松本零士 ヤマトを語る


 ──「宇宙戦艦ヤマト」ですが、登場人物にはそれぞれモデルがいるとか

 松本 ヤマトの沖田十三艦長は顔もセリフも父がモデルです。たとえば、最初の方で出てくる「きょうの屈辱に耐えて明日のために生きろ。死ぬな古代」というセリフ。そういった意味の言葉はいやというほど聞きました。「これでいい。これでいいのだ」と言って息をひきとるシーンは、父の死に方がこの通りだったんです。十三という名は海野十三(小説家)からいただきました。

 ──そのほかは

 松本 古代進は弟の将(すすむ)から。弟は三菱重工でロケットや深海艇の心臓部などを手がけた一人です。森雪は、「男おいどん」の読者で手紙を山ほどくれた森木深雪さんという女性から、名前を頂戴(ちょうだい)しました。佐渡酒蔵は、ウチの事務所にいた佐渡島出身の大酒飲みの青年がモデル。登場人物はすべて、知り合いとかを性格も含めて使いました。

 ──戦艦大和を題材にすることで配慮したことは

 松本 アニメの制作に参加することになったときには、「よりによって戦艦大和か」というのが正直な思いでした。僕は飛行機マニア、戦艦マニアだったんですが、ヤマトは扱いにくいテーマなんです。それに、思想、宗教、民族感情といったものに土足で踏み込まない、というのを鉄則としていましたから、不用意につくりたくなかった。僕としてはスペース・ファンタジーを先にやりたかったんです。
インタビューに答える漫画家の松本零士氏
=東京都練馬区の自宅
 ──そうでしたか

 松本 でも、こんなチャンスはめったにないので、挑戦することにしました。ヤマトの物語を最初から描き直して、どこの国の人が見ても傷つくことがないよう、嫌な思いをしないよう、万全の配慮をして。

 ──ご自身の信念を作品に描き込んだんですね

 松本 人類皆兄弟。ケンカすることもあるけれど、長い歴史で見たら同じ地球人。日本でもあるでしょう。会津出身の知り合いがいるんですが、最初に出会ったときに「お前は九州か。昔なら敵だ」と言われ、大笑いして、それから仲良くなりました。現代なら笑い話で済む。昔はそうだったけれど、今は同じ日本人。地球人もそうなるでしょう。お互い理解しあえる日が来るはずだと。

 ──「ヤマト」は海外でもアニメや翻訳本などが紹介されましたが、反響は

 松本 「楽しく見ている」という声がほとんどでした。「地球の艦」として描きましたからね。「銀河鉄道999」でも「キャプテンハーロック」でも、そうした配慮をしました。

 ──「ヤマト」で訴えたかったテーマは

 松本 地球を救うために、生きるために飛ぶ-です。生存のために飛ぶのであって、死ぬために飛ぶんじゃない。胸の中には、戦場で倒れていった地球上のすべての人たちへの思いがあるわけです。いつの日か殺し合いのない世界に。そんな思いを込めました。

 (聞き手 溝上健良)