4月22日付の産経新聞政治面を開くと、元首相の村山富市、鳩山由紀夫両氏が並んで講演している写真が目に飛び込んできた。後者についてはもう相手にしても仕方がないので触れないが、村山氏の発言は看過できないのでしつこく書く。

 村山氏は、日本の「植民地支配」と「侵略」に「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明した平成7年8月15日の村山談話について、こう述べた。

 「安倍晋三首相の国会答弁は一貫していない。質問がいろいろあると、『侵略という言葉は国際的な定義はない』とかはぐらかす」

 はて「はぐらかす」とは何を指しているのか。4月1日の参院予算委員会で、岸田文雄外相が7年10月の村山首相(当時)の答弁をこう紹介している。

 「村山首相ご自身が『侵略という言葉の解釈にもいろいろな意見があるから、固定してこれが侵略だといった定義はないのではないか』と答弁している」

 この件は以前も当欄で指摘した点だが、自身が述べたことを後の首相が踏襲したら「けしからん」というのは、わけが分からない。また、村山氏は講演でこんな自賛もしていた。
東京都文京区の鳩山会館で第2回「さとやま・草莽の会」が開かれ、村山富市・元首相(手前)や鳩山由紀夫元首相らが70年談話やクリミア問題などを語った=4月21日午後、東京都文京区の鳩山会館(小野淳一撮影)
 「村山談話が出てから今日まで、歴史問題で日韓・日中関係がいろいろガタガタすることはなかった」

 これも明確に事実に反する。村山談話発表から3週間もたたない7年9月3日、中国の江沢民国家主席(当時)は演説で、次のように強調した。

 「ここ数年、日本では侵略の歴史を否定し、侵略戦争と植民地支配を美化しようとする論調がしばしば出ている。日本は真剣に歴史の教訓をくみ取り、侵略の罪を深く悔い改めてこそ、アジアの人民と世界の理解と信頼が得られる」

 この言葉から、村山談話による何かしらの効果が読み取れるだろうか。この年11月、江氏と韓国の金泳三大統領(当時)がソウルで会談し、共同記者会見を開いた際には、金氏は歴史問題に関してこう言い放った。

 「この際、(日本の)態度を必ず改めさせる」

 韓国は、中国との間にも朝鮮戦争の際の中国軍の大量介入など清算されていない歴史問題があるにもかかわらず、中国を表立って批判しようとはしない。

中韓に利用された

 
 いずれにしろ村山談話の発表後、日中・日韓間の歴史問題が収まったという客観的事実は見当たらない。日本のメディアが政治家の歴史をめぐる発言を問題視して中韓両国にご注進し、その結果、国際問題化するというパターンは現在まで何も変わっていない。

 むしろ、村山談話は中韓による対日要求の根拠、外交カードとして利用されている。韓国にすり寄り、根拠もなく慰安婦募集の強制性を認めた5年8月の河野洋平官房長官談話もそうで、「性奴隷の国、日本」という誤ったイメージの拡散に使われる始末だ。

 両談話により、中韓との関係改善が進んだとの見方はごく短期間のことしか見ていないか、あるいは幻想だったのではないか。

 「歴史問題については政治家は謙虚でなければならず、歴史家や専門家に任せるべきだと考えている」

 安倍首相は4月1日の参院予算委でこう述べた。一方、自身の社会党的で特殊、偏狭な政治信条を談話に反映させた村山氏も、宮沢喜一内閣の総辞職(河野談話発表の翌日)を前に政治決着を焦って事実関係をおろそかにした河野氏も、少なくとも歴史に謙虚ではない。(政治部編集委員・阿比留瑠比)


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