相川俊英(ジャーナリスト)

 いまでは蔑視の対象にすらなってしまった感があるのが、昨年来から各地で不祥事を連発させている地方議員である。こんな連中が議員に選ばれていたのかと嘆き、驚き、怒り心頭となった方も多いはずだ。

 全国1788の地方自治体に総勢34879人(2013年4月時点)もの地方議員が存在する。議員報酬の総額は年約1614億円にのぼり、期末手当や政務活動費、費用弁償などを加えると議員への支払総額は年約2700億円に達する。それらの原資はいうまでもなく税金である。地方議員たちがこうした報酬に見合った仕事をしているかといえば、答えは明白だ。間違いなく「ノー」である。

 地方議会の果たすべき役割はチェックと政策提案である。ところが、ほとんどの地方議会は首長(執行部)提案を丸呑みする「追認機関」に過ぎない。執行部となれ合ってチェック機能を果たせずにいるのである。議場での質問も執行部に作成してもらった文を朗読するのが当たり前となっている。そうした地方議員たちに政策提案などできるはずもなく、住民にとって地方議会は「あってもなくてもどうでもよい」存在にしか思えないのである。

 だが、地方議会は自治体の意思決定を行う議決機関である。制度上、議会が「ノー」と言ったら、首長(執行部)提案は実現不可能となる。つまり、今の地方議会は新たなものを創り出す力はないが、新たな取り組みをストップさせる絶大な力は持っている。

 このため、議会側にへそを曲げられないように注意・配慮するのが、ごく一般的な執行部のやり方である。「先生、先生」と議員のご機嫌をとりながら、自分たちのコントロール下に置くのである。その際、議員への様々な処遇が最大の武器となることはいうまでもない。こうして働きぶりとは全く関係なく、高額報酬や政務活動費などが用意されるようになったという次第だ(町村議は除く)。それに、そもそも議員報酬や定数などの決定権は当事者の議会側にあり、お手盛りし放題となっている。

 その地方議員や首長を選ぶ4年に1度の統一地方選がスタートした。選挙は劣悪な議員を良質な議員に交代させる唯一の機会なのだが、そう大きなメンバーチェンジは生まれそうもない。なぜなら、現職やその後継者が圧倒的に有利となる歪んだ構造が出来上がってしまっているからだ。

 その現れが低投票率と立候補者の激減であり、無投票選挙と無風選挙の激増だ。議会への新規参入がより困難なものとなり、新陳代謝が進まなくなっている。議員間に競争原理が働かず、切磋琢磨とは無縁の世界になってしまったのである。こうして議会は「悪貨が良貨を駆逐する」状況となり、さらなる議員の質の低下を招くという負のスパイラルに陥ってしまっているのである。

 では、なぜこうした由々しき事態が広がってしまったのか。根底にあるのは、選挙に背を向けて投票に行かない有権者と、議員になる意欲を持った住民の激減である。両者は鶏と卵のような関係にあるが、後者に着目したい。

 立候補者激減の要因の1つは、投票率が低いため、組織や地区の推薦などを持たない新人が当選しにくくなっていて、意欲や能力があってもチャレンジしにくいという現実がある。特に働き盛りの勤め人にとっては、立候補するリスクはとてつもなく大きい。

 地方議員は非常勤の特別職で、兼業が認められている(公務員などを除く)。会期日数も年90日前後(町村議を除く)なので、専業でなくても可能だ。しかし、議会は常に平日の昼間に開会されるため、会社勤めの人が兼業することは事実上、不可能だ。任期中の休職を認める会社もなくはないが、勤め人の場合、職を投げ打って出馬しなければならないケースがほとんどだ。

 こうして専業や特定の職種の人でなければ、地方議員選挙に立候補しにくいという現実が出来上がってしまっている。

 議員になる人材の供給ルートが事実上、限定されてしまい、しかも、議員の固定化が進んでいる。その結果が議員の質の悪化となって現れている。現職議員の多くが次の選挙に勝つことを自身の最大の使命と考え、議員活動ではなく集票活動に日常的に血道をあげている。特定の住民のために口利きしたり、媚びを売ったりと懸命に票固めに汗を流している。そうした現職議員の姿を目にすれば、「自分もああまでしてなりたい」と思う人は少ないはずだ。意欲と能力がありながら出馬を断念してしまうのである。

 だが、こうした地方議会の負のスパイラルを断ち切ろうという動きが生れている。有識者らが結成した「地方議会を変える国民会議」である。平日昼間に開催する現在の地方議会を、全て土日・夜間開催に変え、多様な住民が議会に参加できるようにすべきだと提言している。この提言に賛同した人たちが「地方議会を変える千代田区会議」を立ち上げ、今回の統一地方選で東京都千代田区議選に候補者を擁立し、その実現を目指すという。

 議会改革の「最善・最良・最短」の道は、働かない議員をきちんと働く議員にチェンジすることではないか。議員報酬や定数の議論はそのあとにおこなうべきものだと考える。今回の統一地方選で最も注目すべきものは、千代田区内で始まった土日・夜間の議会改革を目指す新たな動きである。

相川俊英(あいかわ・としひで)
1956年群馬県生まれ。早稲田大学法学部卒。 放送記者、フリージャーナリストを経て、1997年から週刊ダイヤモンドの専属記者、 1999年からテレビ朝日・朝日放送系の報道番組「サンデープロジェクト」の番組ブレーンを務め、 自治体関連特集の企画、取材、レポートを担当した。現在は地方自治ジャーナリスト。単独での「獨往取材」を続けており、日本一首長に直接取材している記者と言われている。     著書は『長野オリンピック騒動記』『神戸都市経営の崩壊』『横浜改革 密着 1,000日』 『トンデモ地方議員の問題』など。2015年3月に新刊『反骨の市町村 国に頼るからバカを見る』(講談社)が発売された。