河合雅司(産経新聞論説委員)

 2040年までに、全国の自治体の半数が将来的な「消滅」の危機にさらされる。 民間有識者でつくる「日本創成会議」の分科会が公表した将来推計の結果に、日本中が大騒ぎだ。県庁所在地の青森市や秋田市まで含まれるのだからショッキングである。

仕事求め都会に流出


 これまで平均寿命の延びが少子化を覆い隠してきたが、いよいよ高齢者数が減り始める。やがて高齢者の消費をあてにしていた地域経済は成り立たなくなる。若者が仕事を求めて都会に流出し、人口減少スピードが加速する悪循環である。

 とりわけ次世代を出産する20~39歳の女性の流出は痛手だ。彼女たちが現在の半数以下になった自治体は、残った女性の合計特殊出生率が改善しても人口が減り続け、「消滅」する運命が待ち受けているというのである。

 分科会の推計では、「消滅」の可能性がある自治体は896に上る。2040年時点で人口が1万人を切る523自治体は、その可能性が大きいとの警告だ。

 地域の崩壊は日本全体の衰退を意味する。税収不足で立ちゆかなくなる自治体が相次げば、国民全体でコストを負担しなければならない。地方の人口見通しが変わるのだから、道路整備をはじめ国土計画も見直す必要が生じる。

 地方の人口減少スピードを少しでも遅らせるための対策を急がなければならない。

 とはいえ、これを単に「過疎地の問題」ととらえるのは間違いだ。「東京一極集中」の裏返しでもあるからだ。

 現在、地方の雇用の多くは医療・介護分野が支えている。東京圏は高齢者数が激増して医療や介護職の人手不足が懸念されるだけに、今後も若者を吸い寄せることが予測される。

「集積の経済」の終焉


 若者の東京への集中については、歓迎する見方が少なからずある。東京はこれまでも優秀な若者を寄せ集め、世界の都市間競争に勝って成長してきたからだ。「集積の経済」である。

 このため、地方「消滅」の危機が叫ばれながらも、「日本経済の将来を考えれば、東京への一極集中を否定するわけにはいかない」といった意見はなくならない。

 問題は今後もこうした成長モデルが成り立つのかということだ。残念ながら人口減少社会は、それを許さない。

 東京は地方から若者を集め、街としての「若さ」を保ってきた。しかし、地方の自治体が「消滅」すれば、“若者のプール”も無くなる。東京が若くいられるのも時間の問題ということである。

 しかも、東京ほど出産や子育てが困難な都市はない。住宅事情が悪く、通勤を含め勤務時間は長い。保育所不足など出産育児に対する環境が極めて脆弱(ぜいじゃく)なのだ。地方から出てきた人には、家族の支援もあてにできず、産むことをためらう人が少なくない。

 出生率の低さが物語る。2012年の合計特殊出生率は全国では1.41だが、東京は1.09と際だって低い。東京一極集中とは地方を「消滅」させるだけでなく、集まった若者の出生率を下げ、日本全体の人口を減少させることでもある。

首都圏でも若者減少


 低出生率が続けば、東京は「若さ」どころか人口規模も維持できない。すでに首都圏の勤労世代は減り始めている。国立社会保障・人口問題研究所によれば、1都3県の生産年齢人口(15~64歳)は、2000年からの10年間で46万人近くのマイナスになっているのだ。

 さらに、東京の成長を阻害する要因がある。先にも触れた高齢者数の激増だ。

 かつて流入した“昔の若者たち”が年齢を重ねることに加え、東京に出てきた若者が地方の年老いた親を呼び寄せるからである。国土交通省の首都圏白書によれば、1都3県で2040年までに387万人も高齢者が増える。

 問題なのは、若者中心の街づくりをしてきたため、介護施設などが圧倒的に足りないことだ。高齢化問題に追われたのでは、とてもなりふり構わず突き進んだ時代のようにはいかない。「東京一極集中」という“成功体験”にいつまでもとらわれてはならないのである。

 東京を子供を産みやすい街に変えるとともに、地方で若者が働ける社会を作らなければ日本の未来はない。

 今回の推計結果はわれわれに意識改革の必要性を突きつけている。