勝村久司(元中央社会保険医療協議会委員)

事前にNHKニュースが危険性を報じていた


 9月27日の噴火で多くの死者を出した御嶽山。

 気象庁は、平成20年3月31日から、この御嶽山に「噴火警戒レベル」を導入していた。レベルは1から5まであり、平常がレベル1、2と3は「火口周辺警報」、4と5が「噴火警報」となっている。

 導入以来6年以上にわたり、警戒レベルは1のままで、気象庁は毎月、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しており、噴火の兆候は認められません」との報告を出し続けてきた。

 しかし、今年9月11日に、月例報告とは別に、周辺の自治体等に対して下記の速報を出していたのである。

噴火から1カ月近くが経ち、噴火当時と変わらず頂上付近から噴煙を上げる御嶽山=2014年10月26日(早坂洋祐撮影)
 「御嶽山では剣ヶ峰山頂付近で火山性地震が増加しています。火山性地震は昨日(10日)昼頃から増加しています。振幅はいずれも小さく、火山性微動は発生していません。(中略)火山性地震の日回数が50回を超えたのは、2007年1月25日以来です」

 続けて、翌日の9月12日にも、気象庁は下記の速報を出した。

 「御嶽山では、9月10日昼頃から剣ヶ峰山頂付近の火山性地震の回数が増加しており、昨日(11日)は85回発生しました。火山性地震の日回数が80回を超えたのは、2007年1月17日以来です。地震の振幅はいずれも小さく、火山性微動は発生していません」

 そして、これを受けて、同日、NHKもローカルニュースで報じた。

 「岐阜県と長野県の境にある御嶽山で、10日昼ごろから火山性の地震が増えていて気象庁は火口付近では火山灰などの噴出に注意するよう呼びかけています。気象庁の観測によりますと岐阜県と長野県の境にある御嶽山では、10日昼ごろから山頂付近を震源とする火山性の地震が増え始め、10日は51回、11日は午後3時までに、71回観測されました。 1日の地震の回数が50回を超えたのはごく小規模な噴火があった平成19年1月以来です。 地殻変動に特段の変化は見られないということです。(後略)」

警戒レベル2は火口周辺半径1kmの規制


 さらに、9月16日にも、気象庁は速報を出している。

 「御嶽山では、9月10日、11日に剣ヶ峰山頂付近の火山性地震が50回を超え、地震回数の多い状態となっていました。12日以降はやや多い状態で推移しています。地震の振幅はいずれも小さく、火山性微動は発生していません。噴煙の状況および地殻変動に特段の変化は見られていません。(中略)御嶽山では、2007年にごく小規模な噴火が発生した79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので、引き続き警戒してください。地震活動が活発になっていることから、火山活動の推移に注意してください。今後、火山活動の状況に変化があった場合には、随時お知らせします」

 つまり、9月10日、11日の「地震回数の多い状態」の後も、「地震活動のやや多い状態」は27日の噴火までずっと続いていたことがわかる。

 この経緯を見れば、なぜ、気象庁は、地震活動が始まった10日の段階から、警戒レベルを2に上げなかったのか、と感じる人が多くいるだろう。

 9月10日までと、それ以降では、明らかに御嶽山の状況は違っている。それまでがレベル1ならば、それ以降は、レベル2にしておけばわかりやすかった。にもかかわらず、警戒レベルがずっと1のままでは、NHKニュースを見た人でも、「NHKは心配しすぎで結局、大丈夫だったんだ」と思ってしまうだろうし、まして、NHKニュースを見ていなかった人には、状況の変化は伝わらない。

 実際、警戒レベル2は、「火口周辺規制」で、概ね火口周辺の半径1km内への立ち入りを規制するものである。そうしておけば、多くの命が助かっていたのではないか、と思ってしまうのも無理はない。

 ではなぜ、気象庁は、警戒レベルを、ずっと1の「平常」のままにしていたのだろうか。