関西電力など電力4社の社長が3月19日、経済産業省に宮沢洋一経産相を訪ね、運転開始から40年前後たった原発5基を廃炉にすることを報告した。5基は関電の美浜原発1、2号機(福井県)、日本原子力発電の敦賀1号機(同)、中国電力の島根1号機(島根県)、九州電力の玄海1号機(佐賀県)。これによって48基あった国内原発は43基に減る。

宮沢洋一経済産業相(手前右)と会談する電気事業連合会の会長で関西電力社長の八木誠氏(奥中央)ら=19日午後、経産省
 廃炉と決まれば、効率的・効果的に廃炉作業を進めていくことが必要になる。作業が遅滞すれば、コスト増嵩などの悪影響が懸念されるし、安全面でも早めに廃炉作業を完了するに越したことはない。しかし、効率的・効果的な廃炉を実現するには、いくつかの課題を解決しておかなければならない。

廃炉作業の円滑化・効率化への課題


 第一に、廃炉作業に関連して、廃棄物の安全性に係る規制基準が未整備であることや処分地の選定問題、さらには使用済み燃料に関する搬出先や貯蔵をどうするかなどについての課題がある。国が積極的な姿勢でこうした問題の速やかな解決に取り組むことで、廃炉費用の抑制も可能となる。

 例えば、低レベル放射性廃棄物の処分の問題については、次のような問題を解決することが必要だ。110万kW級のBWRの場合、廃炉により発生する廃棄物総量は約53.7万tであり、これは(1)「放射性廃棄物でない廃棄物」、(2)放射能濃度がクリアランスレベル以下である「放射性物質として扱う必要のないもの」、(3)低レベル放射性廃棄物で構成される。(1)と(2)の放射性廃棄物でない廃棄物等が97.6%、(3)の低レベル放射性廃棄物が2.4%である。このうちクリアランスレベル以下のいわゆる「クリアランス物」についての安全性に関する社会的な認知が十分でないことから、ドイツやスウェーデンなど欧州の一部の国で行われているような再利用の用に供されることが一般化しておらず、認知度向上が課題となっている。

 低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルが低い順にL3、L2、L1の3つに分類される。現在処分先が確保されているのは運転中廃棄物(L2)40万本のみであり、今後進む廃炉に伴って発生する廃棄物については処分場確保が課題となる。そのうち、L3はコンクリートガラや金属などで極めて放射能レベルが低いものでありトレンチ処分、L2はポンプや配管などで比較的放射能レベルが低いものでありピット処分、L1は炉内構造物、制御棒など比較的放射能レベルが高いものであり余裕深度処分が必要となる。特にL1については、規制基準がまだ定められておらず未解決課題となっている。

 また、低レベル放射性廃棄物の処分においては、放射能レベルが安全上支障のないレベル以下になるまでの間、廃棄物埋設地の管理を継続する必要があり、管理期間は、L3が30-50年、L1及びL2は300年程度と見込まれている。これは、民間企業にとっては相当長期の管理責任であり、自由化進展後の競争下では、その体制について改めて見直す必要が出てくるかもしれない。

事業者の財務体力と国の関与


 第二に、廃炉を完遂させるために、事業者を財務的に健全に保っておくことが重要である。廃炉に関する財務的な手当てに関しては、一昨年、昨年と経済産業省のWGにおいて、廃炉に関する会計・料金制度の見直しが行われた。これは、自由化の中で事業者が円滑に廃炉することを可能とする制度見直しであり、事業者の財務的健全性維持のために大きく寄与している。

 そもそもこうした措置が必要になるのは、電力システム改革(自由化)という政府の政策変更によって料金規制が廃止され、電力事業における投資回収の仕組みやルールが大きく変わるからだ。自由化前の規制料金下においては、電力会社は、規制料金で投下資本に対する回収と適正な報酬を確保されることを前提に、供給義務履行のために設備投資を実施し、適正な価格での電力供給を果たしてきた(「規制上の盟約」)。自由化後に発生するストランデッド・コスト(Stranded Cost:帳簿価額=サービスのために投じた総費用が、回収可能な費用=市場価格を上回っている場合、これをストランデッド・コストという。)については、以下の理由から、特別の措置を講じることによって、全ての需要家の負担の下で回収することが合理的だとされている。

(1) 電気事業者が信頼性あるサービスを継続するための財務能力を維持する必要性
(2) 需要家間の負担の公平性
(3) 過去の「規制上の盟約」の尊重

 こうした考え方に基づいて、米国においては、自由化後に回収が困難になってしまった費用について、規制下において全需要家への電力供給(供給義務履行)のために設備投資がなされてきたこと等を背景として、全需要家から回収する仕組みが認められている。例えば、テキサス州においては、自由化後における原子力発電所の廃止措置費用の残額については、ストランデッド・コストとして全需要家からの回収を認めている。日本でも今後2016年には小売の全面自由化、2020年には電力会社の発送電分離が予定されており、電力システム改革が進展していくにしたがって、廃止措置費用についての会計上・財務上の措置のさらなる充実が必要となってくる。

 また、欧米の電力自由化の先進国では、事業者間の競争が進展しても確実に廃炉費用が確保されるよう、事業者が発電を行っている段階から、廃炉に係る資金については外部基金への拠出などを求めているのが一般的である。さらに、一部の国においては、資金確保だけでなく、廃炉それ自体についても、政府関連機関が実施するスキームが組まれている(英国NDA、スペインEnresa)。

 今後、日本においても自由化が進展すれば、廃棄物の費用の確保をどのように行っていくのか、また使用済み燃料の中間貯蔵や再処理等の核燃料サイクルについて、コストやリスクの分担、事業主体などについて、これまでの体制や制度を根本的に見直していくことが必要になってくる。廃炉作業の計画を考えるだけでは十分ではなく、その後の使用済み燃料の搬出、貯蔵、再処理事業の進捗などを総合的かつ整合的に検討していく必要がある。こうした課題は、政府に原子力政策の企画立案と実施に関する司令塔的組織体制の確立を迫るものだ。(これらの点の詳細については、21世紀政策研究所の報告書「核燃料サイクル政策の改革に向けて」http://www.21ppi.org/pdf/thesis/141107.pdf を参照。)