河合雅司・産経新聞論説委員

 年間出生数100万人割れが目前だ。厚生労働省がこのほど発表した人口動態統計によれば、昨年誕生した子供は102万9800人で過去最少を更新した。前年比7431人の減少である。政府は「50年後に1億人程度」の維持を目標に掲げ、大胆な少子化対策に乗り出す構えだ。目標値に対しては批判も強いが、官僚たちの意識を変える効果も期待できる。もちろん、政府は女性への「圧力」と受け止められないよう十分配慮する必要がある。

 だが、一律の政策展開では効果は薄い。出産年齢は個々に異なる。何人目の子供を産むかによっても必要となる支援内容は違ってくる。まずは、出産の現状を正確に把握しなければならない。
“駆け込み出産”増加
 昨年の出生を母親の年齢別に分析してみると、2つの特徴が浮かび上がる。
 第1は、前年に比べ35歳以上の出産数が伸びる一方で、20代や30代前半は軒並み減っていることだ。

 晩産傾向はかねて指摘されてきたが、いまや35~39歳の出生数は22万9736人で全体の2割強を占める。40歳以上の4万8000人弱も含めれば、実に4人に1人が30代後半以降の母親から生まれた計算となる。

 団塊ジュニアを中心とした“駆け込み出産”が続いているのだ。もし、こうした30代後半以降による押し上げ効果がなかったら、昨年の年間出生数はもっと下落していたということである。

 しかし、団塊ジュニアはいずれ出産期を外れ、“駆け込み出産”がいつまでも続くわけではない。それは、子供を産める年齢の女性数が急速に減ることでもある。「次なる世代」である現在の30代前半以下の出生数がこのまま下落傾向をたどれば、少子化は一挙に加速する。
40代の4割は初産
 “駆け込み出産”を詳しく見ると、第2の特徴が見えてくる。35歳以上では、第2子以降を産んでいる人も多いが、初産も目立つのだ。

 35~39歳が出産した子供の35%が第1子だった。40歳以上の場合、第1子が出生順位別のトップで、この年代の出産の約4割を占めた。

 昨年、第1子として生まれた48万1409人の内訳を見ると晩産の実態がより明確になる。35~39歳が約8万人、40歳以上は約1万8000人産んでおり、第1子の5人に1人が35歳以上のお母さんから生まれたこととなる。背景にあるのは不妊治療の進歩だ。

 だが、30代後半以降の初産では、なかなか「2人目」とはならないのが現実だ。厚生労働白書によれば、どの結婚年齢においても結婚後1~2年で第1子を産んでいるが、35歳未満で結婚した妻が2~3年間隔で第2子、第3子を出産するのに対し、35歳以上ではその間隔が狭くなる。

 40代で第1子の場合、肉体的な問題もさることながら、子供が成人するまでに親のほうが定年退職を迎えないか考慮しなくてはならないだろう。2人目、3人目を諦めるケースも少なくない。
晩産の歯止めが条件
 このまま晩産傾向が続けば一人っ子がさらに増え、出生数減に歯止めをかけられない。「50年後に1億人」の実現は、晩婚・晩産の流れを断ち切ることが条件となる。

 政府は3人目以降の子供への傾斜支援を検討している。「2人目以降を欲しい」と思いながら断念している人たちを経済面などからサポートするということだろう。2つの特徴を踏まえれば、現在の30代前半以下を、より重点的に支援するのが効果的ということになる。

 結婚や出産は個々の意思に基づくものであり、国家が妊娠・出産を強要するものではない。しかし、若くして結婚や出産を考えながら、できないでいる人たちもいる。こうした人たちの結婚や出産の阻害要因を取り除くことが急がれる。

 取り組むべきは、男性を含めこの世代の収入を安定させることだ。15~39歳が対象の厚労省の「若者の意識に関する調査」では「経済的余裕がない」が男性の未婚理由の上位に来た。子供を増やせない理由も、20~30代では「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が突出している。

 昨年の第1子出産時の母親の平均年齢は30.4歳だが、同調査では4割の女性が「初産は25~30歳未満ですべきだ」と答えている。20代後半までに結婚、出産したい人の希望がかなうよう社会環境を整えることが、「50年後に1億人」のポイントになる。