英国人ジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークス氏に聞く

 安全保障関連法案が26日、衆院本会議で本格的に審議入りした。安倍晋三首相が、国民の生命と財産を守るための法制整備を訴えているのに対し、野党や一部メディアは「自衛隊のリスクが高まる」「戦争法案だ」などと批判している。米紙ニューヨーク・タイムズや、英紙フィナンシャル・タイムズの東京支局長を歴任した、英国人ジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークス氏が、疑問点や問題点を語った。

 クエーカー教徒である私は「平和主義者」だ。しかし、国家の平和や安定、国民の生命と財産を守るには、軍隊が必要だと思っている。軍隊は国家の独立を維持し、他国の侵害を抑止し、外交力を補完し、国内政情を安定化させる。国家存立の危機に、命を賭して任務を全うする軍人の存在はやはり欠かせない。

 そうした観点からいうと、野党幹部や一部メディアによる「自衛隊のリスクが高まる」といった批判や指摘は、私には平和ボケにしか聞こえない。日本を取り巻く安全保障環境は激変しており、一般国民にリスクが波及する恐れがあるから、自衛隊に新たな役割が与えられるのである。

 そして、「戦争法案」といったレッテル貼りは、自国の安全保障という極めて重大な問題を話し合う、国会の議論の基盤を壊す行為といえる。レッテル貼りをする政治家やジャーナリストは、活動家や扇動家に近いのではないか。
平成24年2月、国連平和維持活動(PKO)のために到着した陸上自衛隊施設部隊の隊員らを、南スーダンの与党の副幹事長らが出迎えた=ジュバ(早坂洋祐撮影)

 東シナ海や南シナ海の現状をよく見るべきだ。中国は1990年代以降、国防費を毎年10%前後増加させている。いまや、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域には、中国艦船が連日侵入しており、日本の生命線である「シーレーン」も危うくなっている。中国や北朝鮮は日本向けに数百発のミサイルを配備しているとされる。

 英国の軍人もそうだが、日本の自衛官も任官に当たっては「危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」といった宣誓をしている。国民や国家の危機にはリスクを恐れない。それが軍人である。

 私は英国のボーディング・スクール(全寮制の寄宿学校)で学んだ。徹底した少人数制のもと、文武両道、厳しい全人教育をたたき込まれた。敷地内には、国家のために命を捧げた先輩たちの「忠魂碑」があり、その前を通る際は、脱帽して最敬礼していた。忠魂碑には「キャリー・オン」(後に続け)と刻まれていた。崇高な精神に続けということだ。

 国会での議論を聞いていると、70年前の敗戦によって、日本人は「自国を守る」「国民の生命と財産を守る」といった独立主権国家としての気概を失ってしまったのではないかと感じてしまう。

 ただ、私は知っている。4年前の東日本大震災で、数多くの自衛官や警察官、消防隊員らが、自らの危険を顧みず、被災者の救助・救出や、原発事故の対応に当たったことを。そして、彼らを「日本のために、被災者のために頑張ってください」と言って送り出した家族がいたことを。現場で体を張っている人々にこそ、日本人の精神が宿っているのだと感じた。

 震災時、日本の政治は機能不全を起こしていた。現在の安全保障の議論を見ていると、危機が目の前に迫っているのに、永田町の住人だけが「井の中の蛙」で、時代の変化から取り残されている気がしてならない。

 (取材・構成 藤田裕行)

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