近藤駿介(経済評論家、コラムニスト)

 6月29日の日経平均株価は、週末にギリシャへの金融支援を巡る協議が決裂し、同国の債務不履行(デフォルト)への懸念が強まったことに、中国上海市場の大幅下落が重なり、596円安と今年最大の下げを記録した。下げ幅は2014年2月4日(610円)以来ほぼ1年5か月ぶりの大きさとなった。

デフォルトを避けたいのはどちらか


 今回株価の下落幅が大きくなった一つの原因は、多くの投資家がギリシャ問題に対して2つの誤解を抱いていたことにあるように考えている。

 まず一つ目は、ギリシャ側とEU側のどちらがデフォルトを避けたいと思っていたかという点である。

 今回の金融支援交渉に関する日本メディアの論調は、「デフォルトを避けたいギリシャがEUからの支援を取り付けるために瀬戸際外交を行っている」というものであった。しかし、「ギリシャがデフォルトを回避したい」という見方は、先入観に基づいた一方的な思い込みであり、実際には「デフォルトを前提に再建策を求めるギリシャと、デフォルトを回避したいEU」という構図であった可能性が高い。

 緊縮財政反対を表明して政権についたチプラス首相にとって最も重要なことは、緊縮財政を拒否することで、緊縮財政を条件とした金融支援を受け入れるという選択肢はほとんどなかったと言える。

 緊縮財政を採らずに経済を再生させるとしたら、それは債務カットを伴うものにならざるを得ない。債務カットするということは、債務国であるギリシャも、債権国であるEU側も、実質ギリシャの破綻を認めなければならない。だとすると、一連の協議は、実質的に破綻していることを認めることで債務カットを取り付けたいギリシャと、債務カットを受け入れ難いためにギリシャの破綻を認めたくないEUとの瀬戸際の交渉だったということになる。

 もし、投資家が「デフォルトを回避したいのはギリシャ側である」という先入観に取りつかれるのではなく、「デフォルトを回避したいのはEU側である」という認識を少しでも持っていれば、ギリシャのデフォルト懸念がこれほど金融市場に大きな衝撃を与えなかったはずだ。

デフォルトとユーロ離脱は別問題


 2つ目の誤解は、ギリシャのユーロ離脱に関するものである。

 支援が打ち切られギリシャがデフォルトに向かえば、ギリシャはユーロ離脱に追い込まれるという見方が多い。しかし、ギリシャのデフォルトとユーロ離脱は別問題として捉えるべきである。

 ギリシャがユーロ離脱に追い込まれ、独自の通貨ドラクマを復活させたとすると、ドラクマは対ユーロに対して大幅に安くなるはずである。ということは、EU側がギリシャに対して持つ債権をユーロ建にしようとドラクマ建にしようとEU側から見ればギリシャ向け債権は紙屑同様になり、ギリシャ側から見たら返済不可能な債務になるということである。

 このように考えると、ギリシャがデフォルトに追い込まれようと回避しようと、ギリシャのユーロ離脱はギリシャ、EU双方にとって価値のない選択だといえる。

 今回EU側が避けなければならないのは、ギリシャ危機が周辺国に広がりを見せることである。幸か不幸か、ユーロ参加には条件が設定されているが、ユーロ離脱に関する明確なルールはない。明確な離脱ルールがない中でEU側がギリシャをユーロ離脱に追い込むということは、マーケットに第2のギリシャを探すようそそのかすようなものである。こうした無用なリスクをEU側が抱え込むとは考えにくい。

 メルケル独首相はオバマ米大統領と28日に電話で協議。ギリシャのユーロ残留が重要だという認識で一致した。またルー米財務長官はチプラス首相との電話協議で、危機への持続可能な解決策を見いだすことがギリシャの利益に最もかなうと話した。


 日本のメディアではあまり取り上げられていないが、今回のギリシャ問題に対して、メルケル独首相とオバマ米大統領が「ギリシャのユーロ残留が重要だという認識で一致した」ことは重要なニュースだと思っている。