国交正常化50年という節目の年に、日韓関係は冷え切ったままだ。両国にとって好ましくない現状だが、韓国側は歩み寄るどころか、さらに「反日」の度合いを強めている。裁判所までもが「親日は非国民」という理屈で、日韓の歩み寄りを説いた書籍に対して事実上の「発禁命令」を下した。

〈「慰安婦」のすべての姿を見ないままでは問題は永遠に解決しない〉

2013年8月に出版された「帝国の慰安婦」
 一昨年8月に韓国で出版された『帝国の慰安婦』のキャッチコピーである。

 昨年6月、同書の著者である世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)教授に対して、元慰安婦9人が「虚偽の事実を記載して名誉を毀損された」として出版差し止めの仮処分を求めた。その申し立てに対してソウル東部地裁は2月17日、「34か所の文言を削除しないかぎり出版を差し止める」との決定を出し、書籍は書店店頭から消えた。事実上の発禁処分である。

 朴教授は1957年ソウル生まれで、高校卒業後に来日。慶應義塾大学文学部を卒業後、早稲田大学文学研究科で博士号を取得した。韓国に日本近現代の文学を紹介し、夏目漱石などの韓国語訳を手がけてきた。歴史問題で日韓の「和解」の道を模索してきた学識者としても知られる。

 2007年4月には、元慰安婦への償い事業を続けてきたアジア女性基金(※注)が解散したのを受け、日本外国特派員協会で会見を行なった。そこでは、

「慰安婦問題に対する日本の対応が、韓国ではほとんど理解されていない」

「『日本は謝罪も補償もしなかった』というような言葉がまかり通っている」

 と、韓国側の無理解に言及した。その他にも、

「(慰安婦)動員の過程において、韓国人もかかわっていた事実があります」

 と語り、日本軍による強制連行ではなく朝鮮の業者が慰安婦を集めていた事実に触れている。一方で戦時中の日本を全面的に擁護するわけではなく、慰安婦問題が「植民地化という(韓国側の)被害の中で起きたこと」であるとし、日韓双方の責任に触れていた。

 『帝国の慰安婦』でも、日本の植民地支配が慰安婦を生んだ原因だとしつつ、韓国社会に根付いた「20万人の少女が強制連行された」という認識は歴史事実に反すると論証している。

 書籍が発売されたのは一昨年8月だが、「ナヌムの家(元慰安婦の共同生活施設)」で暮らす元慰安婦たちが訴えを起こしたのは昨年6月になってからだった。

「朴教授は冷静な議論のできる人だから、ハルモニ(おばあさん=元慰安婦の意)からも信頼を得ていた。朴教授に日本軍と自分を売った父親のどちらが憎いか、と問いかけられて『それは父親だ』と答えるハルモニもいた。ただし、慰安婦支援団体の中には朴教授への反感がくすぶっていた。朴教授と最も信頼関係が深かった91歳の元慰安婦が昨年6月に亡くなると、その1週間後に今回の訴訟を起こしたのです」(韓国紙記者)

 都合の悪い「事実」を証言する元慰安婦がいなくなった途端、訴訟が起きたわけだ。さらに驚かされるのは、裁判所がその訴えを認めたことである。

【※注】アジア女性基金/元慰安婦に対する補償(償い事業)などを目的として1995年に発足。日本政府の出資金と国内外からの募金によって運営されたが、韓国では補償が国家賠償ではないことを慰安婦支援団体から厳しく批判された。2007年3月末に解散。

関連記事