今昌司(フリーランスプランナー)

 1950年の朝鮮戦争勃発を契機に、日本経済は特需に沸き、その後の20年間、高度経済成長期を迎えることになる。そして、製造業を中心に、企業は社員の福利厚生や士気高揚を目的に、スポーツチームを設立し、日本スポーツ界の発展の土台となる企業スポーツが隆盛を極めることになる。しかし、バブル経済の崩壊から失われた20年といわれる景気低迷期には、300を超える多数の企業スポーツチームが休・廃部に追い込まれた。一方、戦前から日本のスポーツ界をリードしてきた大学スポーツも、企業スポーツの隆盛と同じ時期に、絶大な人気を博していた。

観客数が激減


 東京六大学野球は、1シーズンに50万人以上の観客を集め、明治神宮野球場(東京都新宿区)には各大学の応援歌が響いていた。その六大学野球も、2000年以降はシーズンで20万人まで観客数が減少し、最近は持ち直しているようだが、それでも全盛期の半分程度である。

全国大学ラグビーフットボール選手権決勝の帝京大対筑波大戦で後半トライを決める帝京大・磯田泰成選手。帝京大は筑波大を破って6連覇を達成した=1月10日、味の素スタジアム
 大学スポーツの象徴の一つ、ラグビーも、ここ10年、観客数を激減させている。正月恒例の大学選手権決勝の舞台は、今年は味の素スタジアム(同調布市)に移され、入場者数は1万2107人(公式発表)。大学関係者に頼んでもチケットが取れないほど人気を博した1980年代の4分の1程度になっている。

 ラグビー関係者は、試合会場へのアクセスを問題にした発言をあるメディアでしていたが、果たしてそれだけが原因だろうか。テレビ視聴率は1月2日の準決勝で1%台(以下数値は全て関東地区、ビデオリサーチ調べ)。10日の決勝も試合前半では2%を僅かに超えたが、帝京大が大差をつけた後半は1%台に落ちている。これは、全盛期の5分の1以下。観客席も一般ファンの割合は決して多くない。

 バスケットボールやバレーボールの大学選手権の試合会場を見ると、観客席はほどほどに埋まっているようにも見える。だが、客席を占める観客の大半は、関係者らしき人たちしかいない。かつてはOBやOGのみならず、一般ファンで観客席は埋め尽くされ、応援の歓声に会場全体が包まれていた。今はテレビ中継も有料チャンネルの衛星放送に限られる。

 高度成長期から景気低迷期に至り、企業は企業スポーツの存在意義として広告宣伝効果に重きを置くようになった。スポーツチームへの年間数億円の投資に対するリターンを明確にしたからであろう。それが、ここ最近では、業界再編や企業合併などで肥大化した企業グループのインナー効果を求める傾向が強い。企業ブランドの求心力を高めていくために、スポーツは活用しやすいからである。

 観客席で、社員総出で応援する姿は、スポーツでしか具現化できない。企業広告は世間一般に対する企業理念や企業イメージを訴求するためのものだが、実は、最大のターゲットは社員であるという。スポーツも企業広告と同じ一つの媒体なのである。そして大学スポーツも、愛校心を醸成するための手段としてとらえる傾向が強くなりつつある。その傾向は、企業スポーツの衰退と同じ道をたどっているようにも見えてくる。

限られるPR効果


 少子化が進む中で、志願者数を伸ばし、学生数を維持していくことは大学経営の根幹にある最大の目的であろう。この目的達成のために、大学はスポーツ活動に力を注ぎこむ。箱根駅伝での活躍が、志願者数の増加に結び付くケースも少なくない。大学側の思惑はさまざまであろうが、運動部の活躍がメディアをにぎわすことは、絶大なPR効果を生んでいる。しかし、それはごく少数に限られる。大学スポーツ全体が、世間一般のスポーツ人気の範疇(はんちゅう)から消えつつあるからである。

 単なるPR媒体としてではなく、大学スポーツの真の魅力を復活させることが、日本のスポーツ界を底上げしていくための礎になるのではないだろうか。トップレベルはプロ化が叫ばれるようになって久しいが、日本のスポーツ界全体を盛り上げていくためには、大学スポーツへの関心を高めていくことが必要なことであるように思う。

こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。13年から2年間は帝京大経済学部経営学科非常勤講師も務める。ブログは(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/