石川慶子(広報コンサルタント)

3つの失敗~個人、政党、広報部~


 この半年間に女性議員の謝罪が注目を浴びた。小渕優子、松島みどり、上西小百合、中川郁子、片山さつき。中でも注目を浴びたのが上西小百合議員だろう。なぜ、彼女は多くの批判を受けたのか。私は失敗に失敗を重ねたことだろうと分析している。

 1度目の失敗は、大事な本会議を病気とはいえ休んだこと。新人議員ならここは這ってでもいくべきだろう。個人としての判断の失敗といえる。

 2度目の失敗は、本会議を休んで遊んでいたという疑惑に対し、すぐに釈明の記者会見を開かなかったこと。ここは個人としての失敗でもあるが、どちらかというと維新の党の広報部がすぐに記者会見をするようアドバイスしなかった点では、橋下徹氏も認めているように政党としての判断の失敗である。

 3度目は、遅ればせながら開いた釈明の記者会見で真摯に反省する態度を示せなかったこと。会見の中でありがちな失敗をことごとくしていることから、メディアトレーニングをせずに開いていると思われる。メディアトレーニングをしていない、あるいは知らないというのは、政党広報部の勉強不足による失敗である。

釈明記者会見は失敗のオンパレード


 釈明の記者会見は、危機管理の観点からするとダメージを最小限に抑え、信頼回復の第一歩とすべき要の位置づけである。この事態収束のための記者会見を失敗すると傷口は広がる。上西議員の釈明記者会見を見てあきれた人は多いだろう。明らかに傷口は広がった。何がどう悪かったのかを分析してみよう。ありがちな失敗のオンパレードであった。ここでは3つ指摘しておく。

 一番悪かったのは髪型と服装だ。いつもと全く同じであり、何の反省も感じられない。いつもと同じように髪型はロング、スーツもシャネル風の派手な印象を与える、インナーも胸が開いていて本人が下を向くたびにいちいち気になる。この胸の開いたインナーに反発を感じ、イラッとした女性は多いのではないだろうか。国民は記者と違って事実関係は全くわからない。国民には、派手な外見を控え反省の気持ちをわかりやすく全身で訴えるしかない。

 2つ目は、記者がなぜこんなに釈明会見が遅れたのか、という質問に対し、「自分はきちんと対応していたのに、一方的な記事を書かれた。街中で取り囲まれてひどいことをされた」と、いかにも自分がマスコミの被害者であるかのようなコメントをしてしまった。被害者意識を丸出しにしてしまう表現もありがちな失敗である。取材するのは記者の仕事である。議員が国民の税金を使ってきちんと仕事をしているかどうか監視する使命はある意味マスメディアに課せられたミッションともいえる。この一言で報道陣を敵に回すことになった。

記者会見を行う上西小百合議員(左)と家城秘書=4月3日、大阪市中央区(寺口純平撮影)
 3つ目は、会見中に何度も顔を緩めて笑みを見せていたこと。これは彼女だけでなく、多くの人が困った時には笑みを浮かべるという傾向がある。私はこれまで100名以上のメディアトレーニングを実施してきたが、多くの人は謝罪会見で笑みを浮かべてしまう。本人は全く無自覚だ。笑っているつもりは全くない。「笑ってました」と言っても「いや自分は笑っていない」と言い張る人は案外多い。そこで撮影した映像を見せて、該当シーンで映像を止めて「ほらここです」とここまではっきりと指摘しないと気づかない。自覚して練習することでようやく改善するのである。ことほどさように自分を客観視するのは難しい。

全ての議員はクライシスコミュニケーションを学ぶべき


 では、どうすべきだったのか。最初の失敗は許されやすいが、2回、3回と失敗が重なると寛大な人でも忍耐袋は切れてしまう。そこで必要となるのがクライシスコミュニケーションの考え方だ。危機管理広報とも言われているが、危機発生時にダメージを最小限に抑えるために説明責任を果たす活動である。この説明に失敗するとダメージが広がり、対応のまずさが批判されることになる。

 初動3原則として、私が勧めているのは「SPP」だ。Sはステークホルダー(利害関係者)。登場人物は誰で被害者は誰なのか。自分自身が被害者意識に陥らないために、被害者を意識することが大切。今回は上西議員に期待を寄せた国民が被害者である。

 1つめのPはポリシー。誰に何をどう伝えるのか、記者会見か個別対応かといったマスコミ対応方針のことである。この場合は疑惑が発生した段階ですぐに記者会見をする方針を立てるべきであった。2つ目のPはポジションペーパーで、公式見解書のことである。事実関係を説明する文書で概要、経緯、原因や反省点、再発防止策、見解の5項目を基本とする。今回であれば、事実はどうなのか(本会議の日は何をしていたのか)、なぜ疑惑報道が生まれたのか、どこを反省すべきなのか、今後どうするのか、今はどう思っているのか、といったことを文書にする、あるいは説明をする。

 何より記者会見の前には自分の映像を見て専門家からアドバイスを受けるべきであった。服装は、髪を束ねて顔をしっかりと見せ、ナチュラルメイクとし、紺のスーツ、白のインナーとして、派手さを消して反省の気持ちを全身で表現する。記者がどのような質問をしてきても、自分の至らなさを反省する、口元は引き締める。

 言うは易く行うは難し。2度目、3度目の失敗は政党広報部がクライシスコミュニケーションの知識があれば、避けることができた失敗である。女性リーダーを育成するのであれば、女性ならではの視点でアドバイスできる体制を整えることも組織としての役割であろう。

いしかわ・けいこ 広報コンサルタント、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事。東京都出身。東京女子大卒。参議院事務局勤務後、劇場映画やテレビ制作に携わる。PR会社勤務を経て2003年独立。メディアリレーションズで20年以上、100プロジェクト以上の実績がある。現在は企業のブランディングや理念策定支援、危機管理広報、経営者のメディアトレーニング等のサービスを提供。全国紙でのコメント多数。有限会社シン取締役社長、公共コミュニケーション学会理事等。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会にて外見リスクマネジメントプログラム提供中。http://ishikawakeiko.net/