岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役)

 世の中の仕組みは本当に複雑になりました。今回のギリシャのような金融問題、国家の問題、世界を震撼させるような経済問題は5年に一度程度は起きるようになったといってよいでしょう。人間が作り上げたシステム故に一長一短があるのは当然ですが、それ以上に世の中の進歩と共に物事の常識観、判断基準が変わってくることにシステムが十分対応していないこともあります。

 今回のギリシャ問題の根本的原因はユーロの仕組みそのものにあります。通貨を一つにして、ECBという中央銀行を一つ作ったのはいいですが、加盟国はそれぞれの財政があり、経済的能力、社会、歴史、判断基準が存在する中でそれらの調整機能が十分ではないことは再三再四言われてきました。

 何故ユーロを作ったのか、それはアメリカに対抗する市場を作ることにありました。欧州は小国の集まりでも一体となればアメリカという巨大市場に立ち向かうことが出来ると考えました。が、その仕組みには脱落者を認めないという厳しい掟があることも事実です。各国のGDPの3%以上の赤字はダメというルールもありましたが、実際にはそれを破る国が続出し、ペナルティは課されていません。

 今回のギリシャ問題でユーロ圏は再び、その根幹問題を検討し直さなくてはいけないことになります。その時、我々、外部の者からするとそこまでしてユーロを維持する価値は何処にあるのか、という率直な疑問が浮かび上がります。

 私は日本人論を語るとき、日本人が一塊にならず、小グループに分散する傾向が強いと述べてきました。ヨーロッパ諸国も歴史的に一つになることはありません。民族問題は根深いものがあり、最近では戦争こそしませんが、小競り合い程度はよくあるものです。ここカナダでも東部ヨーロッパ出身者が非常に多く、彼らは常に「あの人は○○の出身だから最低!」と平気でしゃべったりしているのです。

 根本的にバラバラなものを束ねる力がどこにあるのかといえば北部ヨーロッパ諸国がtake it or leave it (加わるか、独自でやるのか)という強権的発想で進めたため、ギリシャの問題が起きようともユーロ加盟を求める国々は増え続けるのであります。

 こういう問題が起きた時、いつもクールでユーロに加盟しないイギリスや中立を保つスイスが見直され、為替などのシーソーゲームの結果、影響を受けたくない理由でユーロに入っていなかったのにとばっちりを受ける羽目になります。

 ましてやギリシャと日本が経済的にどれだけの関係があるか分かりませんが、少なくともこのニュースで資本市場では巨額の価値が一時的ながらも一気に吹き飛んでしまうことになります。個人的には日本に於けるこの衝撃は短期的なものにとどまり、株価はすぐに回復するとみています。なぜなら、世界をうろつくマネーはギリシャに最も縁遠い日本を安全資産とするのですからマネーが入り込んできてもおかしくないというシナリオです。

 世界はリーダーがいる方がやりやすいことは事実です。ですが、アメリカは自国のことで精いっぱい、中国は期待外れで図体がでかいだけにコントロールは容易ではありません。

ドイツのメルケル首相
 現在の世界経済の運営は圧倒的リーダーが欠如していることに最大の問題があります。中国がAIIBを導入する素地を作ったのもそのあたりにあるでしょう。本来であれば、ユーロ圏の代表であるドイツがもっと世界経済の大局観を作るためにリーダーシップを取らねばならないところでした。が、小国のリーダーに振り回され続け、本来期待されているタスクに手をつけられないまま今日に至っているのです。これはドイツが大いに反省すべき点であります。

 では日本ですが、早急に東南アジアの緩いアライアンスを作り上げ、日本がリーダーシップを取り、世界をリードしていく素地を作るべきかと思います。

 今、世界はさまよえる羊になりかけています。TPPが発効してもどれだけ効力が発揮できるのか分からなくなるかもしれません。世界共通とは人類としての話であります。他方、国家としてはそれぞれの地政学的長短、歴史、宗教、社会など数多くの因子の中で作り上げられます。それ故に指導者たちはなんでも一束にするという発想がもはやナンセンスだという事に気がつかねばならないのです。
(ブログ『外から見る日本、見られる日本人』(http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/)より2015年06月29日分を転載)

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