河合雅司(産経新聞論説委員)

地方創生本部が推進へ


 都市の自宅と地方のセカンドハウスを行き来する「二地域居住」というライフスタイルが再注目されている。

 政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が人口減少対策として「『二地域居住』の本格的な推進策の検討」を報告書に明記したためだ。

 人口減少による「消滅」の危機に悩む自治体は、「来訪者のうち何%かでも移住してほしい」との思惑で観光客受け入れなど「交流人口」の増加策に躍起になっている。
 二地域居住は「定住」と「交流」の中間に位置する。創生本部はこれを普及させ、大都市圏からの人の流れを作ろうというのだ。

 背景に年代を超えた地方暮らしへの関心の高さがある。国土交通省は2030年には潜在的希望者を含め1080万人が志向すると推計。地方創生ブームで需要がさらに掘り起こされるとの皮算用だ。

 地方側の期待も膨らんでいる。観光客と異なり、一定期間だけでも生活してくれれば地域の消費は増える。彼らを目当てとした新たな仕事が誕生する可能性も広がる。空き家や耕作放棄地の解消といったメリットも考えられる。

実践派はいまだ少数


 とはいえ、二地域居住は新しいアイデアではない。国交省が提唱したのは2005年である。総務省などにも同趣旨の構想があった。普及に向けた取り組みも続けてきたが、実践する人はいまだ少数派だ。

 2軒の家を継続的に往復するのは経済的、時間的、身体的な負担が大きく、誰もが気軽に始められないからだ。すべての自治体がセカンドハウスの候補地となるわけでもない。何度もの往復を考えれば、都会との交通アクセスの良さが問われる。

 このため、国が税金を大々的に使って事業化することには「公共性に欠ける」との懐疑的な見方も強い。

 定住につながるかも疑問だ。自治体側には「都市住民が定住を考えて“予行演習”している」との声も聞かれるが、二地域居住者の動機は必ずしもこうした期待に沿うものとはかぎらない。

 世論調査では二地域居住を選ぶ理由としては「自然豊かな地で暮らしたい」が多い。だが、それは生活の不便さと背中合わせでもある。

 気分転換としての「田舎暮らし」を満喫はしたいが、いざ定住に踏み切るとなると医療サービスや友人関係が途切れることを懸念して二の足を踏む人は少なくない。政府が期待した団塊世代の移住が、大きな流れとなっていないことを見れば明らかだ。

 定年前の世代になるとハードルはさらに高い。ネックは就職先だ。簡単に見つかるのであれば地元の若者が苦労するはずもない。二地域居住を実践する若者は経済的にも恵まれた層で、リフレッシュや趣味の拠点として地方に居を構えているケースが多い。

 結果として、地域社会に対する思い入れも古くからの住民と一緒とはいかず、地元の期待は空振りに終わりかねない。

県内での住み分け策


 むしろ、二地域居住は「大都市圏から地方」への流れを促すというより、「県内の人口集約」の方策として考えたほうが現実的だろう。

 人口激減県では、県庁所在地など中核となる都市に周辺自治体から人口集積するコンパクトシティー化が避けられない。その推進の“切り札”にするのである。

 大都市圏の若者には「平日は都心のマンション、週末は郊外で過ごす」といった使い方も目立つが、「平日は地域中核都市、週末は県内の出身地」というライフスタイルの定着だ。県内の若者に地域中核都市と出身地とをうまく住み分けてもらうことで過疎自治体の人口激減の影響を緩和したほうが、県外から人を呼び込むより簡単である。

 親の介護のために週末だけ実家に帰る人は増えている。要介護者がいなくとも若者が週末を出身地で暮らすようになれば、過疎化する自治体に新たな人の交流が広がる。

 同時に、過疎化が進む自治体の元気な高齢者が週末だけ地域中核都市のマンションなどに暮らす二地域居住も推進する。こうした交流を続ければコンパクトシティー構想への抵抗感も薄まるだろう。

 県内での二地域居住ならば踏み切る人も増え、政策としても成り立ちやすくなる。ポイントは、地域中核都市に若者がとどまれるよう雇用環境を整備することだ。東京圏への流出を阻止できなければ、すべてが始まらない。