[WEDGE REPORT]ドローンや無人運転技術の活用もあり得る驚くべき未来

UBER JAPAN 髙橋正巳社長インタビュー


Wedge編集部

 UBERは、ゴールドマンサックス、グーグル、中国の百度(バイドゥ)をはじめとして、世界中から投資を集め、企業価値は400億ドル(約4兆8000億円)を超えているといわれる。これは、セブン&アイ・ホールディングス、ソニー、日立製作所などの時価総額に匹敵する規模だ。もちろんこれだけの資金を集めるには理由がある。現在、世界56カ国、300都市以上で、ハイヤーやタクシー、そして、いわゆる「白タク」の配車を中心に、事業を展開するが、その価値は人を運ぶことにとどまらない。日本事業を取り仕切る、UBER JAPAN髙橋正巳社長にUBERの未来像や、国土交通省の行政指導を受けた「福岡事件」について、尋ねた。
 *この記事は、Wedge5月号の特集『企業価値4兆円超!「破壊者」UBERの正体』に掲載されているインタビューコラムをWEB用に編集したものです。
UBER JAPAN
UBER JAPAN 髙橋正巳社長


 Wedge編集部(以下、――):UBERは日本で、ハイヤーやタクシーの配車を行っているが、UBERのプラットフォームを活かして、「人」以外のものも運ぶことを考えているのか?

 髙橋社長(以下、髙橋):今はどういったニーズがあるのかを探っているところだが、UBERは、需要と供給をリアルタイムでマッチングするプラットフォームだ。

 モノやサービスが欲しいといった需要に対して、スマホを使って、「今すぐここに来てくれ」といったことができる。

 その上に何を乗っけるのか、ということ。

 今は交通に重点を置いているが、このプラットフォームを使って、実際に人以外のものを運んでいるサービスを展開している海外の都市もある。

 例えば、ニューヨークのマンハッタンでは、自転車を使って荷物を届ける「UBER RUSH」を、ロサンゼルスなどの複数の都市では、「UBER FRESH」と呼ぶ、お昼ごはんをオンデマンドで注文できるサービスを行っている。

UBERUBER RUSH
UBERのスマホアプリは、世界共通。左はニューヨークの「UBER RUSH」、右は東京のハイヤー

 プロモーションベースだが、東京を含む世界144都市で、アイスクリームを届ける実験を行ったこともある。

 今は色々なことを試している段階。

 ――アメリカでUBERは無人運転の研究をしているが、法規制などが整えば、将来日本でも無人運転の技術を使って、ハイヤーやタクシーの配車や、配達などの事業を手掛けることはあり得るのか?

 髙橋:弊社はテクノロジーカンパニーなので、革新的な技術には常に関心を持っている。

 無人運転技術とUBERのオンデマンドプラットフォームを組み合わせることで、我々が目指す「街の超効率化」の実現に向けて大きく前進できると考えており、実用化が見えてきた段階で、固定概念にとらわれず様々な可能性を検討したい。

 ――4月1日には、「ドローン(無人飛行機)でマスクを配達する」というエイプリルフールならではのリリースをしていたが、法規制などが整えば、あながち不可能な話ではないと感じている。将来的にドローンを使って配達する可能性はあるのか?

 髙橋:あれは、多くの方から本当に始めたのかと思われた(笑)

 外で待っていただいたり、空をずっと眺めていつ飛んでくるか、とお待ちいただいた方もいたと聞いている。

 「UBERならやりかねない」と思われたのかもしれない。

 個人的にはそういう世の中が訪れてほしいので、もし環境が整えば可能性はゼロでない、と信じている。

istock
(画像:istock)
 ――UBERは「何でも運べる魔法のじゅうたん」になり得る?

