河合雅司(産経新聞論説委員)

大阪圏は軒並み人口減


 総務省の推計によると昨年10月1日時点の総人口は前年より21万5千人減った。2012年の減少幅は28万4千人だから若干の縮小である。

 ところが、出生数と死亡数の差である「自然増減」で比較すると、昨年の減少幅は25万1千人だ。12年の20万5千人を上回り過去最大の落ち込みとなった。

 からくりは外国人の出入国だ。12年は東日本大震災の影響もあり大きく減ったが、昨年は増加したため人口の減少幅を穴埋めしたのだ。背景にあるのは、日本経済の回復と東京五輪への期待だろう。

 一方、東京一極集中が続いている。増加率は0・68%の東京都が全国1位で、増加率が前年を上回ったのは東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)だけだった。働き口を求める人が増えたとみられている。

 反対に「地盤沈下」が鮮明になったのが大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良の4府県)で、自然減だけでなく人口も流出するダブルパンチに見舞われた。

 今回、来日者がどの自治体に流入したかは分からないが、東京都の場合には日本人が自然減となる一方、外国人は自然増だ。相当数を東京圏が集めているとみられる。

やがて破綻する東京圏


 東京圏への流入は今に始まったことではない。地方から若者を集めることで日本経済を牽引(けんいん)してきた。大阪や名古屋といった大都市圏に本拠を置く企業が本社移転したケースも珍しくない。

 だが、人口激減局面においては、「東京集中モデル」は通用しない。人を集めようにも地方に人がいなくなるからだ。東京圏は食料やエネルギーの供給も地方に頼っており、地方が機能しなくなれば東京圏自体が破綻する。

 そうでなくとも東京圏は今後急速に高齢者数が増え、「経済効率」一本槍(やり)とはいかない。一極集中を解消しなければ、やがて日本全体が行き詰まるということだ。

 解消に向けて何をすればよいのか。まずは根源的理由に迫ることだ。日本経済の発展を振り返れば、「東京集中モデル」はここまで成功だったといえよう。

 高度経済成長は、先進国が開発した技術を模倣し、機械化と安い労働力で大量生産して価格競争に勝つことで達成してきた。

 それは同時に、全国から有能な人材を集めた東京圏が企画開発や研究といった生産性の高い仕事を行い、地方には部品生産などを任せるという分業で成り立ってきた。

 必然的に、地方は低賃金の単純労働が中心となり、高度な知識やスキルを身につけた人の働く場は少なくなってきた。これが東京一極集中を加速させた要因である。

 この構造にメスを入れることなく、「地方に雇用を」と叫んでも難しい。

価格競争モデルを脱却


 ならば、こうした価格競争型モデルを捨てればよい。勤労世代が激減していく日本が、若く安い労働力を豊富に持つアジア諸国と競争を続けても勝ち目はないだろう。

 女性や高齢者、外国人の活用で「安い労働力」を確保しようとの企業努力にも限界はある。人口が減り、高齢者が増えることを前提としたビジネスモデルへの転換こそ急ぐべきなのだ。

 東京一極集中も解消し、人口減少時代にも即した新モデルがある。「匠(たくみ)の技」を活用した高付加価値の製品作りだ。日本の地方企業や伝統工芸には世界に通用する「匠の技」がいくつもある。

 「匠の技」だけで海外に売ることは難しいかもしれないが、最先端技術と組み合わすことで「ジャパン・オリジナル」のブランド品を作ることは可能なはずだ。新興国のモノマネを許さないよう知的財産として保護し、「世界一企業」を目指すのである。

 手作り作品のように少量を高く売るのだから、開発段階から輸出先国と連携し、買い手が好む色やデザインを十分把握することが重要になる。製造規模を大きくする必要がないということは、まさに実力のある地方企業向きのビジネスモデルといえよう。

 これを一企業の成功に終わらせず、地域の中で製品の企画開発から出荷まですべて行う。「地域の特色」として世界にアピールすれば関連産業も誕生し、スキルの高い人たちが働きたくなる新たな雇用も生まれるだろう。

 地方発の「世界ナンバーワン企業」がこれからの日本を引っ張る。これこそ、地方創生の醍醐味(だいごみ)である。