山崎康志(ジャーナリスト)

 日本原子力発電の敦賀2号機(福井県)の原子炉直下を走る破砕帯が活断層か否か、原電と原子力規制委員会の有識者の間で争われてきた評価が決着した。2年余りの論戦の末、規制委は3月25日、「活断層」とする有識者の評価書を受理した。原電は強く反発し、今後の安全審査の場で改めて反論するが、独自データを規制委に納得させ、評価書を覆すのは容易ではない。

 最悪の場合、同原発は廃炉を余儀なくされ、原電はいよいよ窮地に陥る。すでに電力業界は同社の存続策を検討しているが、それ次第でわが国の原発は大きく再編される可能性がある。

敦賀原発=福井県敦賀市(本社ヘリから)

経営破綻が現実味


 「今後、加速する老朽原発の廃炉はオール電力で取り組むべき課題。それに原電の技術を生かすべきだ」

 東京電力のある幹部が語る通り、電力9社と電源開発(Jパワー)が共同出資する卸電気事業者の原電は、原子力のパイオニア企業だ。

 沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)の両炉型を唯一手掛け、廃炉作業中の東海原発(茨城県)で独自技術も蓄積してきた。しかし原発3基のうち、運転開始から45年が経過した敦賀1号機は廃炉が決定、同2号機は活断層問題に揺れ、東海第2原発も地元の脱原発機運が強く、1基も再稼働の見通しは立たない。

 発電量ゼロにもかかわらず、東電など5社は年1000億円超の受電基本料金を支払い続けている。しかし東電の数土文夫会長が1年前、「消費者の理解を得られない」として支払いに難色を示して以来、経営破綻が現実味を帯びていた。そこで、東電の後ろ盾である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が示した存続策が、原電を持ち株会社制の下に東西2社に分ける分割案だ。

 東日本会社は、東電と一体で福島第1原発の廃炉作業の発注元となり、その協力対価が原電の新たな収益源となる。東日本会社は「BWR連合」の色彩もあり、将来は東北、中部、北陸、中国の4社の老朽BWRの廃炉・リプレースも担う。東西に分割するのは万一、福島第1原発の廃炉過程で事故が発生し、放射性物質を放散した場合などの賠償債務を「PWR連合」となる西日本会社に連帯させないためだ。しかし…。

廃炉費用負担リスク


 「原電を東西分割する本当の狙いは何なんだ」

 東北電力の海輪誠社長の周辺からは疑念の声が上がる。うかつにBWR連合に乗れば、今後何十年、何兆円かかるか分からない福島第1原発の廃炉に組み込まれかねないからだ。

 東電以外の電力8社は、原賠機構に年950億円の「一般負担金」を納め、福島第1原発の賠償債務を肩代わりしている。さらに廃炉費用まで負担させられては株主に説明責任を果たせない。とりわけ東電と供給エリアを接する東北電はそのリスクを恐れ、「原電は東電の下請け会社として廃炉支援を受注すればよく、東電と一体の発注元になる必要はない」と反発する。

 一方、PWR連合の中核と想定される関西電力の八木誠社長の立場は微妙だ。原電が東西に分割されれば、福島第1原発の廃炉費用を負うリスクは遮断されるが、西日本会社が行う敦賀1号機の廃炉への資金支援や、将来の同3号・4号機の増設負担がのしかかる恐れがある。同3号・4号機は本来、中部電力とその発電量を分け合う計画だったが、中部電がBWR連合へ走れば、残された関電は8000億円近い建設費を独りファイナンスすることになりかねない。

 原電の東西分割は、わが国のBWRとPWRの原子力再編の呼び水となるだろう。しかし各社の利害と思惑は容易に一致せず、時間の経過とともに原電の苦境は深まっていく。

 原電は、敦賀2号機の活断層評価に対する反論が規制委にも認められなかった場合、福井地裁を舞台に行政訴訟も辞さない構え。しかし同地裁では高浜原発の再稼働差し止めを求める仮処分審査をめぐり、被告の関電が裁判官の適格性を問う「忌避申し立て」を行ったばかりだ。それが同地裁の電力業界への心証を害したことは否めない。ある電力関係者がつぶやいた。

 「原電の浜田康男社長(関電元副社長)は、母体はじめ株主各社のはざまで追い詰められつつある」

 パイオニア企業は復活できるか…。


 やまざき・やすし 日本工業新聞、外資系通信社記者を経て2001年独立。記者時代からエネルギー産業、IT産業、郵政事業、産業政策などを取材。著書に「電力・ガス業界大研究」(産学社)、構成に仙谷由人著「エネルギー・原子力大転換」(講談社)。1959年東京生まれ。

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