宝田将志(産経新聞運動部記者)

 日本バスケットボール界が岐路に立っている。日本協会(JBA)は国際連盟(FIBA)から国内男子の2リーグ併存状況などを問題視され、昨年11月から無期限の国際試合停止の制裁を科せられた。このままなら日本代表が2016年リオデジャネイロ五輪の予選に出場できない非常事態だ。これを受け、改革を主導する特別チームが発足。サッカーJリーグ創設で手腕を振るった川淵三郎・日本サッカー協会最高顧問がまとめ役のチェアマンに就き、制裁解除に向けて動き出した。前代未聞のピンチをチャンスに変え、日本バスケ界は生まれ変わることができるのか。

 FIBAが求めているのは次の3点だ。

(1)国内男子のナショナルリーグ(NBL)とTKbjリーグの統合

(2)JBAのガバナンス(組織統治)強化

(3)若手育成を含めた男女の代表強化体制の確立


 中でも最大の焦点はリーグ統合で、国内でも、かねて課題とされてきた難題だ。FIBAは選手が分散し、強化や魅力発信につながっていないと指摘する。

アイシン三河と対戦後、観客の声援に応えるNBL和歌山の選手=1月21日、愛知県西尾市総合体育館
 今季、NBLは13チーム、bjには22チームが所属している。内情を見ると、NBLのつくばが5勝41敗、bjの埼玉も5勝39敗(いずれも4月2日現在)と、下位チームは勝率1割そこそこに低迷しており、リーグ内で実力差が大きいのは確か。NBLの和歌山が経営破綻し、運営法人が変わるなど切り盛りが厳しいチームもある。

 そもそも2リーグ併存は05年に日本リーグ機構から脱退した6チームがbjを発足させたことに始まる。bjは現在、全22チームが地域密着を掲げたプロで、実業団リーグの流れをくむNBLは13チーム中5チームが企業保有だ。過去に統合の動きはあったが、分裂時の心情的行き違いなどもあり、bjの千葉がNBLに移っただけで不調に終わっている。

 FIBAから統合を求められたJBAは、昨年7月以降、両リーグの代表者による委員会を立ち上げ協議を続けてきた。しかし、福利厚生の一環としてチームを保有する企業は、チーム名称から企業名を外すことなどに反対し、調整が付かず、今回の制裁に至った。

 また、リーグ統合問題にとどまらず、FIBAが(2)(3)も求めるのは、日本が06年に男子世界選手権を開催したものの約13億円の赤字を計上したうえ、選手強化の起爆剤にも出来なかった点も無関係ではない。男子代表に至っては1976年モントリオール大会を最後に五輪に出場できていない。年代別代表の国際試合と国内大会の日程の重複も問題点として指摘されていた。

 一方で、FIBAが制裁という“外圧”を掛けてまで、強硬に改革を迫る背景には彼らの世界戦略も絡む。17年に始まる19年ワールドカップ予選から、サッカーのようにホーム&アウェー方式を採用する。FIBA関係者は「今までバスケを見たことのない人にも見るチャンスが出来る。日本には潜在能力がある」という。

 実際、日本体育協会がまとめた11年度の競技別登録者数によると、バスケットは約61万5千人で、団体球技では軟式野球(約114万人)、サッカー(約92万7千人)に次いで多い。20年には東京五輪も控え、FIBAには、これを機にバスケ熱を高め、市場を拡大する狙いがある。

 特別チームはFIBAからワイス財務部長が共同チェアマンとして入り、JOCや文部科学省の関係者ら計10人で編成された。1月末から始動し、5月下旬までに議論をまとめる方針だ。

 特別チームの活動ではスピード感が一つの重要なポイントとなる。16年リオ五輪が刻一刻と迫っているからだ。予選を兼ねるアジア選手権は男子が9月から、女子は8月から予定されている。男子はアジア選手権に出場するため東アジア選手権で4位以内に入ることが条件。同選手権は例年5月か6月に開催されており、ギリギリのタイミングだ。ワイス財務部長や特別チームメンバーによると、国内男子チームの多数が分裂することなく新リーグに入会の意思を示し、さらに、JBAの組織改革の方向性も定まれば、制裁解除への道筋が見えるとしている。

 新リーグは来年10月に開幕する。特別チームは参加基準として、1部は5000人、2部は3000人収容のホームアリーナ確保などを提示した。競技環境や集客面から「ホームアリーナが最重要」との考えからだ。各チームに都道府県協会、地元自治体との連携を促し、その一方で、チーム名に企業名を入れることについては理解を示している。

 編成は1部(12~16チーム)2部(16~24チーム)、3部相当の地域リーグ(仮称)の3階層。初年度からリーグ間の昇降格も想定する。4月末までに入会申し込みを受け付け、5月末に参加チームを決定。各チームへの聞き取りなどを経て、7月までに各リーグに振り分ける計画だ。川淵チェアマンは「強力な夢のある新リーグを作る」と語っている。