仲新城誠(八重山日報編集長)

沖縄「植民地支配の停止」を外務省に要請した独立論者


 沖縄では、県知事選や衆院選で米軍普天間飛行場の県内移設に反対する勢力が勝利した余勢を駆ってか、「沖縄独立論」を訴える研究者やマスコミの動きが活発化している。沖縄がかつて「琉球王国」だったことは歴史的事実だが、現在の独立論は、県民の民族的願望などとは全く関係ない。米軍基地撤去に向けた政治的カードとして「独立」をちらつかせる、いわば火遊びであり、圧倒的多数の住民の思いとはかけ離れている。しかし、沖縄のオピニオンリーダーと呼ばれる層に独立論は一定程度、浸透している。尖閣諸島防衛が一大関心事である私たち石垣市民にとっては、大きな不安材料だ。

 「沖縄人(ウチナーンチュ)のアイデンティティ」「自己決定権」―。この二つは、独立論者と米軍基地反対論者が決まって使う「活動家用語」であり、沖縄マスコミや一部の政治家によって、県民なら誰でも、耳にタコができるほど聞かされている言葉である。

 私たちが迷惑に感じるのは、彼らが騒げば騒ぐほど「尖閣は日本固有の領土であり、石垣市の行政区域である」という大前提が崩れてしまうためだ。沖縄が日本でないなら、尖閣も日本ではなくなってしまう。

 「琉球民族独立総合学会」という研究者グループの青写真は、沖縄の各島々が州となって参加する「琉球連邦共和国」の実現だ。安全保障面では非武装中立を目指している。
 2月3日には学会の松島泰勝共同代表らが外務省沖縄事務所を訪れ「日本が琉球国を武力で強制併合したのは明らかな国際法違反だ」と抗議。謝罪と「植民地支配の即時停止」を要求した。対応した外務省職員は絶句したことだろう。

 県民からすれば、趣味が昂じたような研究者グループの動きなど、勝手にどうぞというところだ。しかし、これがマスコミに大々的に報道されることで、社会性を帯びてくる。活動が一定の民意を背景にしているような誤解が、特に本土の人たちの間で生まれてしまうのである。

独立論報道に熱心な「琉球新報」


 県紙「琉球新報」2月8日付は、琉球王国が1858年、フランスと交わした琉仏修好条約のフランス側の原本が発見された、と1面トップで報じた。「『琉球は独立国』認識」「自己決定権 議論に影響」といった大見出しが紙面上で躍った。

 同紙は別の面でもこの話題を大展開し「『琉球人の主張は正当』 主権認める動かぬ証拠」という関連記事、「仏、琉球併合に同情」という識者評論まで掲載。ニュースが枯渇していたのかも知れないが、琉球民族独立総合学会の会員でもない一般の県民が朝から、1面トップでこのような記事に接しなくてはならない意義はどこにあるのだろう。
中国海洋局の特設サイトに掲載されている「釣魚島の正面全景図」

 記事を執筆した同紙の編集委員は、沖縄独立をテーマにしたシンポジウムなどの場でたびたび登壇して発言している。いわば運動的な紙面づくりである。

 昨年のスコットランド独立騒動は、沖縄独立論を後方支援する同紙と「沖縄タイムス」の2つの県紙にとって、持論を展開する絶好の機会だった。昨年9月の住民投票を報じた際の見出しを拾うと「民主的手続き 模範」「沖縄の民意 反映に参考」「沖縄にも確実に影響」(沖縄タイムス)、「主権回復の事例に」(琉球新報)などと礼賛一色だ。

 県紙は2紙とも独立論に肯定的な報道をしているが、特にプッシュしている感が強いのは琉球新報である。「主権を問う」をテーマにした100回の長期連載を昨年5月から行い、独立論の正当性をこれでもかとアピールして見せた。圧巻は連載を終えるに当たり、1ページをまるごと使った2月11日付の紙面。「琉球『国際法の主体』」「海外の独立派も沖縄に共鳴」などという見出しで、記者は「『率直に感じたのは、沖縄は独立を正当化できる歴史的要件や現状、経済的自立の可能性を十分持っている』ということだ」「安倍政権が現在のように、辺野古の新基地建設を強行すればするほど、沖縄の自己決定権要求は一層強まるだろう」などと記した。

 同紙の定義によると「自己決定権」とは「自らの運命に関わる中央政府の意思決定過程に参加できる権利で、それが著しく損なわれた場合、独立が主張できる」という。

 公安調査庁が1月に公表したレポート「内外情勢の回顧と展望」(2015年版)は、「琉球新報が『琉球処分は国際法上、不正』と題する日本人法学者の主張に関する記事を掲載した際には人民日報系紙、環球時報が反応し、関連記事を掲載する(2014年8月)など、中国側の関心は高く、今後の沖縄関連の中国の動きには警戒を要する」と指摘した。

 独立論と中国が水面下で結託しているとまでは短兵急に断言できないが、沖縄の政治家の言動や県紙の報道に、中国はほくそ笑んでいるはずだ。上記記述がある「回顧と展望」中のコラム《「琉球帰属未定論」の提起・拡大を狙う中国》は、中国共産党機関紙「人民日報」の海外版を含む報道のほか、「中国シンクタンクなどが琉球に関する学術会議を開催し、『琉球独立』を標榜する我が国の団体関係者らを招待した」(2014年5月)という動きも紹介している。

 公安のレポートが独立論に言及すること自体も異例だ。沖縄を狙う中国の動向を分析する上で、今や、独立論が無視できない存在として浮上してきたことを示している。

 それにしても、国外情勢報告の項にあるコラムでわざわざ琉球新報を名指しているのは、同紙は公安の情報収集あるいは監視対象となったという意味だろうか。