佐藤優(作家、元外務省主任分析官)

 出国禁止措置の解除は遅きに失した感はあるが、韓国政府としてもぎりぎりの段階で常識的な対応をしたということだろう。異常な状態が正常に戻ったという一点で、今回の韓国政府の対応は評価できる。

 真相は闇の中だが、韓国政府の政策意思決定につながる誰かが「このあたりにしておいた方がいいのではないか」と考えたことが、今回の出国禁止措置の解除に影響したのではないか。

 今回の問題で産経新聞は組織として、しっかり筋を通し、加藤達也前支局長はジャーナリストとしての矜持(きょうじ)を持って対応した。日本政府も外交問題として韓国政府に抗議した。日本の報道機関も左右関係なく、メディア全体の問題として考えて報道し、日本のメディアの健全性を示した。

 外国に長くいると、その国の理解者となる。加藤前支局長も日本と韓国の懸け橋となって韓国に日本を伝え、日本に韓国を紹介していた。その加藤前支局長が在宅起訴され、出国禁止になったことは私の心を動かし、産経新聞に加藤前支局長との往復書簡を掲載した。われわれの総力を合わせ、8カ月にして加藤前支局長が自由の身となった。日本全体の勝利といってもいいだろう。

 だが、出国禁止措置が解除されてもマイナスを減らしたにすぎず、無理に在宅起訴などをしたというマイナスは残っている。韓国政府は自国の権力を示すために、日本、そして産経新聞になら何をしてもいいというように加藤前支局長を在宅起訴した。今後の裁判で加藤前支局長が正々堂々と主張することで裁かれるのは、韓国の病理だ。

 今回の在宅起訴や出国禁止措置は「韓国版国策捜査」で、韓国全体が悪いとはとらえず、大統領制の中で忖度(そんたく)政治が行われた構造的な問題としてみるべきだ。今後はこの構造について明らかにすることが重要となる。

 今後の裁判の結果次第では、日韓関係がさらに悪くなる可能性があり、日韓関係が正常化するか、悪化するかは韓国政府にかかっていることを認識させていく必要があるだろう。(談)