民主党と韓国要人、在日本大韓民国民団(民団)の間で、永住外国人への地方選挙権付与をめぐる議論が盛り上がっている。慎重派を抱える民主党は法案提出の方針を決めるには至っていない。だが、小沢一郎代表(65)と菅直人代表代行(61)は2月の李明博(い・みょんばく)韓国大統領(66)との会談で、実現に努力すると相次いで発言した。これは、なし崩し的に民主党の「対韓公約」になりかねないものだ。
 福田康夫首相(71)や自民党が慎重なため、すぐさま付与が実現することはなさそうだが、民主党政権が誕生すれば韓国から“公約”の履行を迫られるだろう。

基本政策で溝

 自民党も似たようなものだが、民主党には参政権という国の基本にかかわる事柄で、深い溝が存在している。
 推進派は「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議員連盟」=会長・岡田克也党副代表(54)=で、鳩山由紀夫幹事長(61)、奥村展三(てんぞう)代表室長(63)、藤井裕久(ひろひさ)最高顧問(75)、横路孝弘(よこみち・たかひろ)衆院副議長(67)、仙谷由人(せんごく・よしと)人元政調会長(62)、前原誠司副代表(45)ら党幹部が名を連ねる。 
 小沢氏の要請で会長になったといわれる岡田氏は「(外国人地方選挙権は)民主党の長年の課題であり悲願。法案提出が議連の役割だ。多様な価値観を認める象徴がこの法案となる」と語った。
 慎重派は「外国人参政権を慎重に考える勉強会」=会長・渡部恒三(こうぞう)最高顧問(75)。呼びかけ人は保守系の河村たかし(59)、松原仁(じん)(51)、長島昭久(あきひさ)(46)、笠浩史(りゅう・ひろふみ)(43)の各衆院議員らで、ベテランの西岡武夫(たけお)参院議運委員長(72)も加わった。帰化要件を緩和し、日本国民になって完全な参政権を行使する道を広げる方向で議論を進めている。

危機感募らす慎重派

 小沢氏は1月18日、李氏の特使との会談で地方選挙権付与を要請され、「以前から早く実施すべきだと考えている」と持論を展開、「党内で早くまとめて実現したい」と語った。2月21日にはソウルで李氏と会談。李氏は民団の要望として地方選挙権付与を求め、小沢氏は「韓国が先に外国人に地方選挙権を認める仕組みを作った。日本がもたもたしているのは私個人としては非常に遺憾だ。できるだけ実現できるよう努力したい」と述べた。
 菅代表代行も26日、ソウルで李氏と会談。李氏の「積極的に取り組んでほしい」との要請に「民主党としては実現すべきとの立場だ。小沢代表とともに努力していきたい」と応じた。
韓国側の内政干渉ともいえる求めだが、前向きな姿勢を示した小沢、菅両氏の発言は推進派を勢いづかせるものだろう。
 慎重派は懸念を強めている。松原衆院議員は27日の勉強会で「(訪韓に同行した)奥村代表室長と小沢事務所に問い合わせ、代表の発言は、自分は外国人地方参政権に賛成だが、国会と党内にさまざまな議論があると言った以上のものではなく、党内のとりまとめをしようとは言っていないものだと確認した」と報告した。
 付与が「悲願」の推進派と警戒する慎重派の隔たりは大きい。
 慎重派からは「採決で党議拘束をかけるなら造反だ。せめて党議拘束を外すべきだ」との声が漏れる。「韓国で地方選挙権を与えられた日本人は約100人。日本が永住外国人に地方選挙権を付与すれば対象は43万人以上にのぼり、バランスを著しく失する」「地方自治体は有事法制など安全保障、警察行政、教育にかかわる。外国人が選挙権を通じて首長、地方議員に影響力を行使していいのか」といった問題意識があるからだ。
 民主党は衆院選で政権交代を実現するのが「悲願」だったはずだ。それには、自民党からも票を奪う必要がある。にもかかわらず、主に保守層が懸念する外国人参政権の問題にかまけている。大した余裕だ。
(政治部 榊原智)