磯山友幸(経済ジャーナリスト)

 父と娘が経営権をめぐって争っている大塚家具。その雌雄を決することになる株主総会が3月27日に開かれる。双方が株主の支持を得るべく委任状争奪戦を繰り広げている。

 娘の大塚久美子社長側が取締役会を押さえ、会社側提案として父である大塚勝久会長らを排除する取締役候補案を提出。一方の勝久氏は、久美子社長らを排除した対案を株主提案として出している。

 勝久氏は創業者で、いまも発行済み株式数の18%余りを持つ筆頭株主。2%弱を持つ妻の大塚千代子氏も会長側で、2割の「基礎票」を持つことから、当初は株主総会でも優勢ではないかとみられていた。

 一方の社長側は、10%強を持つ米投資ファンドや国内金融機関などの機関投資家の支持を固めたとみられ、両者はほぼ拮抗(きっこう)している。総会当日までどちらが勝っても不思議ではない状態が続くものとみられる。

 残るは取引先などの法人株主や、個人株主がどちらを支持するか。会長は会見や新聞・雑誌のインタビューなどで「悪い子供をつくった」「娘はまだ反抗期」と、父娘の争いだという印象を前面に打ち出している。

 これに対して社長は上場企業としてのガバナンス体制のあり方や経営戦略を冷静な語り口で訴えている。会長側が「情」に訴える戦略を取っている一方で、社長側は「理」を説く戦法に出ているといってよいだろう。

 社長側の道理は機関投資家など「プロ筋」には理解されやすいに違いない。一方で、会長側の訴えで情にほだされる古くからの取引先や個人株主も少なくないだろう。

経営戦略についての記者会見に臨む大塚家具の大塚勝久会長=2月25日午後、東京都千代田区(蔵賢斗撮影)
 「株主総会で判断を仰ぐ」「大株主さんは判断を間違えない」と、会長は当初、株主総会の結論に従う姿勢を見せていたが、その後の発言は大きく変化している。

 「負けるとは思っていないが、一度や二度で終わる気はない」。新聞のインタビューではこう答え、久美子社長側が総会を制した場合には、大株主として総会のたびに株主提案を出す姿勢を鮮明にしているのだ。あくまでも自身が社長に復帰するまでは、筆頭株主として、経営陣を揺さぶり続けるというわけだ。

 また、別のインタビューでは「(総会の)27日以降も創業者だから来るなと言われても出勤する。創業者はいていいことになっている」とも発言。仮に総会で久美子社長体制が固まって自らは取締役ではなくなっても、すんなり引退したりはしない意向を示している。

 創業者が会社は自分のものだと思う気持ちは理解できる。個人商店ならば、死ぬまで創業社長として君臨するのもいいだろう。だが、大塚家具はれっきとした株式公開企業である。公開によって私物化できなくなる代わりに、保有株式が生んだ膨大な含み益を、創業者は手に入れることができたはずだ。

 株主総会でどちらが勝つにせよ、株式公開企業としてあまりにも恥ずかしい騒動を公然と繰り広げるのだけは勘弁してもらいたいものである。

いそやま・ともゆき 1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。著書に『国際会計基準戦争完結編』『ブランド王国スイスの秘密』(いずれも日経BP社)など。共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)。現在、経済政策を中心に 政・財・官を幅広く取材中。熊本学園大学招聘教授、上智大学非常勤講師。静岡県アドバイザーも務める。