橋本謙太郞(産経新聞運動部記者)

 2019年に日本で開かれる第9回ワールドカップ(W杯)の開催12会場が3月2日、決定した。2014~15年ラグビーシーズンはヤマハ発動機の日本選手権優勝で幕を閉じたが、19年W杯、そして2020年の東京五輪を控えた日本ラグビー界にとっては、いよいよこれからが正念場だ。W杯日本大会まで、まだ4年もあるなどとは言っていられない。日本協会幹部の一人は「かつてないほど忙しい年になる」と決意を語る。

15人制 ~ 門戸の広さは諸刃の剣


 今年最大のイベントは、9~10月にイングランドで開催される第8回W杯イングランド大会だ。W杯は4年に一度、世界王者を決めるラグビー界最大の大会であり、注目度の高さと観客動員力から、オリンピック、サッカーW杯と並び、世界の三大スポーツ大会とも言われる。だが、まだまだ国内の注目度は低い。会場発表こそ、東日本大震災の被災地、岩手県釜石市が開催都市の一つに選ばれたこともあって、新聞やテレビにも大きく扱われたが、それまでは15年がW杯イヤーであることも、その4年後の開催地が日本であることも、熱心なラグビーファン以外にはあまり話題になってこなかった。

 盛り上がりにいまひとつ欠ける理由の一つは、日本のW杯戦績が芳しくないことだ。日本代表はアジアの覇者として過去7大会すべてに出場しながら、通算成績は1勝2分け21敗。1991年の第2回大会でジンバブエに1勝しただけで、もう20年以上も白星がない。

試合前にハカを披露するマオリ・オールブラックスを見る日本代表=2014年11月8日、秩父宮ラグビー場 (撮影・山田俊介)
 15人制ラグビーは五輪種目ではないこともあって、代表資格に関し、国籍などのしばりが比較的ゆるい。外国籍でも3年以上の居住など一定の条件を満たせば、代表になれる。現在の日本代表でも複数の外国出身選手が活躍している。この門戸の広さはラグビーの大きな魅力の一つでもあるのだが、結果が出なければファンは離れていきやすい。魅力が大きい分だけ、リスクもまた他の競技より高いと言わざるを得ないだろう。

 自国開催の2019年W杯を成功させるには、何よりもまず日本代表が結果を残す必要がある。もともと人気の高いスポーツだけに、強くなれば離れていたファンも戻ってくるし、話題度が高まり、若い層への普及効果も大きくなる。W杯開催の成否を運営面で左右する集客やマーケティングも必然的に好転するはずだ。

 イングランド大会で、日本はベスト8(決勝トーナメント進出)を目標にしている。2012年に元豪州代表監督のエディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチに就任後、日本代表は、どこからでも果敢に攻め抜く「Japan Way」を目指すラグビーとして掲げ、猛練習に取り組んできた。

 そして、13年には欧州の強豪、ウェールズとのテストマッチ(代表同士の公式試合)で金星を挙げ、14年にはイタリアにも勝った。世界ランキングも一時は過去最高の9位まで上昇するなど、ベスト8にもう一歩の結果を残してきた。有望な若手選手も多く、秋までのノビシロに期待が高まる。

 W杯イングランド大会で、日本は1次リーグB組で、南アフリカ(9月19日)、スコットランド(9月23日)、サモア(10月3日)、米国(10月11日)と対戦するが、準々決勝に進出するにはB組で2位以内に入る必要がある。

 そのためには、ニュージーランドに続く優勝候補で、世界ランク2位の南アフリカはともかくとして、他の3チームには勝てる力をつけなければならない。

 最大の注目はスコットランド戦だろう。13年秋の欧州遠征で対戦した際には、17-42で完敗したが、その後2年間の成長具合が問われる戦いとなる。南アフリカ戦から中3日と厳しい日程だが、ここで白星を挙げれば、その後は試合間隔もゆとりがあり、勢いに乗って戦えるはずだ。日本代表は4月から、宮崎で強化合宿をスタートさせる。

7人制 ~ 男女に「コアチーム」の差


 W杯後の11月には7人制ラグビーの2016年リオデジャネイロ五輪アジア地区予選が予定されている。ラグビーは近代五輪の初期には正式種目に入っていたが、その後は長く外れていた。リオ五輪はそのラグビーが7人制で正式競技として復活する最初の大会である。

 五輪出場権は、「コアチーム」といわれる世界の上位グループ(男子は15チーム、女子は11チーム)が中心になって競うワールドシリーズの上位4チーム、各大陸予選勝者、世界最終予選勝者が獲得できるが、世界の勢力図を見ると、日本にとってはアジア地区予選がもっともハードルが低い。ライバルは男子が香港など、女子が中国などとなるが、男子は有望、女子はやや厳しいが不可能ではないというのが一般的な見方だろう。

 昨年の仁川アジア大会でも、男子は優勝したが、女子は優勝を逃した。しかも、男子はコアチームとしてワールドシリーズを回っているが、女子はコアチームではない。

 この違いは大きい。ワールドシリーズは、経験を積み、レベルアップを図るまたとない機会だからだ。女子の場合、中国がコアチームとして力を磨いていることも不安材料だ。

 日本協会は、W杯だけでなく五輪予選も考慮し、今年のトップリーグの開幕を11月中旬まで遅らせる方針。何とか男女ともアジア予選を勝ち抜いて7人制の認知度を高め、リオだけでなく2020年東京五輪にも弾みをつけてほしい。

“準日本代表”が強豪と激突


 ラグビー界のもう一つの注目は、世界の強豪として定着することを目的に、日本チームが16年3月から世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」に参入することだ。ニュージーランド、豪州、南アフリカといった強豪国のクラブチームが競うリーグには、今年は日本代表6選手がそれぞれ挑戦しているが、来年からは“準日本代表”としてのチーム加入が実現する。リーグ編成の都合から主要な対戦相手は南アフリカのチームになる。移動に約20時間を要する相手とのリーグ戦がどういう形になるのか。

 収益面とともに、選手の健康面も重要な課題だけに、日本協会としては16年度以降の年間スケジュールの見直しも急務となっている。