猪野亨(弁護士)

 維新の会では、上西小百合氏に対して、除名の前に議員を辞職し、2~3年修行して、再度、維新の会からの立候補を考えてはどうかという打診したと報じられています。
上西議員 辞職勧告拒否!橋下氏変貌嘆く」(デイリースポーツ2015年4月4日)

 それに対する答えが
上西氏は「議員の身分は法に触れない限り身分は奪われません」「それだったら除名で結構です」と拒絶したという。

衆院本会議を欠席した問題で記者会見し、
うつむく上西小百合衆院議員=4月3日夜、大阪市
 橋下氏は、上西氏が永田町の論理にはまってしまったと批評していますが、本会議を欠席してまで私的旅行をした疑いであり、これまでとは比較にならないものです。
 先般、問題になった自民党の中川郁子議員と門博文議員が不適切な関係を報じられ、ご両名は事実を認めてはいますが、どちらも議員辞職はしていません。
 百歩譲って考えれば、議員としての活動には支障は来していない、プライベートな部分ということになりましょうか。
 もっとも、中川郁子氏の場合、その後、「緊急入院」していましたが、これは誰がどうみても、マスコミ等の取材から逃げるためのもので、どう考えても「サボり」ですが。それでも建前は「入院」です。入院中のタバコもどうかとは思いますが。

 中川郁子氏は、中川昭一氏の妻ということで、中川昭一氏の死によって、その後継候補になったに過ぎませんから、地元での反発、不満は大きいでしょう。

 しかし、その発想が古いですけれど。「貞淑な妻」でなくなってしまったというだけのことですから。そういう発想で、もう支援しない! っていうなら、それはそれで違和感があります。
 この場合、妻子のある門氏だったから問題にしているというより、別の男と淫らな行為をしたのがけしからんみたいな臭いがプンプンします。要は中川家の嫁の分際でみたいな発想しか伝わってきません。
(ちなみに私も道内議員に対し、陳情に行くことはありますが、中川郁子氏の今回の所業はともかく、中川氏の秘書の方々は、本当に真剣に話は聞いてくれました。)

 しかし、上西氏はそうはいきません。その秘書に妻子があるかどうかではなく、仮病で本会議を欠席したという疑いなのですから。
 しかも、本会議の前の日に診断書が出ていながら、3軒もハシゴしてた(本当にソフトドリンクだけ?)、そして翌日の本会議は欠席なんて、議員としての言い訳は成り立ちません。

 上西氏は、政党から除名された以上、今後は個人で議員活動をしていくことになりますが、本当に議員としての活動ができるのでしょうか。
 上西氏が橋下氏らの申し入れを拒絶したのは、今、議員辞職しても次の選挙で公認される保証がないということがあるかもしれません。
 橋下氏なら、次の総選挙では事情が変わったとか言い出す可能性は大です。
 とはいえ、実際のところは仮に維新の会が公認するとしても、(1)数年後には維新の会自体がどうなっているかわからない、(2)自身も小選挙区での当選の可能性はゼロ、ということを考えると、上西氏にとっては次の選挙で当選する可能性は、維新の会が優遇して近畿比例区で名簿単独1位にしない限り、全くのゼロです(その結果、維新の会の比例区の得票はガタ減りになりますから絶対にあり得ない想定です。)。
 であれば、居座るしかなくなるわけです。

 上西氏の場合は、中川郁子氏や門博文氏とは異なり、衆議院による処分が求められる場合ではないかと思われます。

憲法第58条2項  両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 本来、議院の自律権の具体化である議院の懲罰権ですが、これが濫用されれば、少数政党への弾圧に利用されかねず、本来的に謙抑的であるべきものです。

 上西氏は、自らの行動が法に触れないなどと述べているようですが、この辺りは勘違いも甚だしいというべきでしょう。議院の秩序を乱した場合には法に触れなくても除名されることもあり得るのです。
 法に違反した場合には当然失職となったりすることがありますが、それだけが議員が身分を失う場合ではありません。

 さきほど、私は、上西氏が議員辞職をしないのであれば、衆議院による除名もあり得るのではないかと書きました。

 ただよくよく考えてみると議院による除名処分は極めて重い処分です。
 仮病で、秘書と私的旅行のために本会議を欠席、多分、前代未聞のことだと思いますが(但し、現在、疑惑の段階であり確定ではありません。ただ前日にはしご酒をしただけであれば除名は明らかに重きに過ぎます。)、いずれ証拠となるものが週刊誌などから出てきた場合、それでも居座り続けるのか、それとも議院が処分を下すことになるのかですが、それが除名に相当するのかどうかは判断として悩みます。

 本来であれば、議員辞職を速やかにすべきことでしょう。普通の感覚の持ち主なら辞職します。不祥事の場合、所属政党から説得されれば普通は辞職するのです(方針が違って除名された場合はもちろん別ですが)
 それでも辞職しない上西氏。このような人を候補者として擁立したのが維新の会です。
 「オレがオレが」の寄り合い所帯である維新の会であればこその醜態といえます。

 橋下氏は、自分の責任だなんて言っていますが、そういうことなのです。それが維新の会です。

※当初、中川氏が政務官辞任と書きましたが、「続投」であり、誤りがありました。ご指摘を受け、訂正するとともお詫びいたします。
(『弁護士 猪野 亨のブログ』より2015年4月5日分を転載)