前職にあった時に、
 『フジテレビの視聴率の低下は「8チャンネル」というポジショニングが影響している』
と懸命に主張する編成マンがいて、筆者はずっと「バカだなぁ…このおっさん」と考えていた。「新聞のテレビ欄で端っこに行ってしまったからだ!」というのが主な主張だ。目線が端までいかないのだ、と。

 が、筆者は以下の2点の理由からその主張に同調したことはなかった。

・最近の若者はすでに新聞などはあまり見ていない。

 テレビの視聴率が「新聞のテレビ欄」だけで左右されるわけはない。多少の影響があることは否定しないが、そんなもので何年も連続で視聴率3冠をキープしていたテレビ局が、ここまで一気に視聴率が落ちる訳ないだろう、と。

・東海テレビさんとNHKの視聴率が説明つかない

 フジテレビの放送は中部地区では「東海テレビ」さんがネットしている。フジテレビが視聴率3冠をキープしている間、言うまでもなく東海テレビさんでも視聴率は絶好調だったわけだが…東海テレビさんは「1チャンネル」なのだ。つまり、新聞では端の端なのだ。
 同様のことは関東のNHKでも言える。ご存じのように朝の連ドラなどが絶好調のNHK。しかし、新聞のテレビ欄は端である。新聞の真ん中に来れば、視聴率が上がる、などというのは間違いであり、「面白いテレビを作れていない甘えでしかない」というのが、基本的な筆者の見方であったし、今でも前提部分としてはその考え方は変わっていない。

 しかし、筆者はこの3月末より、大阪のテレビ東京系準キー局である「テレビ大阪」にて、新たに夕方のニュース番組を立ち上げるにあたって、キャスターを務めさせてもらっている。

 今まで視聴習慣自体がなかった大阪の夕方の7チャンネルというステージに際し、視聴率的にもかなりの苦戦が予想されたし、そもそも苦戦するという前提で筆者だけでなくスタッフも取り組んでいるのだが…2週を終えて、現状だけを報告すると…

 平均の視聴率は…すでに2倍となっている。

 もちろん、これからもまだまだ試練は続くと思うが、元が低いとはいえ、アベレージで倍にするのはテレビの世界では容易ではない。業界の人間はみな知っていることだろうが、特に夕方のニュースなどは、「視聴習慣」というものがあり、それを変えることは簡単ではないのだ。
 もちろんスタッフの頑張りがほぼ全てなのだが、一体なぜこんなことになっているのか…?
 実は昨日付のスポニチの紙面をスタッフが送ってきてくれ、その紙面を見て少し驚いた。
 それがこちらである。
 これを見て頂いてお分かりだろうが、確かに…「7チャンネル」という意味合いがかなりよく分かるものとなっている。紙面全体のど真ん中を占め、間違いなく一番最初に目に飛び込んでくる。
 今まで「選択肢にもあがらなかった」だけの存在が、まず、「知ってもらう」という大事なプロセスを、ここまでいとも容易く可能としているのだ。

 そもそもこの春より、関西では「夕方のニュース戦争」と言われるのだが、夕方の枠を各局が大きく変えてきた。視聴率ナンバー1のMBSテレビの「ちちんぷいぷい」という情報番組に各局が対抗するためだ。
 各局が一気に変えてきたので、もとより情報誌などで取り上げられることが多かったのだが、そうか…その度にこうやって…「7チャンネル」というだけで、ど真ん中に持ってこられるのだ。

 確かに、この効果は少なくないとは言い切れない。筆者もスタートからこの2週の視聴率は少し意外なものであったので、多少の違和感を感じていたのだが、この大阪のスポニチさんの紙面を見て、少しだけその理由が理解できた。
 と、同時に、古巣であるフジテレビが、現在視聴率的に苦戦している原因の一端が見えたような気がする。

 前提だが、もちろん『面白い番組・魅力のある番組』を作ることが最低条件だし、そうでなければ、話は始まらない。それは確かだ。
 が、最初の選択肢に入るかどうかで言うと、そもそも「テレビに興味のある人」が目にする「テレビ情報誌」や「新聞のテレビ欄」などは、より目につきやすいものである方がいいことは当然である。
 ではどのような番組がテレビ情報誌などに取り上げられるのか…?

