原田謙介(NPO法人・YouthCreate代表)

 5月17日に大阪都構想の是非を問う住民投票が実施され、反対が僅差で多く都構想は否決された。その結果に関して「シルバーデモクラシー」というテーマで色々な議論が起こった。議論の発端は、ある開票速報番組で放映された出口調査の世代別結果だ。結果は20代・30代・40代・50代・60代・70代以上の6世代に分けられており、各年代の賛否の割合が示されていた。

 その調査によれば、40代までの世代と60代が賛成多数で、50代でやや反対が多く、70代以上だけが反対多数となっていた。そして全体で見ると賛成・反対の両者が競っているというものだ。この結果を見てインターネットでは「シルバーデモクラシー」ここにあり、といった意見が噴出した。中でも大きく2つの論調が「シルバーデモクラシー」に関して行われていた。

 議論を2つほど引用したい。

 やはり世代別の得票率が印象的。30代、40代を中心に「賛成」票が集まったのに対し、70代を筆頭とするシニア世代の「反対」票に押し切られた格好。


 40代までとそれ以上の人口比がほぼ半々なのであれば、賛成派が負けた原因はワカモノの低い投票率以外に無い。人口比で負けたのならばシルバーデモクラシーという指摘は正しいが、投票率で負けたのなら、それは単に民意が反映されたと考えるべきだ。投票に行かない人は「どんな結果が出ても従います」という意見表明をしている事になるからだ。


 両者においてシルバーデモクラシーの定義が異なるため真反対の主張に見える。前者の定義は「シニア世代の意見が若者世代に勝つ状況」。後者は「シニア世代と若者世代の人口比が大きく違う状況」といえる。

民主主義の活性化が行われない


 自分はこの両方とも違う観点から「シルバーデモクラシー」を定義したい。

 それはずばり「少子高齢社会が進んでいるにも関わらず、民主主義の仕組みが更新されていない状況」だ。実は少子高齢社会において民主主義とどう向き合うかという命題は日本だけの問題ではない。昨年日本代表として外務省から依頼を受け参加した、EU評議会(EU council)主催のWorld Forum for democracyにおいても、この問題について盛んに議論されていた。

 人口が増えていく前提、あるいは将来を担い支えていく若者の数が多い前提で作られている仕組み。言い方を変えれば、税金を払っているあるいは今後払う層よりも、これまで払ってきて今後は税金を使う側である層の割合が少ない状況。これらの仕組み・状況が前提となり民主主義が作られてきた。

 それが今や逆の状況だ。少子高齢社会において、高齢者の数がどんどん増え、若者層がどんどん減っている。この想定されていない社会状況において民主主義をどうすればよいのか。民主主義を活性化するためにどうすればよいのか。そのことを真剣に考え、具体的なアクションを起こさない状況こそが「シルバーデモクラシー」だと考える。システムが現状に合わないことを嘆くだけであったり、現状に合わないが自分には得だから変えようとしないことであったりといった状況では当然何も変わらない。

 このシルバーデモクラシーが続くと、大きく2つの仕組みにおいて問題点が浮かび上がる。

(1)若者が触れにくい政治環境の継続
現在の若者の生活スタイルにおいて、政治との接点が少ない状況が続いてしまう。例えば、あまり政治教育がなされていないことはイメージがつきやすいのではないか。世界で投票率が高い国は教育の中で、民主主義・政治といったものに関しての教育がしっかり行われている。また、属しているコミュニティ内で政治家と接することがない状況も有る。町内会や地域の祭りなどで上の世代は政治家と直に接することがある。しかし、若者の地域のコミュニティへの参画率は減っており、政治家と接することが少ないのが現状だ。
 
(2)若者が意見を出しにくいと感じる政治システムの継続
少子高齢化において、人数が多い高齢世代の意見が優先され、若者世代の意見は通らないと感じている人は多い。しかし、多数決のみで判断がなされるわけではない。少数の意見を尊重することも民主主義の意義だからだ。しかし、若者は「どうせ意見を聞いてもらえない」と思っている現状が有る。政治システムとして、もっと若者の声を聞くのであるという姿勢を示すことにより、若者が意見を出しやすくなる状況を作らなければならない。例えば、行政のいろいろな審議会には絶対に20代を一定割合以上メンバーとすることを義務付けること、若者に関した施策を総合的に取り扱う「若者省」のような組織を作ることなどが考えられる。

「当たり前」をどう打破していくのか


 若者が高齢者に比べて投票に行かない、政治への関心が少ないのは、当たり前のことだ。収入を年金に頼っているなど政治と生活の関わりが密接である方や、社会や人生での色々な経験があり政治の重要性を感じることによって投票に行くのです。加えて今の少子高齢化の日本社会では「どうせ若者の意見は通らないだろう」と若者自身の諦めも投票に行かない要素となっている。

 その当たり前を前提として、どうすれば若者が投票に行き、政治に関心を持つかを考えていく必要がある。また、どういう仕組みを作るのか?どう教育するのか?どう若者の声を吸い上げるのか?難題ではあるが、これらについて考えなければいけない。これからの社会を作り担う若者が、社会の中心を担う政治を見捨てる状況を変えていくことが求められている。

 もちろん、現状を打破するための取り組みは色々と進んでいる。インターネット選挙運動の解禁や大学内への期日前投票所設置等がわかりやすい事例だ。さらに、選挙権年齢に達していない子どもを持つ親が、子どもに代わって投票に行くことができる制度(子どもが二人いれば、親が3票投じることができる)などの大胆な変化も本格的に検討が必要だ。

 少子高齢社会においてであっても、若者を政治のほうに振り向かせ、主体的にアクションをとるためには何ができるのか。ひきつづき考えたい。

「シルバーデモクラシーだよね」、で諦めるのは早すぎる。まだまだやれることはある。