松木國俊(元豊田通商ソウル事務所駐在員)

「遊びに来て」が災いのもと


 私は一九七二年に学生として初めて韓国に行きました。クルマといえばトヨタのコロナばかりが走っているころで、裸電球が灯ったりし、初めてなのに、どこか懐かしい気がしました。韓国語は欧米の言語と違って語順が日本語と同じだし、顔も日本人と似ている。けれど、表面はそっくりでも中味は大違いです。

 大学卒業後豊田通商に入社。一九八〇年にソウルに駐在しましたが、日韓の文化の違いに驚かされました。

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日本が当時の金額で5億円の巨費を投じて昭和12年、鴨緑江に建設した水豊ダム。 現在は中朝国境に位置し、いまも北朝鮮の貴重なエネルギー源となっている
 日本でも「忠孝の倫理」とか言いますが、韓国では忠より孝が大事。会社の大事なお客が来るときに、韓国人のパートナーが休んでしまう。「お父さんの誕生日だから」と言うのです。仕事のあとで駆けつければいいじゃないかと言うと、「そんなことをしたら周りから白い目で見られる」。考え方が日本とは根本的に違う。言葉の意味も違う。例えば「約束」。ある程度できそうだという見込みがあれば「できる」と約束してしまい、状況が変わると守れなくてもしかたがないという考え方です。「予定」も違う。「明日お客が空港に何時に着く予定だから迎えを頼む」と言っておいたのに、予定の時間に会社にいるので焦って事情を聞くと、「あれは予定でしょ。決定するのを待っていました」との答えがかえってきました。

 人と人の間の距離感も違います。韓国人は親しくなってある線を越えると、その内側の相手は身内ということになる。身内ならお金も貸すし、いつ家に遊びに行ってもいい。相手の都合なんかおかまいなしです。私の日本人の友だちが韓国人の女性と結婚しましたが、当時夜間外出禁止令があって、夜、家に帰れなくなった親戚がしょっちゅう泊まりに来る。プライバシーなんかあったものじゃなくて閉口していました。

 ある日本人の夫婦が韓国のアパートに入居したとき、エレベーターで隣家の人に会ったので「いつでも遊びに来て」と挨拶したら、その晩に家族五人でやって来て、食事中だから待ってと言ってもかまわず上がりこみ、テレビを勝手につけたり冷蔵庫を開けて飲み物を出したりで、嫁さんが「こんなところにはいられない。日本に帰る」と叫んだなどということもありました。

 ジャーナリストの室谷克実さんは慶応大学時代の二年先輩ですが、その室谷さんに聞いた話です。──ソウルのホテルの鮨カウンターで食べていたら、ウェイトレスが「(そのホテルの)社長様がいらっしゃいましたので席を譲ってください」と言う。こっちが客だよ、と窘めても、「私は社長様から給料をもらっていますから」と平気な顔だったそうです。日本と逆で、外部の人に話すときに身内のものに敬語をつけるんです。「父上様は今いらっしゃいません」「課長様は今いらっしゃいません」という調子です。一番大切な身内にすら敬語を使わない日本人は極めて不道徳となるのです。

身分格差


 韓国人は大げさな表現が好きで、すぐ話がふくらんでしまう。造船輸出が急激に増えた時期にはドックで修理したものまで新造船に数えて統計をふくらませたと聞いたことがあり、実態とは違った数字だったようです。韓国としてはライバル日本に負けないよう精一杯背伸びしたのかもしれません。規模と利益で日本企業を圧倒する韓国のサムスンを模範企業のように言う論調がありますけれど、まだ問題はあるようです。

 「サムスン電子は、技術パクリを常とし、世界のさまざまな家電・半導体メーカーから特許権侵害で提訴されている企業です。2011年4月には、アップル社がついにスマートフォンに関する特許権侵害でサムスン電子を告発しました。(略)サムスン電子はアップルに半導体や液晶を納入している、いわばお得意先。そこの製品をパクったのですから、その度胸は賞賛ものです。(略)社員は使い捨てで下請け泣かせ、オーナーの一族は金銭スキャンダルに塗れ、オーナー自身、脱税で有罪判決を受けました。売上高は世界的規模でも、韓国型悪辣・不道徳企業の代表です」〈室谷克実・三橋貴明『韓国人がタブーにする韓国経済の真実』(PHP研究所刊)より〉

 サムスンは、以前は日本人を雇って、役員会も時々日本語でやっていたとのことです。研究開発費も、他社から図面やノウハウを買うのにかなり使われているようです。韓国では身分格差が大きくて、サムスン電子のオーナー会長は二〇一一年春、株の配当金だけで百一億円を受け取ったが、勤労者の四五%は二〇一〇年中の平均月収が十五万円以下だったそうです。企業はオーナー一族のものという意識が強く、企業トップが公私混同して背任罪に問われるケースもよくあります。一人が出世すると一族が頼って来て、出世した当人もみんなを養う義務があると考える。一族の者だから金を貸せと突然言って来て、貸さないと門前で「一族なのに貸さないのを皆さんどう思うか」と騒ぎ立てる。大統領ほどの権力者となるとこれにたかろうとする人が後を絶ちません。某大統領が「聞いたこともない親戚が三倍増えた」と嘆いたことがありました。だから辞職した歴代大統領がみんな汚職で追及されることになるのです。