夏の参院選に向け与党との対決姿勢を強める民主党は10日、憲法改正手続きを定める国民投票法案の民主党修正案を衆議院へ提出した。一方、自民、公明両党は12日の衆院憲法調査特別委員会で与党修正案を採決、13日の本会議で衆院通過を図る方針だ。これにより、自公民3党の衆院憲法調査特別委理事ら実務担当者が進めてきた「自公民協調路線」は破(は)綻(たん)することになった。憲法改正を目指す安倍晋三首相が、この事態をチャンスととらえられるかどうかがポイントだ。

民主の不思議な反発

 民主党の枝野幸男憲法調査会長らは、民主党の協力なしに国会で憲法改正に必要な3分の2以上の勢力形成はできないとし国民投票法案でも自公民3党が協調することを唱えてきた。
 与党側の中山太郎衆院憲法調査特別委員長らもこれを受け入れ委員会を運営してきた。自民党が保守色を抑えた新憲法草案を作ったのも、民主、公明両党に配慮した結果だ。
 しかし、国民投票法案の審議が最終段階を迎えた今年、自公民路線はほころびを見せた。
 民主党側は、行政府の長である安倍首相が国民投票法案の成立時期に再三言及したことに不快感を示し、首相が1月に、憲法改正を今夏の参院選の争点とする考えを表明したことを「首相は国民投票法案を政局(政争)の具にしている」(枝野氏)と非難しはじめたのだ。
 (1)国会で自民党議員の疑惑を追及しても、自民党の歴代首相は行政府の長の立場を利用して3権分立を楯に答弁を避けてきた。それなのに、立法府が取り仕切るべき憲法改正に関する法案に口出しするのはおかしい(2)憲法改正の手続き法案なのだから、政争の具とすべきではない-という論法だ。
 だが、国民投票法案は議員立法であるものの、内閣にも憲法改正原案の国会提案権があるというのが政府見解だ。民主党が、内閣をことさら排斥する憲法改正を想定するなら少々偏った発想ではなかろうか。
 また、最も高度な政治行為である憲法改正を国政選の争点にするのは当然だ。今夏選ばれる参院議員の任期6年の間に、憲法改正案が審議される可能性がある以上、国民は各政党と候補のスタンスを知る権利がある。

政界再編も視野に

 民主党内の改憲派議員らも情けない。民主党修正案は、憲法改正案以外の国政の重要課題も投票対象とする「一般的国民投票」を盛り込んだ。これには「間接民主制を定めた憲法に触れる」(若手)と批判を漏らす改憲派が存在する。しかし、9日の同党憲法調査会総会で熱く議論を戦わせる姿はなかった。
 小沢一郎民主党代表は3月、「(国民投票法案を)急ぐ理由はない。当面の急ぐべき課題は国民生活に直接関連ある問題ではないか」と語ったように、改憲の熱意を失ったかに見える。民主党代表が将来交代しても、憲法改正に冷淡なリベラル派が多い同党で、積極的な改憲派が主導する日がくるだろうか。
 与党は参院を見れば3分の2にはほど遠い勢力しかない。しかし、このような民主党との協調ばかり追求しても実のある憲法改正が実現するのか。憲法改正には政界再編というドラマが必要ではないだろうか。
 国民投票法案は公布の3年後に施行という「改憲凍結3年」の性格を持つ。安倍首相はこれを逆手にとればいい。この間、他党に気兼ねせず、保守政党らしい改憲論議を進めたらどうか。国民に憲法改正を説得する近道となるからだ。
(政治部 榊原智)