 そう。『新番組』である。

 ここに一つの原因があるように見える。
 フジテレビはこの4月にも、98年以来となる、大変な割合の番組改編を行った。が、これはこの4月の話だ。実はフジテレビは去年の10月も、去年の4月も、その前の10月も…次々と新しい話題番組を投入し、編成テーブルを次々と変えていっている。
 ライバルである日本テレビが去年4月に「全く改変をしない」という挑戦をして大成功したのと対極と言える。

 こうして、新番組を投入すると、その一時だけは話題になる。今回の筆者のニュース番組のように何らかの特集で取り上げられることは間違いない。が、その時に、毎回毎回…

 「8チャンネル」なので「紙面の端」に掲載されることとなる。

 新しい番組をスタートしても、テレビ朝日(5チャンネル)が紙面のど真ん中で取り上げられているにもかかわらず、その度に一番右端に掲載されることがほとんどだ。
 これでは、多額のお金を投入し、新番組をスタートしたとしても、その宣伝効果はかなり薄れている可能性があるのかもしれない。

 逆に、フジテレビで現在絶好調の番組がある。
 筆者も10年以上担当させてもらっていた朝の「とくダネ!」である。

 筆者がNYに赴任となり、筆者とともに番組の中心の一人として活躍していた天才的なリポーターである大村正樹さんが北海道の番組に異動し…とメインリポーター2人が一気に番組を離れて以来、一時期「とくダネ!」はその視聴率が2位…もしくは3位と低迷をしていた。この頃は、番組の打ち切り説が何度も局内でも出されている状態だった。

 しかし、「とくダネ!」は番組内容を一新し、小倉キャスターはそのままでそれ以外をほぼ別番組のように改編し、現在、朝8時台の視聴率競争で再び独壇場を築き上げている。あえて新しい番組にしないことによって、視聴習慣を損なわないまま、内容の改善を成功させたのだ。

 こうして考えると、この手法が一番上手なのが日本テレビであることは間違いない。

 「ダッシュ村」や「イッテQ」などは、もはや番組開始当初と比べると別番組の様相だし、「行列の出来る~」などにいたっては、もはや法律相談などはほとんどなくなってしまった。もはやあのタイトル、何の意味があるんだ?レベルである。
 それでも、今まで見てくれた視聴者のニーズにこたえた結果であり、固定客を離さないまま、いい方向に改善できているのが今の高視聴率につながっていることがよく分かる。

 フジテレビが「8チャンネル」なのは大切な局のアイデンティティであるし、そのままでもういいとは思うが、アピール効果や宣伝効果が以前と違ってかなり落ちていることは間違いのかも知れない。紙面に取り上げられるたびに「あの端っこに書かれてた番組」となってしまう可能性が否定できない。

 ここまで考えると、現在のフジテレビは新番組を立ち上げすぎなのかもしれない。今ある番組をしっかりとテコ入れして、改善していくことが出来れば、少しづつでも上向きになっていくのではないか?逆に5チャンネルという最高のポジションを取れているテレビ朝日などは、視聴率的に厳しい番組がある場合、思い切った挑戦をどんどんしていっていいように思う。

 王者日本テレビの視聴率が何故いいのか、ひょっとしたら綿密に計算された、明確な原因があるのかもしれない。袂を分かったとはいえ、古巣は自分を育て上げてくれた大恩ある局だし、何より今でもあの雰囲気を、筆者は今でも大好きだ。

 今、筆者はテレビだけで週に7本のレギュラー番組のメインMCを務めさせてもらっているが、フリー転向2年目でここまでの仕事をいただいているのも、古巣で育ててもらったからこそだと思う。お昼の『グッディ』など、期待できる新番組もいくつも始まった。ぜひ、辛抱強く、このまま頑張っていってほしい。
(長谷川豊公式ブログ『本気論 本音論』(http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/)より転載)