小笠原誠治(経済コラムニスト)



 浪速のエリカさまこと、上西小百合議員の旅行疑惑が世間の関心を集めています。

 いや~、これは本当にテレビ局にとっては美味しいネタですね。

 だって、主人公が31歳という若い女性議員であり、その女性議員が男性秘書と、もしかしたら仮病を装って仕事をさぼり、旅行に出かけていたかもしれないからです。

 しかも、その男性秘書の言葉遣いがやくざっぽいので、さらに視聴者を刺激する、と。

 上西小百合議員は完全に疑惑を否定していますが…しかし、世間の受け止め方は全く逆!

 灰色どころか、殆どの人が黒と決めつけているようです。それに橋下代表の発言も大きい!

 仮に病気であったのが事実だとしても、病気が治ったからといって旅行に出かけるようでは議員の資格はない、と。議員を辞めるべきだ、と。

衆院本会議を欠席した問題をめぐり、記者会見する維新の党の上西小百合衆院議員=3日夜、大阪市
 私、思うのですが、この橋下代表の発言があったので、どうも論点がボケてしまっているのではないか、と。

 あの発言は政治家の発言としてはOKかもしれないが、法律家の発言としては頂けない、と。

 だって、そうでしょう?

 まあ、通常はあり得ないでしょうが、仮に病気が本当であり、そしてどういう訳かその翌日にその病気が急に治ったとして、旅行に行くのが何故悪いのか、と。

 確かに、国会の本会議を欠席した翌日に関西方面に旅行するなんて常識的にはおかしい!

 それはそのとおり!
 
 しかし、でも本当に急に病気が治ったのであれば…どこで何をしようと自由なのではないのか?

 百歩譲って、それは常識に反すると言われても敢えて議員を辞職するほどのことなのか、と。

 やっぱり橋下代表は、仮病ではなかったのかと疑っているから議員を辞職すべきだと言っているに違いないのです。

 しかし、そのように多くの人が思うのであれば、何か重要なことを忘れているのではないのでしょうか。

 というのは、もし上西小百合議員が仮病を装ったとしたら、その上西議員に病気の診断書を出した医者は如何なものなのか、と。

 その医者は、本当に上西議員が3日も療養する必要のある病気だと本気で信じたのか。それとも…

 仮に、簡単に嘘が見破れたかもしれないというのであれば、その医者は、医者として如何なものでしょう?

 私思うのですが、医者が安易に診断書を出す傾向があるのではないか、と。

 もちろん、医者ですから診断書を出すのが仕事。でも、そうであれば、出した診断書には責任を持つ必要がある、と。

 従って、せめてどこの医者がその診断書を出したかという程度の情報開示はするべきだと思うのです。

 要するに、そのように安易に診断書を出す医者がいるから、仮病を装うことが簡単にできるのです。

 だとすれば、問題は、仮病を理由に国会の活動をさぼる議員がいることだけではなく、そのような行為に加担したと言われても仕方のない医者がいることも大きな問題なのです。

 さて、上西議員は旅行に出かけた事実はないと主張し、それに対しマスコミは、それはおかしいのではないかと批判をしているようですが…でも、本当に問題なのは、旅行に出かけたかどうかではなく、病気でもないのに国会の本会議をさぼったかどうかなのです。

 そうでしょう?

 しかし、マスコミというか、世間は旅行に行ったかどうかが気になる、と。

 それは、男性秘書が一緒だからという下世話な話なのです。

 最後におまけを。

 上西議員は旅行に行っていないと主張しますが、役人の世界では、出張は全て旅行なのです。何故ならば、役所には旅行命令簿というのがあって、旅行命令に基づいて役所の外で仕事をするのが出張であるからです。
(オフィシャルブログ「経済ニュースゼミ」より転載)


小笠原誠治(おがさわら・せいじ)
1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。以降、経済コラムニストとして活躍。メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。著書に『マクロ経済学がよーくわかる本』(秀和システム)、『ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる』(秀和システム)、『経済指標の読み解き方がよーくわかる本』(秀和システム)がある。


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