インターネットの匿名掲示板などでは、実話という触れ込みの「面白い話」が大量に出回っている。

 偶然の出会いから始まる感動の恋愛譚(たん)、嫌な相手をやり込める痛快武勇伝、嫁姑(しゅうとめ)の泥沼バトル…。話題を気軽に知人と共有できる各種SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及が進んだ近年は特に、真偽不明の“いい話”の拡散が急速かつ大規模に行われるようになった。

 だが、こうした書き込みをうのみにするのは少し待った方がいい。閲覧者の反応を引き出そうとする「ネット釣り師」が仕掛けた作り話かもしれないからだ。

 「釣り文書は、読者にとってクイズみたいなもの。何も考えず“いい話”として他人に広めるのでなく、本当かどうか判断しながら楽しむのが健全」

 そう語る著者は、表題に挙がる各種投稿サイトの書き込みや、折々の炎上事件を辛口に観察・紹介して月間300万ページビューを超える人気ブログ「Hagex-day.info」の管理人。日夜、ネットで釣りエピソードを追い求めてはや10年、熟練の「釣り師観察者」の立場から、文章構成や表現などを手がかりに釣りを見抜くテクニックを詳述する。

本当かどうか判断しながら楽しむ


著者の人気ブロガー、
Hagexさん
 釣り師は自分の創作で反応を得ること自体が目的だから、書き込みには人の心理を刺激するさまざまな“フック(釣り針)”を仕込む必要がある。だが、そのために文章上不自然な点も出てくる。「読んでモヤモヤする部分に、釣り師の意図が入っているのではないか。それを見つけていくのは、国語の問題を解くのに似た楽しさがある」

 釣りが疑われる有名例には、書籍化や映画化もされた『電車男』や『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』などもある。釣り師はある意味エンターテイナーであり、必ずしも全否定する必要はない。「“いい釣り”にだまされるのはOK」

 ただ、レベルの低い釣り文書に引っかかるようでは今のネット社会を生きていくのは危うい。東日本大震災後、ネットで有害なデマが乱れ飛んだことは記憶に新しい。「釣りを見破る基本を身につければ、デマをはじめすべてに通用する武器になる」。現代のメディアリテラシー教科書としても有用だ。(磨井慎吾)

Hagex(ハゲックス) 昭和51年、福岡県生まれ。マスコミ系企業勤務のかたわら、平成16年にネットウオッチ日記「Hagex-day.info」開設。
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