宇井忠英(北海道大名誉教授、環境防災総合政策研究機構理事)

 御嶽山で多くの犠牲者が出る噴火災害が発生して以来、吾妻山・蔵王山・箱根山で火口周辺警報が発表され、口永良部島では噴火警報が出て全島避難という事態になった。こうした報道が重なると日本列島での火山活動が活発化したのではないか、3.11巨大地震の後多発している地震との関連があるのかなど火山の関心が高まっている。

現状は長期的な変動の範囲内


噴煙を上げる口永良部島・新岳=5月29日午前10時8分、鹿児島県屋久島町(水中写真家・高久至さん撮影)
 「火山活動」と「噴火」とは定義が異なる。「噴火」とは火口から火山灰や噴石などを放出したり、溶岩流や火砕流が流れでる現象だ。一方「火山活動」は噴火していなくとも、マグマの上昇やマグマから放出される熱により地下水が過熱され圧力が高まったことが原因で、岩盤が割れて火山性地震を引き起こしたり、大地が僅かに膨れ上がったり、火山ガスの放出量が高まったりする事態も含まれる。つまり噴火の前兆として火山活動が観測される。噴火が終わっても火山活動がしばらく続き、現地への立ち入りのリスクが解消されないこともある。

 気象庁は主要な47の活火山で地震計・傾斜計・空振計・GPS・監視カメラなどの観測計器を設置して常時監視観測に当たっている。これらの計器から送信されてくる観測データは東京・札幌・仙台・福岡にある火山監視・情報センターの現業室で昼夜3交代体制を組んで監視し、火山活動の評価を行い、異常と判断されれば噴火警戒レベルを含む噴火警報等を発信する体制を取っている。

 気象庁は従来からの臨時火山情報や緊急火山情報を置き換える形で、2007年の12月から5段階の噴火警戒レベルを付けた火山警報を活火山に順次導入し始めた。現在30火山ではレベル情報が付いた噴火警報を発信している。残りの17火山の噴火警報にはレベル情報はついていない。また海底火山に警報がでることがある(図参照)。海外で活火山を抱える先進国や開発途上国で火山活動の現況を4段階程度の数値か、緑・黄・オレンジ・赤などのカラーコードで表現するようになった流れに日本も対応したのだ。但し、日本の噴火警戒レベルは火山活動の現況のみならず火口周辺規制・入山規制・避難準備・避難など人々の行動にリンクした仕組みになっている。
噴火警戒レベルが運用されている火山

噴火警戒レベルが運用されていない火山
海底火山
(気象庁ホームページより引用)
 噴火警戒レベルが導入されて以来、昨年の御嶽山の噴火前までは、噴火警戒レベル2以上やそれに相当する情報が出ている火山は7~8程度の時期が多かった。この中には継続的にレベル2である三宅島(去る6月5日にレベル1に引き下げ)・桜島・諏訪之瀬島や火口周辺危険の硫黄島、周辺海域警戒の福徳岡ノ場が含まれており、浅間山・阿蘇山・霧島山・口永良部島では引き上げや引き下げを繰り返していた。御嶽山が噴火開始直後にレベル3(入山規制)になって以来、吾妻山・蔵王山・箱根山が新たにレベル2となり、5月29日には口永良部島がレベル3からレベル5(避難)に引き上げられた。6月16日には蔵王山がレベル1に引き下げられ、浅間山でごく小規模な噴火が起こった。現在13火山がレベル2以上またはそれに相当する状況になっており、火山の報道が目立つので火山活動が活発になったかの印象を人々に与えている。

 米国のスミソニアン研究所が作成した火山噴火のデータベースや気象庁が公表している活火山総覧から1900年以降の年毎の噴火した活火山の数を調べて表にまとめてみた。集計の対象は110の活火山のうち北方領土の11火山を除いた99火山であり、5年毎の平均値を示した。年間5ないし10火山程度で噴火が起こっていることが判る。この中には桜島・諏訪之瀬島・阿蘇山のように毎年のように噴火が起こっている火山が含まれている。最近10年間は噴火が起こる火山が比較的少なかった。今年に入って6火山で噴火が起こっているが、1900年以降の長期的な変動の範囲内にあり異常事態とは言えない。