 髙橋:UBERプラットフォームの本質は、リアルタイムで需要と供給をマッチングすることだ。

 データを用いることで、数分以内に●●がやってくる、という価値を提供できる。

 これが「魔法のじゅうたん」と思っていただけるのであれば嬉しい。

 実際、海外では先ほど触れたとおり、配達やお昼ごはんのオンデマンド注文も、事業として展開している。

 実験段階では、サンタクロースを呼べるという企画も実施したことがある。もし、「これを届けて欲しい!」などのアイデアがあったら、連絡してほしい(笑)

 ――訪日外国人などから、日本でも配達や「UBER X(編集部注:いわゆる白タク)」をやってくれという要望はないのか。

 髙橋:そうした意見は頂戴しており、もちろん意識はしている。

 ただ、UBER JAPANはまだベンチャーというか、事業を始めたばかりで、リソースが限られている。

 まずはフラッグシップサービスと位置付けているハイヤーとタクシーのサービスを充実させていきたい。

 ――今は東京中心部のみでの営業だが、大阪など、他の都市への展開はあり得るのか?

 髙橋:あり得るが、まずは、東京エリアにおけるハイヤーとタクシーの利便性をあげていきたい。

 東京以外のエリアへの展開はじわりじわりと行っていく。

 2014年3月に、東京で正式に営業を始めたが、当時の平均待ち時間は、10~15分ほど。

 これが、最近は7分ほどまで下がってきた。ニューヨークやサンフランシスコは平均2~3分なので、そこを目標にしていきたい。

 ――ハイヤーは、需要が限られるため、地方都市への展開は難しいのでは。

 髙橋:たしかにハイヤーは、都市部しか需要も供給もないため、結果的に大都市のみのサービスとなる可能性があるが、それ以外のサービスは地方都市でも展開可能だ。

 今年は地方都市や過疎地、交通の不便な地域で、どのようなニーズがあるのかも理解していきたい。

 ――今年2月5日から福岡市で行った「ライドシェア(相乗り)」の実験、「みんなのUBER」は、国土交通省から行政指導を受けた。

 髙橋:元々データ収集が主目的であったが、今は実験で収集できたデータを分析している段階。

 国土交通省とは「第1フェーズ」開始前に話をしてから実験を開始した。

 引き続き「第2フェーズ」に向けて話し合い、懸念点があれば払拭し、「みんなのUBER」を通じて次世代の交通のあり方を検討していきたい。

 詳細については「第2フェーズ」の内容が固まった段階で、きちんとしたメッセージを発信する。

 ――東京での事業に影響は出ているか。

 髙橋:影響は出ていない。引き続き事業は拡大している。

 ――白タクが法律で禁止されている国で、「UBER X」を展開している事例もあるが、なぜ日本では「UBER X」を行わないのか。慎重に進めている印象を受けている。

 髙橋:慎重というより、ハイクオリティなサービスに対するニーズが東京にはあるだろうというのが、我々の仮説としてあり、まずはそれをやってみたというところ。

 ハイヤー事業を通じて、様々なデータを得ることができているが、こうしたデータを取りながら、今後のプランニングをしていこうと思っている。

 繰り返しになるが、リソースが限られているので、色々なサービスを一度に行うことはできない。

 ――「UBER X」には法規制が立ちはだかる。

髙橋:日本に限らず世界中で発生していることだが、そもそも何十年も前につくられた法規制で、インターネットがなかった時代に決められたもの。

 前提が変わってきているともいえる。国土交通省には、事業開始前から、規制に関する相談はしている。

 ――タクシー業界から苦情は寄せられているのか?

 髙橋:そもそもそれほど接点がないということもあるが、特にそういった声は入ってきていない。

 ――UBERにハイヤー、タクシーを提供している会社に評判を聞くと、「新たな収益の柱ができ、儲かるようになった」と有難がっていた。

 髙橋:UBERにタクシーやハイヤーを供給するメリットがあるように設計していることも、影響しているのかもしれない。

 ――2020年の東京オリンピックまでには、サービスを定着させたいというような目標などはあるのか。

 髙橋:サービスの内容も、5年先となると、まったく別のものになっている可能性がある。

 A地点からB地点へ、なるべく早く、安く、安全に連れていってくれという需要は必ずあるので、これにどうやって応えていくのかということを数年かけて詰めていかなければいけない。

 これだけグローバルで普及しているサービスが東京をはじめ、日本全国で当たり前のように使える世の中をつくっていかないといけないという、ある意味で使命感のようなものを感じながら取り組んでいる。

(聞き手・構成/Wedge編集部 伊藤 悟)