Wedge編集部

 政権が避けてきた将来の「エネルギーミックス」がまもなく提示される。つじつま合わせのために、「深掘り」される再エネと省エネが要注意だ。

 1月末、経済産業省の有識者会合で、2030年段階における日本の電源構成(エネルギーミックス)の検討がようやく始まった。舞台は、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に置かれた「長期エネルギー需給見通し小委員会」。分科会の坂根正弘会長(コマツ相談役)が小委の委員長も兼任し、熱心に議論を進めている。

 本来、このエネルギーミックスは、14年4月に閣議決定したエネルギー基本計画の段階で明示されるはずだった。ネックになったのはもちろん原子力だ。自民党は、政権奪取時に掲げた「規制委が安全と判断した原発については再稼働」という表現を超えるスタンスを示すことはずっと避けている。選挙に際して「政治的リソースを原発には割かない」という判断があった。

 そのため基本計画における原発の書きぶりは、「重要なベースロード電源」だが、その依存度は「可能な限り低減」、ただし「確保していく規模を見極める」と、なんともわかりにくい。しかし、この曖昧戦略もいよいよ終わりにせざるを得ない。今年11月に、2020年以降のCO2削減の国際的枠組みを決めるCOP21(第21回気候変動枠組み条約締約国会合)があり、6月のサミットで、安倍首相が日本のCO2削減目標を示すとみられているからだ。そうすると5月までにはエネルギーミックスを決めなければならない。

 「統一地方選後の4月下旬には小委が選択肢の形で示すだろうから、経産省の原案は3月末から4月初めには提示されるのではないか」(関係者)

 有識者の間で共有されているエネルギーミックスの相場観は、「原子力が15~25%、再生可能エネルギーが20~30%で、原子力より再エネが多い」というものである。

 震災前の原子力依存度は発電ベースで約3割だった。これより低減させるから25%以下。現存する原発に40年運転規制を厳格にあてはめれば、30年段階で全て稼働させても15%。だから15~25%なのだが、20なり25という数字を示せば、それはとりもなおさず原発を新たに造ること=リプレース(新増設)を意味するから、政治家としては世論の反発が怖い。世論を納得させるためには、再エネをそれ以上に充実させている構えが必要というのが、この相場観の意味するところだ。

 再エネについては、民主党政権が10年6月に定めたひとつ前の基本計画が発射台になっている。この計画では、鳩山由紀夫首相が09年9月の国連演説で唐突に発表した「90年比25%減」という野心的すぎるCO2削減目標を満たすために、CO2を出さないゼロ・エミッション電源である原発と再エネについて、それぞれ50%、20%と高い目標値を掲げた。このときよりも強い再エネ推進姿勢を示すために、今回「再エネ30%」という数字が取り沙汰されているのである。


再エネ30%の非効率性と非現実性


 再エネは現在、固定価格買取制度(FIT)という、発電事業者の収益を事前に確定させる超優遇制度で導入が進められている。そのコストはすべて電力消費者に賦課金としてツケ回しされているのだが、FITで再エネ30%を達成しようとすると膨大な賦課金になってしまうのだ。

 電力中央研究所の朝野賢司主任研究員の試算によれば、新エネルギー小委で示された現行の導入ペースをずっと継続すると、2030年段階で再エネ比率は約30%となり、年間賦課金は4.1兆円に達するという。震災前の年間電気料金の総額が約15兆円だから、その約3割にあたる。震災後、原発停止などによって電力価格が約3割上昇し、関西電力などの電力会社が強く批判されているが、再エネだけでその域に達してしまうということになる。

 実は再エネ20%でもなかなかの負担感である。同じ試算によると、FITを今年度で廃止したとしても、すでに認定された設備がすべて運転開始すればそれだけで再エネ比率は約20%、年間賦課金は2.6兆円にも及ぶ。

 では再エネ20%は容易に達成できる目標なのかというとそれも違う。再エネの大半を占める大規模太陽光設備(メガソーラー)を運用の事業者をヒアリングすると、「高い買取価格のときに、認定だけ取ったブローカーなど、事業運営能力のない事業者が多く、現在の認定容量の半分も運転開始には至らないだろう。経産省は悪質事業者を排除し、制約が出てきている電力系統を空けるべき」と口を揃える。

 しかも、慶應義塾大学の野村浩二准教授の実証研究によると、FITは競争を阻害し、高い買取価格の設定によって、事業者は世界標準よりも高い太陽光パネルを輸入することに甘んじ、事業に対する習熟効果もほとんど見られていないという。消費者は無駄に高い電気を買わされているのだ。

 FITは再エネ推進の立場に立っても有害無益な制度になっている。「焦らずに、パネル価格が下がりきったところで、公共工事として入札で大量に買い上げれば圧倒的に安く導入できる」(野村准教授)。少なくとも、21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹の言う「ドイツなどが行っている、買取価格を卸価格に連動させるプレミアム型への移行や自力直接販売、入札導入など、再エネの市場統合」を急ぐべきだ。

 また、再エネは20%を超えてくると導入すること自体が困難になってくることも真剣に検討すべきだ。経産省が小委に3月10日に示した資料によれば、年間でもっとも電力需要が少ない5月の晴れの日を想定した、電力系統への接続可能量を考慮すると再エネは20%程度しか入れられない。これを超えると、系統からの遮断や、系統増強への投資が必要になるため、消費者負担は途端に大きくなる。

 また、再エネの大半が太陽光と風力という不安定な電源であることにも注意が必要だ。埋め合わせは、すぐに出力を上げることのできる火力発電が行うのだが、「バックアップ火力の稼働率は低くなるので、事業者にとってみれば投資効率が悪い。日本は20年をメドに電力自由化を進めるとしている。自由化された電力会社はそんな電源への投資は避ける。ドイツでは実際に火力発電の稼働率低下と投資抑制が起きている」(NPO法人・社会保障経済研究所の石川和男代表)。

 「大量の余剰電源があったスペインや、連系線で隣国と電力をやりとりできるドイツといった恵まれた国でも、再エネが20%を超えると様々な問題が起きた。日本は今からリスクに対応しておくべき」と澤昭裕氏は言う。「再エネ30%」の非効率性と非現実性を直視すべきである。