郵政民営化に反対して自民党を離党した平沼赳夫(ひらぬま・たけお)元経済産業相(68)=無所属=が新党結成に向けて動き出した。自民党が保守色を薄める中、新たな保守政党が現れれば有権者に選択肢を提供する意義がある。次期衆院選次第では、新党が自民、民主両党の政権争奪の際にキャスチングボートを握ったり、どちらかの分裂を誘う呼び水となったりする可能性もある。
 29日には、平沼氏を最高顧問に据えた超党派の保守系地方議員らによる「日本国民フォーラム」=代表・米田建三(よねだ・けんぞう)帝京平成大学教授(60)=が都内で発足総会を開いた。平沼氏が講演し、福田政権を批判したうえで「拙速は許されないが、新党も将来の構想に入れ、日本を希望の持てる国にしたい」と語ると会場から大きな拍手がわいた。米田氏は「平沼先生が決意するなら私や多くの同志は犬馬の労を取るつもりだ」とあいさつしたが、フォーラムが新党の母体の1つになる-との観測もある。

「新しい受け皿」

 平沼氏が目指すのは日本の伝統を守る保守政党だ。郵政民営化反対を貫き自民党に復党しなかった平沼氏は「信念を曲げない政治家」とみられている。政治家として極めて貴重な“財産”だ。
 自民党が民主党に支持率で後塵(こうじん)を拝する中で、自民党から離れたが民主党には投票したくない保守票が平沼新党に集まる可能性はある。
 「『自民党も民主党も信用できない。新しい受け皿をつくってほしい』というメールが(たくさん)きている。私は真摯(しんし)に受け止めている」
 平沼氏は11日、フジテレビ番組「報道2001」でこう述べたうえで、衆院選前の新党結成に意欲を示した。
 新党は、民主党よりも自民党と票の奪い合いをすることにりそうだからか、平沼氏の自民党への姿勢は変化してきている。
 昨年10月24日の講演では「保守系無所属で次の総選挙も戦いたい。民主党で健全な保守を目指す人が乗りやすい船を(総選挙後に)作ることが先輩(たる自分)の使命だ」と、むしろ自民党寄りだった。
 だが、今年4月28日夜には小沢一郎民主党代表(66)と会談。小沢氏が連立を念頭に「新党を作ってほしい」と持ちかけると、平沼氏は「自民党は今のままではダメだ。国民の意識と乖離(かいり)している」と自民党を突き離すかのような発言を行った。

キャスチングボート

 平沼氏は結局、自民党と民主党のどちらと組むか、両にらみの構えをとりそうだ。5月11日の「報道2001」では「キャスチングボートを握ることが新しい受け皿の使命だ」と明言した。
 政治に潔癖(けっぺき)さを求める人は違和感を覚えるだろうが、一気に大政党をつくるのが難しければ、相手が自民党であれ、民主党であれ連立するのは不自然ではない。
 議席数次第だが、民主党中心の連立政権で与党になれば“反保守”的な政策の遂行に待ったをかける役割も果たせる。自民党中心の連立でも同様だ。これだけでも新党の意味はある。
 新党がこだわりそうな外交、安全保障、皇室、憲法改正、拉致、外国人地方選挙権、人権擁護法案などは日本の将来にとっていずれも大切な問題だ。
 ただ、政治を俯瞰(ふかん)すれば、有権者の自民党離れの最大要因は、自民党が保守色をないがしろにしたことではない。宙に浮いた年金、後期高齢者医療制度、雇用、ガソリン税の暫定税率など国民生活に直結する問題こそが、国民の主たる関心事だ。民主党の「回答」が正しいかどうかは別にして、これらを争点に設定したからこそ民主党は勢いに乗っている。
 次期衆院選は自民、民主の二大政党の対決ムードのもと「政権交代の是非」「消費税増税の是非」が争点になりそうだ。新党がこのうねりを乗り越えて地歩を固めたいなら、国民の暮らしを守り、内政の改革を進める政党だと有権者に知らせることが肝要だ。
 この点で、平沼氏は29日のフォーラム設立総会で後期高齢者医療制度を批判、政府・与党が検討する消費税などの増税に反対する考えを強調し、一応の問題意識は持っていることを示した。
 この問題意識を生かして、保守の立場から、国民生活や内政の改革に関する分かりやすく現実的な旗(政策)を掲げられるかが、新党の消長(しょうちょう)を左右するだろう。
(政治部 榊原智)