「デジタルタトゥー」。直訳すれば「電子的な入れ墨」だが、インターネット上に一度投稿されたログ(記録)はまるでタトゥーのように消えず、半永久的に残り続けることを表す造語だ。軽い気持ちで投稿した記述や画像が膨大な数のネットユーザーにまとめられ、瞬く間に拡散。不本意な投稿が残り続ける。軽率なワンクリックが人生を台無しにしてしまうこともあり、専門家はユーザーに警鐘を鳴らしている。

 デジタルタトゥーの概念が唱えられたのは平成25年2月。米カリフォルニア州で開かれたさまざまな分野の専門家らが集まる大規模な講演会で、ベンチャー企業の役員が「人間は不死になった」との表現でこの造語を紹介した。

 ヤフーやグーグルなど検索エンジンの検索履歴、サイトの閲覧先、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の位置情報や顔認識データ。ユーザーの思考回路や行動がネットに記録され、そのデータは書き込んだユーザーが死亡後も生き続ける「不死」の状態になるというのだ。

 大阪、神戸の市営地下鉄では年夏、高校生の少年らが線路内に立ち入り、ピースサインをして楽しんでいる写真を短文投稿サイト「ツイッター」にアップして物議を醸した。写真の顔をモザイク処理することもなく、ネットユーザーが投稿者の顔や名前からすぐに身元を〝特定〟。少年らの個人情報は一瞬にしてネット上にさらされた。少年らはその後、鉄道営業法違反などの容疑で立件された。

 最近、こうしたSNSやネット掲示板への軽はずみな投稿が目立つ。

 コンビニで客の男がアイス用冷蔵庫に入り、自身の姿を撮った写真を投稿。テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(大阪市此花区)では複数の学生が裸でジェットコースターに乗る迷惑行為、飲食店では集団の男性客が全裸で席に座った場面の写真を投稿した。

 度を越した行為によって休業に追い込まれる店もあり、悪質な行為をした投稿者らは威力業務妨害容疑で書類送検された。ある捜査関係者は「今や誰でも画像や動画を公開できる時代。ネット世界と現実世界の区別がつかず、やってはいけないことの線引きができていないのでは」と嘆く。

 「ネットユーザーは、一つ行動を間違えれば人生を失いかねない」。そう警告するのは兵庫県情報セキュリティーサポーターの篠原嘉一さん(53)だ。

 自身の投稿に注意するのは当然の自衛策だが、SNSに入力した住所、氏名、連絡先、勤務先などの個人情報は、設定次第では誰でも閲覧可能。犯罪組織に見られれば事件に巻き込まれる危険もあると指摘する。

 SNSでは、投稿した場所が「~町付近」といった具合で公開される。スマートフォン(高機能携帯電話)ならGPS(衛星利用測位システム)機能で位置情報が分かる。パソコンでもネット上の住所「IPアドレス」で大まかな位置を把握でき、自宅だと住所が漏れる。さらに知人が投稿した画像に自身の顔が掲載され、顔認識(タグ付け)されてしまえば…。自ら個人情報を大公開しているのと同じだ。

 特定されれば誹謗(ひぼう)中傷を受けたり、犯罪に利用されたりする恐れがある。篠原さんは「投稿した記述や画像は瞬時にまとめられ、それが集約されていくと特定につながる。データは半永久的に消えず、投稿者は心に傷を負う」とデジタルタトゥーの危険性を指摘した上で、こう警告した。

 「もはやネットに匿名性などない。事件が起きてから後悔しても遅い」

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