安倍内閣・自民党の支持層の縮小が進んでいる。愛知県知事選での民主党の追い上げや宮崎県知事選での東国原(ひがしこくばる)英夫(そのまんま東)知事の当選、内閣支持率の低下は、政権の行方を左右する今夏の参院選を控えた安倍晋三首相に対する、国民の「今のままではいけない」との警告だ。これを放置すれば、国民の政権イメージが、支持率低下にあえいだ「小泉前」、つまり森喜朗内閣当時と似たものになる恐れがある。反転攻勢には、安倍首相自身が「闘志ある政治家」であることを、政治行動で明瞭(めいりよう)に示すしか手立てはないのではないか。

「国民の信」の強化を

 安倍首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」という政治目標を掲げている。憲法改正、教育再生、集団的自衛権の見直しなどは戦後民主主義の「常識」にどっぷり浸(つ)かった従来型政治家には期待できない野心的なテーマばかりで、首相の政治的な使命感は相当なものだ。だが、これらについて、いくら語り、取り組んでも、首相の闘志は国民に伝わっていない。各種の世論調査を見れば、国民が安倍首相をたのもしいリーダーと見ていないことが分かる。
 支持率低下は郵政民営化反対派の自民党復党が直接のきっかけであり、そもそも理由は複合的なものだ。しかし、根本原因は、靖国神社参拝問題などで、「安倍カラー」発揮を抑制し、国民の首相への信頼感(国民の信)を弱めたことであると思われる。靖国参拝での曖昧(あいまい)戦術や歴史問題への対応は、首相側にいかに理屈があっても、問題に正面から向かい合うことを避けた-との印象を残した。
 「国民の信」が強固なら、郵政反対派復党は保守政治を実現するために必要だ、との首相の問題意識を、国民は受け入れていただろう。小泉純一郎前首相は抵抗勢力にさまざまな妥協をしたが、郵政民営化や靖国神社参拝などで「ぶれない」「逃げない」「信念を曲げない」という印象を国民に持たせることに成功し、長く求心力を保った。
 参院選までは安全運転で、参院選後に本当にやりたい政治を行う-という心づもりを首相が持っているなら、危ういやり方ではないだろうか。

堂々と靖国参拝を

 首相は、国民の「安倍晋三という人間」への印象を改めさせるべきだ。これはもはや「正攻法で実績を残す」(首相)だけでは難しく、果断に富む政治行動で従来の印象をひっくり返さねばならない。まず、中国の温家宝首相の来日直後の時期であっても、4月21~23日の春季例大祭の期間に、靖国神社へ堂々と参拝することをためらうべきではない。参拝は国家の独立と永続のためにこそ必要な儀礼だが、首相自身の活路を開くことにもなる。内政干渉を排した戦没者慰霊の重要性を理解しない人々や、中国、韓国は反発するだろうが、小泉前首相は政権を維持したではないか。
 北朝鮮問題も試金石となる。6カ国協議の見極めが必要だが、たとえわずかであれ、核爆弾など大量破壊兵器の保有を北朝鮮に対して黙認することになれば、日本国民の安全は確保できない。米国が対北妥協の誘惑にかられた時には、首相は危うい安全保障環境を国民に正直に説き、北の大量破壊兵器と弾道ミサイルの全廃、拉致問題解決を目指し、米国を含む関係国と交渉しなければならない。
 安倍首相の信念と国益に基づく、摩擦を恐れない行動をみたとき、「国民の信」は盤石になるだろう。
(政治部 榊原智)