得」といった人生モデルは破綻し、「持ち家がない低年金者」がやがて激増することを意味するからだ。生活保護受給者の増大がすでに社会問題化しているが、この流れを止めることは難しい。

税での救済最小限


 低所得者対策というと、必ず出てくるのが、税金による救済策だ。最近は「最低生活保障」(ベーシックインカム)を導入すべきだという意見も聞かれる。だが、ベーシックインカムは、所得や資産と無関係に一律支給する考え方だ。働いても働かなくても政府が生活の面倒をみる制度になったのでは、社会主義的な政策になりかねない。

 所得制限を設けず全員に給付するのでは、巨大な財源も必要となる。税による救済は必要最小限にとどめ、政府は雇用創出や拡充にこそ大きく力を入れるべきであろう。

 では、どうすべきか。社会が縮んでいく以上、終身雇用を続けることは難しい。会社に長く勤めれば給与が上がるという年功賃金も限界を迎えている。中高年の雇用や給与水準を守ろうと無理して、若者を非正規雇用に追いやったり、昇給を押さえ込んだりという“矛盾”が生じるのである。

 終身雇用をやめ、有期雇用を当たり前とすることだ。もちろん、少数の企業が実施するだけでは、非正規雇用が増えるだけで何にもならない。社会全体が発想を変えることが前提となる。正規と非正規の区分をなくすのだ。

仕事選択に自由を


 年功で給与が上がらないとなれば、自分の職能を磨き、収入が増える仕事を求め勤務先を変わる人もいるだろう。結果、転職市場も成熟する。外国のような、適性や人生プランに応じて仕事を自由に選ぶ社会の実現である。

 そのためには、政府は有期雇用普及のサポート態勢づくりを急ぐ必要がある。何歳になっても職能を磨けるよう、職業教育体制を整える。海外に通用する人材の育成も不可欠だ。高い技能のある人しか転職できないのでは社会は回らない。専門性を身につけるだけでなく、幅広い職業訓練も行う。

 有期雇用が広まれば、企業にとっても不採算部門の統廃合がしやすくなる。逆に言えば、新たな雇用を生み出す新産業を立ち上げやすくなるということだ。高齢者の就業機会を広げることにもなろう。若者を十分に生かすことができなければ、日本は行き詰まる。