家庭環境の事情から、満足に食事や教育を与えられない子供たちに手を差し伸べようと、龍谷大の学生たちがこうした境遇の子供たちと一緒に夕食の食卓を囲む取り組みを進めている。活動資金や人員の確保といった課題はあるが、学生らは「活動を通して、社会をよくするための糸口を見いだしたい」と話している。

子供の笑顔がはじける「トワイライトステイ」


 「さあ、ご飯にしよう」

 こたつを囲んでおこなわれていたトランプ遊びの最中、こう声がかかり、卓上は夕食準備に変わった。

食卓を囲む学生たちと少年(右)。鍋をつつきながら会話が弾む
 今月8日夜、龍谷大が所有する大津市京町の「町家キャンパス龍龍(ロンロン)」。同大学の学生ら5人と、10代半ばの少年3人が一緒に鍋をつつく。

 「やっぱり寒い日は鍋やね」「この肉、誰か食べなよ」「白菜も食べないと」

 たわいない会話を交わしながら、箸を手にした少年たちは、すぐにご飯を平らげておかわりを求める。鍋の周りで笑顔が弾けた。

 生活保護世帯や1人親家庭など、生活困窮の問題を抱える家の子供たちと週1回、一緒に夕食を取る「トワイライトステイ」という試みは、厚生労働省のモデル事業として、大津市社会福祉協議会などが昨年3月に始めた。現在では、龍龍など市内3カ所で取り組まれている。

 この試みを提案した社会福祉士の幸重忠孝さん(41)をはじめ、龍谷大の学生ボランティア団体「トワイライトホーム」や子育て支援を手がける市内のNPO法人が連携して活動に当たっている。

「貧困の連鎖」をどう防ぐか


 経済協力開発機構(OECD)は、その国や地域の平均的な所得の半分を下回る世帯を「相対的貧困家庭」と規定。これに基づき、厚生労働省が実施した調査では、相対的貧困家庭で暮らす子供の比率「子供の貧困率」は平成24年で16・3%と、過去最悪を記録した。

 子供の6人に1人が、相対的貧困家庭で暮らしている計算。その多くが、1人で夕食を取ったり、必要な栄養が摂取できていなかったりしている。さらに、そうした状況下の子供は、学校の勉強についていけず、それが原因で「いじめ」に遭うケースも多く、「子供の貧困」が深刻な社会問題となっている。

 そうした子供たちが大人になっても、一定の収入が得られる職に就けず、その家庭も相対的貧困となる「貧困の連鎖」も生じている。この連鎖をどうやって断ち切るかが、行政やコミュニティーなどに課せられた課題だ。

反省会で次回につなげる


 トワイライトステイの活動時間は、午後5~9時。夕食の買い出しや調理などを学生や子供たちが分担しておこなったり、一緒に勉強やトランプをしたりして家庭的な雰囲気の中で一時を過ごしている。

 子供たちが帰ったあと、学生たちやNPOのメンバーらは反省会を開く。子供たちについて、その日の様子や以前と比べた変化などの情報を共有。次回の活動時にその子供とどう接するかなどについて協議しておく。

 メンバーの一人、同大学社会学部2年の長谷川大介さん(20)は「活動に参加するまで『子供の貧困』という問題を知らなかった。取り組みを続けることで、この問題の存在を多くの人に知らせたい」と話す。

 また、同学部2年の長野康平さん(20)は「子供の気持ちを大人が理解してやれる場として価値がある」と活動の意義を強調。子供たちは参加を重ねるごとに心を開いていき、家庭の悩みや将来への不安などを学生たちに口にするようになったという。

「子供が子供らしくいることができる時間を」


 この活動に、県内約200の社会福祉法人などで構成する「滋賀の縁(えにし)創造実践センター」(草津市)が着目。せっかく始まった試みを県内全域に広げようと、手始めに協力が得られた特別養護老人ホームで来月、不登校児を対象にした居場所づくりを始める。

 一方、課題もある。トワイライトステイの活動は、今年4月に施行される「生活困窮者自立支援法」のモデル事業だったため、今年度の活動資金は全額国の補助で賄えた。しかし、来年度はこの補助がなくなる。

 また、学生メンバー約20人のうち半数は4年で、今年度に卒業してしまうため、新たな担い手の確保が急務だ。

 活動の立ち上げに携わった幸重さんは「子供が子供らしくいられる時間をつくってあげたい。地域の中で育てた子供が元気になれば、地域にも活気が生まれるはず」と力を込める。

 東京都豊島区で同じような取り組みに携わる「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」の栗林知絵子理事長は「子供たちと年齢の近い学生が活動に参加するのは重要。活動に学生が入ることで、問題を考え社会を変えるきっかけになるはずだ」とエールを送っている。(小川勝也)