自民、公明両党は27日、憲法改正手続きを定める国民投票法案の修正案を国会へ提出した。与党は、衆院憲法調査特別委員会(中山太郎委員長)で審議を進め、民主党の賛否にかかわらず、4月13日にも衆院本会議で可決し参院へ送付する方針だ。安倍晋三首相が目指す今通常国会(6月23日まで)での同法成立が見えてきた。だが、修正案は国会提出直前の段階で手直しが図られたものの、なお「改正阻止的な要素」(自民党中堅)もある。安倍首相や自民党が本気で憲法改正の実現を目指すなら、国民投票法の運用を含め、憲法問題へ細心の注意を払っていく必要がある。


安倍系議員動く

 衆院憲法特別委の与党理事らがまとめていた与党修正案(当初修正案)に「公正な国民投票運動にならないし、改正阻止的な性格が強い」として疑問の声をあげたのが、古屋圭司、萩生田光一、稲田朋美氏ら安倍首相に近い自民党議員、ベテランの深谷隆司元総務会長のほか、百地章日本大学教授(憲法学)ら有識者だった。
 26日の自民党国民投票法特命委員会でも「自治労100万、日教組50万が勝手に運動する内容は認められない」(参院議員)や、「(民主党や与党理事は)『公選法は人を選ぶもので、政策を選ぶのではないから公務員の政治活動を制限するが、国民投票は人を選ばないから制限しなくていい』と言うが、今の選挙も人より政策を選ぶマニフェスト選挙だ。国民投票も(選挙と同じく公務員の政治活動を制限し)公平性を担保すべきだ」(古屋氏)と、当初修正案への批判が相次いだ。
 古屋氏らは、衆院憲法特委の中山委員長や保岡興治自民党筆頭理事、船田元理事らのこれまでの努力には敬意を表しつつ、憲法改正は「最も高度な政治行為」なのだから、中立性が求められる公務員が政治闘争を行うことは公正ではない-との立場をとったといえる。

今後の展開が重要

 こうした批判を受け、「私は修正案をまとめるべき立場だが、個人的には若い人の意見がもっともだと思う」(参院幹部)との声まで漏れ、船田理事らが奔走し、自公両党は当初修正案の手直しを行った。
 この結果、メディア規制が復活。放送事業者に政治的公平を求める放送法第3条を援用することになった。公務員・教育者の地位利用には、刑事創設罰は見送ったが、行政罰を与えることがはっきりした。
 最も論議された「公務員の政治的行為の制限の適用除外」問題は、適用除外条項が本則で削除された。だが、公明党の要求に沿って、付則で公務員による賛否の勧誘や意見表明を容認する方向で公務員法などの改正を検討することを規定する玉虫色の決着となった。
 勧誘や意見の表明がどうなるかが問題だ。今後の審議や政党間協議で、機関誌やビラの作成、ポスターの貼り付け、戸別訪問などまで容認されれば、公務員の政治的活動を認めることに等しい。再修正の意義は大きく損なわれることになる。
 「修正案」を通じて「民主党や公明党が、憲法改正に決して積極的でないことが、改めて浮き彫り」(自民党若手)になった。また、自民党国会議員は衆参で400人以上いるが、26日の党国民投票特命委員会に出席した一般議員は20人ほど。一部議員と特別委理事らは極めて熱心だが、憲法改正の実現度を左右する法案の中身への党内の関心は、幹部も含め高くない。
 安倍首相が党内の憲法改正機運を高める努力をし、もっと憲法問題に目を配らなければ改正実現は難しいのではないか。
(政治部 榊原智)