佐藤大吾(NPO法人ドットジェイピー理事長)

 昨年は、地方議員に対してこれほど注目が集まったのは初めてではないかというほど、たくさんの報道がなされました。但し、その多くが不祥事やスキャンダルといった類のものであり、特に若い議員に関するトラブルが多く、「政治への不信」と「若手への失望」、ふたつの側面からイメージダウンにつながったことは非常に残念でした。

 これまで、若い議員はいわば地方議会の「新風」と受け止められ、地方改革の旗手として好意的に受け止められることが多かったと思います。しかしながら、相次ぐ若い議員の不祥事によって「やっぱり若者はダメだ。政治はダメだ」といった印象が広がってしまったことは、誠実かつ熱心に改革に取り組んでいる他の若い議員たちの足を引っ張ることにつながり、その悪い影響は計り知れません。

 私たちNPO法人ドットジェイピーは1998年の創業以来、春休みと夏休みの2ヶ月間、国会議員や地方議員のもとで議員活動を体験するインターンシッププログラムを提供しており、これまでに約20,000人の大学生が参加しました。

 このインターンシッププログラムは、政治に関する知識や経験を全くもたない大学生を快く受け入れてくださる議員事務所の協力がないと成立しません。受け入れ議員事務所の数は年々増加し、現在は700を超えております。自らの政治活動を学生に見せ、また部分的に体験させることで、参加した学生の政治や議員に対する印象は劇的に変化します。インターンシップに参加する前には議員に対して「悪いイメージ」を持っていた学生が8割を超えているのに対して、わずか2ヶ月のインターンシップ期間を経た後におなじ質問をすると、9割以上の学生が「いいイメージ」を持つようになります。

 参加インターン生のうちほとんど全員が、「インターンシッププログラムに参加するまで、一度も議員と会ったことがない」という状況なのですが、直接議員と触れ合うことで、かなり政治や議員に対して誤解していたのだということに気づくことになります。数多くの議員は学生にとってよき指導者として誠実かつ熱心に取り組んでいらっしゃるという証左であると考えています。

 2万人を超えるこれまでのインターン参加学生の中には、熱心な議員たちから影響を受け、実際に議員になった人も多く、現在約60名が議員として活躍しています。彼らの多くは、得意分野を活かして先進的な取り組みを議会に提案し、少しでも地域を良くしようと活動しています。

 そんな彼らを見ているからこそ言えることとしては、若い議員が問題を起こしたとしても、それはその議員固有の問題であって、決して若くして議員になることそのものに問題があるとは言えないということです。

 特に「政治とカネの問題」は、国民全体としても関心が高く、テレビや新聞などで取り上げられる機会も多いため、若い有権者に対しても政治への関心や希望を著しく低下させます。

 議員の収支報告書については、有権者がどうやって入手すればいいかわかりにくいことに加え、たとえ入手したとしても内容を読み解くためには政治資金に関する独特の会計や監査のルールに関する知識が必要となります。

 また、報告の義務を負っている議員事務所にとっても難解であり、なかなか詳細に理解することは難しく、このことがトラブルにつながっている側面も大きいと考えます。

 このように「理解したいのに方法がわからない有権者」と、「正しく報告しようとしているのに、なかなか簡単にはできない議員」という状況は、なんとかして改善する必要があるのではないでしょうか。これ以上政治とカネに関するトラブルが続くと、ますます有権者の政治に対する失望感が広がり、政治不信、投票率の低下へとつながっていくことは間違いありません。ドットジェイピーでは、特に若い世代の間でこれ以上政治不信が広がるのを食い止めるためにも、政治に関する会計の透明化をサポートできる仕組み作りにも取り組みたいと考えています。

 また、低投票率の理由のひとつに「時間がない」というものがあげられます。ドットジェイピーでは昨年の衆議院議員総選挙の際に「Vote on Campus」というインターネットを用いた選挙啓発活動を実施しました。これは「若者のいるところで投票を!」、「投票所をもっと身近に」をキーワードに、大学構内にタブレット端末を設置することで、インターネット上から仮想の投票体験をしてもらうという企画だったのですが、この活動に参加した学生たちは、大学での投票所開設やインターネットによる投票ができれば、もっと投票に行くのでは、という声が多く寄せられました。

 総務省は先般、「投票環境の向上方策等に関する研究会中間報告」において、「投票所の設置場所の増加」や「インターネットを利用した投票システムの構築」などに触れていましたが、若者の行動範囲の中で投票ができる仕組みが様々な形で作られていくことが、若者の投票率を向上させる方法だと考えています。ドットジェイピーでは選挙管理委員会の協力のもと、4月に行われる統一地方選挙について、函館大学にて期日前投票所の設置を実現いたしました。

 最後に、どんな議員であっても、選ぶのは有権者です。だから、議員の質が疑問視される時、問題になるのは議員だけではなく、彼らを選んだ有権者ひとりひとりの姿勢であることも、きちんと認識しておくべきだと考えます。選ぶ側があとになって「なぜこんな人を選んでしまったのか」と後悔し、議員を批判することばかり繰り返していては、いつまでたっても変わりません。

 今、目の前の選挙で、「なぜその人を選ぶのか」しっかり考えて投票することが議員の「質」に対する問題を解決する第一歩になると思います。もちろん有権者がしっかり考えて判断するために必要かつ十分な情報や材料を、候補者側が提供することは当然必要です。地域のことを自分ごととして捉え、有権者と候補者が健全に対話を行う機会が選挙であり、「議員や候補者の質」とは、いわばそこで交わされる「対話の質」と言えるかもしれません。

 まずは、自分でしっかりと考え一票を投じるという「質の高い投票」を行うことが、政治や議員の質を高める一番の近道であるように思います。


佐藤大吾(さとう・だいご)
1973年大阪生まれ。大阪大学法学部在学中に起業、その後中退。企業でのインターンシップ導入支援事業などキャリア教育事業に携わる。またNPO活動として98年、議員事務所や官公庁などでのイ ンターンシッププログラムを運営するNPO法人ドットジェイピーを設立。これまでに1万8千人を超える学生が参加、うち約60人が議員として活躍。「Yahoo!みんなの政治」など、インターネットと政治を近づける活動にも注力する。10年3月、英国発1200億円を集める世界最大級の寄付仲介サイト「JapanGiving」の日本版を立ち上げ、国内最大の寄付サイトへ成長。日本における寄付文化創造に尽力する一方、13年には資金調達サイト「ShootingStar」を立ち上げ、営利・非営利に関わらずチャレンジする人の背中を押す活動に取り組む。