ついに、ギリシャがデフォルトしようとしています。急進左派政党シリザの選挙勝利予測報道が流れ始めた昨年の11月下旬から始まったギリシャ危機ですが、ついに最悪の結果で終わりそうです。

 ギリシャの現政権であるシリザは、

1.年金を従来水準に戻す

2.財政削減で解雇した公務員を復職させる

3.公益企業の民営化を中止する


 という『政権公約』を掲げて選挙を勝ちました。

 そして、その財源は欧州連合など債権者に債務放棄を認めさせることによって、十分に得られると国民に説明していました。

 しかし、欧州連合など債権者側がこれを認めるわけもなく、その結果として、ギリシャに対する信用不安が増大し、大規模な資金の流出が発生し、これがギリシャを追い詰めてゆきました。この経済危機を受けて、2月からトロイカ(欧州連合、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の連合体)とギリシャ政府は、破綻防止のための協議を繰り返してきましたが、ギリシャ政府が誠実な対応をしないため、会議は物別れの状態が続いていました。4月末までに自ら提出するとしていた改革案が出されたのは6月下旬になってからであり、その内容も到底債権者を満足させられるものではありませんでした。最終的には、トロイカ側が出した提案に対して、7月5日に国民投票を行い国民の信を問うのでそれまで支援を延期してほしいとしましたが、欧州連合側がこれを拒否し、現段階では手立てのない状態になっているわけです。

 6月30日までに、ギリシャはIMFに対して、16億ユーロを支払わなくてはいけません。本来、この支払も6月中の複数の支払いを月末まで延期してもらったものであり、IMFがさらなる延期を認めるとも思えません。また、同時にギリシャの銀行に対するECBの緊急資金供給の期限も6月30日になっているため、すでに銀行危機も発生しています。
 一番の問題はギリシャがデフォルトしたらどうなるのかということだと思います。一般的な債権ルールでは、発行体がデフォルトした場合、「クロスデフォルト」扱いになり、その発行体が発行するすべての債権がデフォルト扱いされます。また、同時に、「クロスアクセラレーション」が発生し、期限の利益を失います。

 少し専門的ですので、これを簡単に説明すると、Aさんが、自動車ローンと住宅ローンとカード・ローンを抱えていたとします。そして、Aさんは自動車ローンを期日までに払いませんでした。この場合、Aさんの住宅ローンもカードローンも同時にデフォルト扱いになり、きちんと払っている限り分割払いで済んだ住宅ローンとカード・ローンの即時一括払いを求められてしまうわけです。

 これをギリシャに当てはめると、IMFへの支払いが出来ない(デフォルト)。ギリシャ政府が発行するすべての債権がデフォルト扱いになる。また、分割払いの債務に関しては一括払いを求められる。ということになるのですが、欧州連合などはIMFへの支払いの遅れはデフォルトにならないとしています。また、格付機関もこれに同意しており、6月末に支払えなかったとしても、ギリシャ国債がデフォルト扱いされるかどうかはわかりません。これは市場への影響を配慮したものであると言えます。

 しかし、たとえIMF向けの支払いがクロスデフォルト扱いにならなかったとしても、次から次へと返済期限がやってきます。次の大口返済は7月20日のECBが保有するギリシャ国債の償還であり、これは国債のデフォルトですから、クロスデフォルト条項が発動されると思われます。

 また、時を同じくしてギリシャの金融市場も崩壊しようとしています。銀行は預金を貸付などで運用し、その利ざやを稼いでいます。そのため、銀行は預金を常に運用しており、現金で保有しているわけではありません。そのため、取り付け騒ぎなどのように一気に預金を引き出す動きが発生した場合、銀行は手元資金のショートを起こし、破綻に直面します。これを防止するのが『流動性供給』とよばれるものです。これは銀行の保有する国債などを担保に中央銀行が資金供給を行い、銀行の資金ショートを防止するわけです。そして、この緊急流動性供給の期限も支援合意がなされなかった場合、6月30日であったわけです。

 このため、週末の支援協議の不調を受けて、ギリシャの国民はATMに殺到し、ATMからほとんどの現金が消えるという結果になりました。これを受けて、6月29日ギリシャ政府は銀行の資金規制(引き出しは一日60ユーロまで)と窓口の7月6日までの一時休業を決めました。また、株式市場も休場になることが決まっています。

 では、今後どのような対応が行われるのでしょう。現在一部で出ている案はドラクマ(政府紙幣)の発行による通貨変更と銀行を通じたユーロ回収というものです。まず、欧州連合やユーロシステムがギリシャ政府によるドラクマの発行をみとめ一定期間の兌換(両替)の保証を行います。その上で、ギリシャ政府は年金や給料など国内向けの支払いにドラクマを使い、国内でのユーロの使用を禁じます。銀行はユーロを受け取りますが、支払いと払い出しはすべてドラクマで行うことになります。

 その結果、銀行には市中に出回っているユーロが集まり、それを中央銀行がすべて集めることでギリシャ政府などの海外向けの債務償還に利用するわけです。

 そうすればギリシャはユーロ建て債務を払うことができます。そして、これが完了した時点でギリシャはユーロを離れる可能性が高いといえるでしょう。

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