向風見也(ラグビーライター)

THE PAGE 提供)

 日本最強のドリームチームが2016年から世界最高峰のリーグ「スーパーラグビー」に新規参入することが正式決定した。それを受け日本ラグビー協会は11月21日、記者会見を開き、現段階での構想を明らかにした。

 スーパーラグビーは南半球最高峰のリーグとされ、世界ランクの上位3傑を争うニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアのトップクラブが、各国代表選手を軸に据えてしのぎを削っている。日本からは、パナソニックのスクラムハーフ田中史朗とフッカー堀江翔太が12年度から参戦。国内初のスーパーラグビープレーヤーの1号と2号として、話題を集めた。田中はニュージーランドのハイランダーズで同国代表スクラムハーフのアーロン・スミスと定位置を争い、堀江はオーストラリアのレベルズで列強国特有の激しい肉弾戦に身を投げている。

 従来は「15」だったスーパーラグビーの参加チーム数が、2016年度から「18」に拡張するため、日本協会は8月、その1枠獲得へ立候補していた。シンガポール協会と両天秤にかけられた結果、ホームゲームの7、8試合のうち3試合をシンガポールで行うことを条件とし、今度の決定を勝ち取ったのである。なお日本は、南アフリカのチームなど5チームが加わるカンファレンスに入り、他のカンファレンスとのゲームを含めてシーズンで15試合をこなすこととなる。

国際親善試合の後半、マオリに勝ち越しのトライを許し呆然とする五郎丸歩(中央)=2014年11月8日、秩父宮(撮影・吉澤良太)
 参戦目的の1つは、自国開催となるワールドカップへ向けての代表チームの強化だ。ワールドラグビーによる世界ランキングの近い国同士がテストマッチ(国際的な真剣勝負)を組む傾向にあるのが楕円球界である。そんななかスーパーラグビーへ日本代表級のチームが入れば、従来とは違った形で国際経験を積めることとなる。矢部専務理事は、この舞台に、日本代表と、その候補、日本で活躍する外国人選手らによる40名程度のスコッドで挑みたいとしている。

 参加期間は2016年から2020年度までの5シーズンで、矢部達三専務理事は「それが終わってからも(契約期間を)更新したい」と希望を述べている。

 もっとも、会見に出た田中は、現実の厳しさも指摘した。質疑応答で「いまの日本代表がスーパーラグビーに入ったら」と聞かれ、「正直、下の方」と即答している。事実、今秋に「JAPAN XV」として挑むもホームで2連敗を喫したマオリ・オールブラックスは、そのスーパーラグビーの予備軍級の選手が大半を占めていた。田中は言う。

 「これが日本ラグビーのスタート。1、2年はしんどい戦いが続くと思うんですけど、(自身の参加を問わず)そのなかでも世界と対等に戦えるチームを作っていきたい」

 加えて、「誇りと同時に大きな責任も感じている」と話した矢部専務理事は、参画に向け抱えている多様な課題を指摘された。

 参戦に伴う国内シーズンの日程調整については「SANZAR(スーパーラグビーの母体)が日程を出してきていない」こともあって具体案はなし。南アフリカ、シンガポールなど各国を転戦するための移動費は「スポンサーシップと入場料収入」でまかなうというが、その「スポンサー」の詳細は「決まっていません。色々なところとお話しているということです」という。

 なかでも切実な問題は、選手のサラリーだろう。 国内最高峰のトップリーグの選手にはチームの母体となっている企業の社員選手も多い。スーパーラグビーは最長で2月から8月までの拘束期間があるが、そこへトップリーグのチームが選手を出すには、相応の条件があるだろう。「そういうところも…これからですけど…」と言葉に詰まる矢部専務理事は、各企業からの「出向」という形でメンバーを招集したいようだ。しかし、その折に重要となる故障した場合の保障問題については明確なビジョンが示せなかった。

2012年10月、スーパーラグビー「ハイランダーズ」入りが決まり、
ガッツポーズする田中史朗(撮影・財満朝則)
 国内外2チームとプロ契約を結ぶ田中は、周りの社員選手を慮った。

 「怪我をした時のことを考えておかないと、企業が社員選手を出してくれないと思います。あと、チームができたら皆、ホテル住まいになると思うんですけど、そこに家族が来られるようにしてあげないと。家族と会う時間がなくなってしまうことで、(選手によっては)嫁に『行かないで』と言われることとかもあると思うんで」

 日本人のプロ選手や外国人選手も、簡単に参戦できるとは限らないだろう。まず、家族がいるのは多くのプロ選手も同様だ。それに外国人選手が日本に来ているのは、そもそも治安の良さや安くないギャラに惹かれているとの側面は否定できないだろう。

 会見の最後、こんな質問が飛んだ。

 ――いま、決まっていないこと、話せないこと。いつ、クリアになりますか?

 矢部専務理事は答えた。

 「これから(運営のための)組織をつくっていくわけです。それはなるべく、数ヶ月のうちに。皆さんにお話できるようになるには、1年はかからないんじゃないかと思います」

 ――もし、諸条件が整わぬ状態で「日本拠点のチーム入りを」とのオファーがあったら。プロ選手は2つ返事で受けるものですか。

 妻子ある29歳の田中は語った。

 「若かったら、決まっていない状態でも『やろう!』となるかもしれないけど、いまは、そういうものが決まっていないと迷ってしまうと思います」

 日本ラグビー界にとって、競技力と認知度の向上に不可欠なスーパーラグビーへの参戦。ただ、その実現までにはいくつかのハードルがある。選手たちがプレーするまでの間、適切な経過観察が求められよう。